ミャンマーでエンタメとクリエイトする日々
途上国におけるエンターテインメントの重要性
4月28日
途上国におけるエンターテインメントの重要性
皆さんこんにちは。
ミャンマーでエンターテインメント、新町です。
ミャンマーに限らずいわゆる途上国でのエンターテインメントってどうなの?
という素朴な疑問は日本のにいる方なら一度は考えた事があるかもしれません。
「そんなことより先にしないといけないことがあるでしょ」
身もフタもない言い方をするとそういった意味合いの意見です。
凄く正論だと思いますし、今日明日食べるものに困っている人にエンターテインメントで楽しもうとは私も言えないところではあります。
やはりエンターテインメントは衣食住足りた上での事、とうのは基本だと思います。
なので、私もミャンマーでただただ楽しい事だけを追い求めるのではなく、衣食住が足りていない人にどうやってエンタメを届けるかは大きなテーマとしてずっと考えていました。
勿論、様々なボランティアに参加をしたり、寄付をしたりというような活動もしてきました。
それはそうなのです。
それはそうなのですが、そういった「大人の意見」生きていけないのが我々のようなエンタメに関わる人間なのかもしれません。
さて、今日はそんな私が、出会ったある出来事の話を皆さんに伝えたいと思います。
これは私が直接経験した誰にどのようにエンタメを届けるのかということを考えるにあたって非常に印象的な経験でした。
実は私はバンドをやっています。
ヤンゴンに在住している日本人で組んだバンド、EDOGAWA T/S(エドガワタウンシップ)という何だか人数の多い(10人くらいいました)のでやっているんです。
コロナがあってからメンバーの半数以上が日本に帰ってしまい、もはやバンドはどっちが本部かわからなくなってしまったような状態ではあるんですが、2017年1月に結成してからもう4年になります。
その日はハロウィンのイベントでした。
ありがたい事に私たちのバンドはヤンゴンで行う色んなバンドに呼んでいただける事が多く、この日もとある日系のBARレストランで行われるハロウィンのイベントでバンド演奏を披露する時間を貰っていました。
自分たちの出番も終わり、DJタイムなどで盛り上がっている中、私は休憩がてら外の空気をすいに店を出ました。
そうするとそこに物売りのミャンマー人の子供達がいます。
こういったBARなどはお金を持った人たち(彼らからうするとです)多いので店を出て、各々迎えの車に乗ったり、タクシーを呼んだり、たばこを吸ったり、外に出てきた人に対して物を売りに来るんです。
そういう事はこれまでにもあるし、特に珍しい事ではありません。
私は時と場合によっては何か買って上げたりという事をする事もあるんですが、この時はそもそもまだ帰る訳でもないので、何か買えと言われても困ると思っていたんです。
ですが、彼らの様子がいつもと少し違います。
普段は私も酔っぱらってもそんな事はしないんですが、この日はハロウィンという事もあり、それっぽい人形を腕のところに安全ピンで止めたり、イベントスタッフに渡された紙で出来た円錐の形をした帽子なんかをかぶっていたりしたんです。
すると物売りの子達はそれに興味深々。「ちょうだいちょうだい」と来るのです。
いつもは「買って買って」なので何か新鮮だなと思いつつもふと思いました。
この子達はこうやってその日暮らすのも苦労しているだろうに、今日はハロウィンだからとこんな人形や、帽子で雰囲気を出して楽しむという事を考える余裕があるんだなと。
人形なんて1000円もしないようなものですし、紙の帽子なんかで良いならと思い、各々をそれぞれ違う子に上げました。
イベントはまだ続いてるけど、もうバンドの出番も終わったし良いかと思ったのです。
何より、こんなに求められるのなら上げても良いなと。
そうすると、ホントに、本当にバカみたいに喜んでくれました(笑)
「そんなに嬉しいか?」って口に出して言ったくらい喜んでいました。
1000円もしない人形と100円もしない紙帽子で。
皆さんはどう思いますか?
頭の堅い大人はそんな彼らに対して
「こんな事で喜ぶんじゃなくてもっと将来の為に~」
みたいな事を考えるんでしょうか?
私はなんだか凄く楽しくなりました。
何故かハイタッチをして、一緒に写真を撮って盛り上がりました。
こんな苦労している子達も、ハロウィンの今日を楽しんでいているんだなと。
もしかすると自分たちの演奏も外の音漏れしているを聞いて雰囲気を味わったりしてくれてたのかなとか、そんな事を考えました。
衣食住足りてこそのエンターテインメントというのは真理だとは思います。
しかし、エンターテインメントを真に楽しむ為にも衣食住足りるべく頑張って生きていくという事もあると思うんです。
エンタメの夢を見せる事が彼らの生きる活力につながり、結果国としての生産性が上がる用なことに繋がるのかもしれません。
私は歌を勉強し、プロになりたかったクチです。
もし、衣食住足りなくなってホームレスみたいな生活をしたとしても、じゃあまた普通の生活が出来るまで歌を歌わないかとなったらそんな事はありません。
歌うのは好きだし、きっと辛い時こそ凄い歌ってるような自分は容易に想像できます。
今ミャンマーがこんなことになっていても歌が好きなミャンマーの人は毎日そこここで歌ってます。
(本当に彼らはその辺でいきなり歌います、それもかなりガチに大きな声で)
エンターテインメントを楽しむ為に経済の事を語らない訳にはいきません。
沢山の大人人が、そして沢山の子供が楽しむ為の活動も続けていきたいし、どうすればより沢山の人が楽しめる環境を作れるかというのを、このミャンマーで全力で考えていきたいと思います。
しかし、その為に頑張る力をエンターテインメントで与えられるような。
そんな活動もきっと沢山の人に必要だと思うんです。
そうやって僕も大変な時を色んなエンターテイナーに救われてきたなという事を思い出しました。
これが私がこんな時であってもエンターテインメントにこだわる理由です。
これからも愚直にこだわり続けていきたいと思います。
今さら大人にはなれない人間の小さな小さな戦いではありますが、あの日僕に満面の笑顔をくれた子供達にいつか何かお返しが出来るまであきらめずに頑張っていきたいと思います。
著者プロフィール
- 新町智哉
映像プロデューサー。2014年からミャンマー最大都市ヤンゴンに在住。MAKE SENSE ENTERTAINMENT Co.,Ltd. GM。日緬製作スタッフによる短編コメディ「一杯のモヒンガー」でミャンマーワッタン映画祭のノミネートを皮切りに世界各国の映画祭で受賞。起業家、歌手、俳優としてもミャンマーで活動する。
Twitter:@tomoyangon
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