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南米街角クラブ

島田愛加|ブラジル/ペルー

【実録レポート】ブラジルの俳句大会に初参加してみたら

お昼は日伯文化協会の皆さんが美味しいお弁当を用意してくださった。
お弁当は海苔巻きやフライが入った日本食。
大皿で出してくれた煮しめとお味噌汁も美味しくいただいた。

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ブラジルでも大根が食べられるのは日本人移民のおかげである(photo by Aika Shimada)

午後はいよいよ披講がはじまる。
披講者に選ばれた一歩さんが「○○選」と、選句者の名前を呼び、その人が選んだ五句を読み上げる。
三句目が読み上げられた後、

「掛け布団引きずり歩く冬支度」

あれ?どこかで聞いたことがある句だなと思ったら、なんと私の句が選ばれた!!

思いがけぬ出来事に喜んでいる場合ではない。
自分の句が読み上げられたら、間髪入れずに自分の名前を大きな声で名乗らなければならないのだ(集計のため)。

(後から知った事だが、この俳句を選んでくれたのは今日初めて句会に参加された女性で、同じように今朝の冷え込みで布団から出るのが辛かったので共感したと話してくれた。笑)

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披講を任された一歩さん、画家でもある多彩な方だ(photo by Aika Shimada)

参加者全員分の被講が終わり、集計に入る。
その間、特別選句者の先生方が特選をつけた句の批評を行った。

小斎先生が特選をつけたのは

「思い出す野良の帰りの虫時雨」 畠山てるえ

スザノ市在住の畠山てるえさんの作品だった。
てるえさんは1933年(昭和8年)日本生まれ。2歳の頃に家族と共にブラジルの地へ降り立った。
小斎先生は、海を越えてやってきた日本人移民が入植地で大変な苦労をしながら農業に従事し、今のブラジル社会に大きな影響を与えた事を心に刻む、素晴らしいブラジルの俳句だと称えた。

私も、その情景を思い浮かべたら急にジーンとしてしまい、初の句会で「ブラジル俳句」の面白さを発見してしまった。

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特選の記念品を受け取る畠山てるえさんと小斎先生、2人とも1世だがブラジルらしくアブラッソ(抱擁)する姿が微笑ましい(photo by Aika Shimada)

集計が終わり、いよいよ結果発表となった。
第28回虚子忌俳句大会で見事に1位になったのは、

なんと芳山先生だった!

芳山先生が表彰された後、最後は全員で記念撮影をしてお開きとなった。

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第28回虚子忌全伯俳句大会、記念撮影後、「また来年!」とお別れした(photo by Aika Shimada)

沢山参加しているように見えるが、以前はバスが数台、そして500km先の街から参加者が来るほど大きな大会だったそうだ。

多い時はサンパウロ近郊だけでも3,000人近くいた俳句仲間。
先生に会ったり、旧友と顔を合わせたりするために多くのイベントが行われていたが、今では俳句人口も減り、パンデミックの後はイベント参加者も減ったと言う。

大会終了後、芳山先生と一光さんは、この日取材に来ていたブラジル唯一の邦字新聞社の若い記者に俳句をやってみないかと声をかけていた。

芳山先生が何度も私を句会に参加するように誘ってくれたのは、日本語の素晴らしさやブラジル俳句の面白さを知る事だけでなく、若い世代に俳句を続けてほしいという願いもあったのだ。
その願いもあってか、先生が参加するサビア句会の平均年齢は他のコミュニティよりもだいぶ若い(平均年齢50歳ぐらいだろうか)。

確かに、日本語よりもポルトガル語が必要とされた日系2世、3世の人々にとって、俳句は遠い存在かもしれない。
しかし自分の両親(2世や3世)が日本語を話さなくても自分のルーツを求めて日本語を勉強する若者や、非日系で日本語を専門的に学ぶ学生も増えている。
ブラジルの若い日本語話者や日本語学習者たちが、俳句をより身近に感じるような新しいコミュニティも必要そうだ。

ちなみにブラジルには「Haicai」(ハイカイ)と呼ばれるフランス経由で伝わったポルトガル語の俳句があり、一定数のファンがいる(これについては長くなるのでまた後日)。

私はすっかり俳句にハマってしまい、帰りにひでさんにお礼を言った。すると、

「自分の句が選ばれたのもあるだろう。頑張って勉強してください」

と笑顔で肩を叩かれた。
確かに、自分の句が誰かに気に入ってもらえることほど嬉しい事はない。
もうちょっと良い句を詠みたいな、とやる気になった。

そして今更の話だが、日本でも10年前から俳句の番組が話題になっているということを教えてもらってびっくりした。
私はブラジルでブラジル俳句を楽しみ、日本に向けて発信してみたいなと密かに思っている。

【最後に】
今回、優しく出迎えて下さったリベイロン・ピーレス市日伯文化協会の皆様、芳山先生(ひでさん)、小斎先生、並びにサビア句会の仲間である一光さん、一歩さん、宮さん、遊歩さん、ヴィセンテさん、ご協力ありがとうございました。

 

Profile

著者プロフィール
島田愛加

音楽家。ボサノヴァに心奪われ2014年よりサンパウロ州在住。同州立タトゥイ音楽院ブラジル音楽/Jazz科卒業。在学中に出会った南米各国からの留学生の影響で、今ではすっかり南米の虜に。ブラジルを中心に街角で起こっている出来事をありのままにお伝えします。2020年1月から11月までプロジェクトのためペルー共和国の首都リマに滞在。

Webサイト:https://lit.link/aikashimada

Twitter: @aika_shimada

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