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南米街角クラブ

島田愛加|ブラジル/ペルー

【新型コロナウイルスによる死者累計50万人】6月祭りも過ぎ去り、いつになったらハグできるのだろう

今年もテレビ電話で6月祭り開催となってしまった(photo by iStock)

緊急事態宣言から1年と3ヶ月が経とうとしている。
人々の生活もガラリと変わり、私の仕事も全てオンラインになったのだが、思ったよりも在宅で出来ることが多いことに驚く。
気づかぬうちにこの生活スタイルに適応しているようで、米国のニュースが流れる度に人々がマスクをしていないことに違和感さえ感じるようになった。

最近のブラジルの注目すべきニュースをざっくりお話すると、

5月23日 ボウソナロ大統領と支持者たちがマスクなしでリオデジャネイロ市内を行進(同市のICU病床使用率84%)
6月12日 再び大統領が支持者とマスクなしでサンパウロ市内を行進(サンパウロ州政府は大統領にマスク不使用の罰金を科す)
6月19日 新型コロナウイルスよる死亡者の累計が50万人を超える
6月19日 各都市で大規模な反ボウソナロ大統領のデモ(参加者はFFP2、N95マスク着用を呼び掛け)
6月23日 新型コロナウイルスの新規感染者が過去最多の11万5228人
6月25日 保健省によると国民の約12%がワクチン接種を完了
6月25日 IPECの調査による来年の大統領選候補者(想定)の支持率を発表

ブラジルの大統領選は4年に一度、次の大統領選挙は2022年10月に実施され、2023年1月1日に就任となる。
発表された支持率はこちら

ルーラ (元大統領、左派労働党): 49%
ボウソナロ (現大統領): 23%
シロ (これまで大統領選に3回出馬し落選): 7%
ドリア (現サンパウロ州知事、ボウソナロとは犬猿の仲): 5%
マンデッタ (ボウソナロに解任された元保険相): 3%
白紙もしくは無効: 10% 無回答: 3%

汚職事件で有罪判決を受けたために2018年再選出馬を断念した労働党ルーラの有罪取消が確定し、次期大統領選に立候補する意欲を表明。現時点で最有力とされている。
この数字を見る限りだと、ルーラの政界復帰を待ちわびていたかのように見えるかもしれない。熱狂的なルーラ/労働党支持者がいることは間違いないが、私が肌で感じる限り、「ボウソナロじゃなければ誰でもよい。」といった反ボウソナロ派の票の結果とも思える。2018年の選挙も大変緊張感あるものだったが、来年は更に激しいものとなりそうだ。


反ボウソナロ大統領のデモ行進の様子

|ボウソナロ現大統領の再選は厳しい?

2021年5月時点のPoderDataのよる「ブラジルにおけるコロナウイルスの現状況の原因はどこ(誰)にあるか」という調査で、44%が大統領に責任があると回答した。(内訳:国民23%、州知事16%、政府8%、保健省4%、その他5%)
「コロナはただの風邪」「ワクチンを打つとワニになる」「中国製ワクチンは信用できない」「泣き言を言うな」「ワクチンを打つよりコロナに感染した方が効果的だ」と発言した大統領に対して、政治的な評価どころか人として受け入れられないという強烈な反ボウソナロ派も増えている。
ファイザー社のワクチン提供を無視(現在は購入中)、不適合と言われる抗マラリア薬クロロキンの推奨、そして近日報道されたインド製ワクチン購入不正の疑いにより、国民の怒りは更に強まりそうだ。

|2年連続でお祭りなしの6月

ブラジルでは大規模なイベントも中止されている。
国際的にはカーニヴァルの中止が大きく報道されているが、実のところカーニヴァルは好き嫌いがはっきり分かれており、参加する人は起き上がれなくなる程踊り明かすが、参加しない人は全く興味がないようで、旅行に出かけたり、静養したりとゆっくり過ごす。
一方で、日本ではあまりしられていない6月のお祭り"フェスタ・ジュニーナ"は、比較的多くの人に好まれ、気軽に開催、参加されている。
そんな田舎風のほっこりイベントも、昨年同様開催されることはなかった。

フェスタ・ジュニーナとは6月に行われるキリスト教の3人の聖人に纏わるお祭りの総称で、一大イベントはサン・ジョアンの誕生日6月24日を祝うものであり、23日より2日間にかけて行われる。
サン・ジョアン祭りの起源は中世以前、夏至と冬至に自然と豊穣の神々に感謝の意を込めてお祝いされていたものに、キリスト教が宗教的な意味合いを与えたものとされ、ブラジルにはポルトガル植民地時代にポルトガル人によって伝えられた。
そこに多様な人種による変化を伴い今のスタイルとなったのだが、ブラジル先住民の収穫祭の影響もあるようだ。
主に北東部で大々的に祝われていたものがブラジル全土に伝わり、街で開催される大きな規模のものから学校や友人同士の集まりなど様々なシーンで楽しまれる。

天井にカラフルな旗を飾り、収穫時期であるとうもろこしを使った食べ物やサトウキビの蒸留酒カシャーサに果物やシナモン、生姜などを加えて煮た飲み物ケンタォンが用意され、焚き火や喜劇、ゲームが行われる。
また、クアドリーニャと呼ばれるフォークダンスのようなシンプルなダンスを踊るのだが、このダンスは毎年学校でも行われるため、サンバは踊れないがクアドリーニャは踊れるというの人は多い。

|「もう外出していいんだっけ?」

お祭りに田舎風の衣装で参加するというのも楽しみの一つである。
チェックのシャツ、麦藁帽子、ボリュームのあるワンピース、繋げられた眉毛、ひげ、真っ赤なほっぺにそばかすメイク等、比較的簡単に手に入るもので、奇抜な衣装とは違って誰もが可愛らしくなれるのも良い。
そんな田舎風の衣装を着て、バイーア州のホテルにて行われたパーティーの様子を自身のInstagramに投稿したモデルの女性は、皮肉にも「もう外出していいんだっけ?」「影響力のある人間は模範的であってほしい」「気に入らない」などとコメントをされ批判の対象となり芸能ニュースに取り上げられた。

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フェスタ・ジュニーナにて着られるワンピースと藁の帽子(photo by iStock)

もう2年連続でフェスタ・ジュニーナが公に開催できないブラジル。
お祭りどころか、ハグ大好きなブラジル人がそれすら出来ない状況で、国民のしびれも限界を超えている。
ちなみに私は30歳でブラジルへ移住したのだが、案外すんなりハグ文化に溶け込めた。むしろ、一時帰国した際に家族や友人をハグできずにもどかしさを感じている。(文化の違いだから仕方ないが)
フェスタ・ジュニーナも過ぎ去り、今、多くのブラジル人の頭の中はワクチンのことでいっぱいかもしれない。
そして一刻も早く思いっきりハグできるブラジルに戻ってほしいと、誰もが切実に思っているだろう。

【今日の1曲】
フェスタ・ジュニーナで聴かれるのは北東部発祥のフォホーとよばれる音楽である。
クアドリーニャはアハスタ・ペと呼ばれるリズムに合わせて踊られる。
ブラジルの著作権を管理するEcadの発表によると、フォホーが全国的に親しまれるきっかけを作った音楽家ルイス・ゴンザーガの有名曲"Asa Branca"、"Olha pro Céu"を抜いて1位になったのは、マリオ・ザンとパルメイラによる"Festa na Roça"であった。
もし周りにブラジル人の友人がいるなら、この曲を流してみてほしい。きっと自然にクアドリーニャを踊りだすだろう。


 

Profile

著者プロフィール
島田愛加

音楽家。ボサノヴァに心奪われ2014年よりサンパウロ州在住。同州立タトゥイ音楽院ブラジル音楽/Jazz科卒業。在学中に出会った南米各国からの留学生の影響で、今ではすっかり南米の虜に。ブラジルを中心に街角で起こっている出来事をありのままにお伝えします。2020年1月から11月までプロジェクトのためペルー共和国の首都リマに滞在。

Webサイト:https://lit.link/aikashimada

Twitter: @aika_shimada

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