南米街角クラブ
私の目から見た美食大国ペルー
ブラジルに初めて訪れた際、食事の美味しさに正直驚いた。
それまで何度か海外へ渡航し、いつも食事が口に合わずに数日すると日本が恋しくて堪らなかったのだが、ブラジル料理を食べたときに「ここなら住める!」と思ったのだった。(実際、その数年後に本格的に住むことになって今に至る。)
サンパウロではブラジルの国民食である豆の煮込みの他に美味しいパスタ料理が食べられる。
これはサンパウロにイタリア系移民が多い事が関係している。基本的に味付けはニンニクと玉ねぎで、よく使われる香草はパセリとバジルあたりだろう。
また、世界で一番日系人が多い国ならでは、焼きそばや寿司(アメリカナイズされているが)が食べられることや、スーパーで気軽に醤油や味噌が買えるおかげで在外邦人が感じる"日本食ロス"を感じる事も少ない。
もちろんブラジルは広いので、これはサンパウロの話であり、北部や港町では別の国かと思うような料理が食卓に並ぶ。
ペルーも食べるのが大好きな私にはぴったりの場所だ。
渡航前、誰もが口を揃えて「美味しいものをたらふく食べられるよ!」と言っていたが、全くもってその通りだった。
調子に乗って食べすぎたのか、しばらくしてからお腹を壊した。しかし、他のプロジェクトメンバー2人も相次いでお腹の調子が悪いと訴えたので、もしかしたらこれまで口にした事がない物を食べ続けて体がびっくりしたのかもしれない。
1ヶ月を過ぎた頃からお腹を壊す事もなくなり、体とは順応するようにできてるのだと改めて実感したのである。
日本であまり馴染みのないペルー料理だが、世界各国の旅行専門家たちの投票により決まるワールド・トラベル・アワーズの世界最優秀グルメ観光地賞を8年連続で受賞している。
国も、マチュピチュなどの観光地以外にこのペルー料理にも力を入れているようだ。
ペルー料理は色鮮やかで美しい。
更には「ペルーでは40日間毎日違った料理が食べられる」と言われるほどレパートリーが多彩なのである。
それには食材が豊富であることも関係しているだろう。日本でも馴染みのあるじゃがいも、トマト、とうもろこし等はアンデス山脈が原産地であり、そこから世界へと広がっていった。
じゃがいもは3000種類以上も存在するようで、料理によって使い分けられる。
大型スーパーマーケットには5~6種類程度の品揃えだが、市場では千差万別なじゃがいもに目を奪われるだろう。中でもアンデス山脈付近で食べられるチューニョは先住民が作り出した保存用のじゃがいもで非常に珍しい。
夜の寒さでじゃがいもを凍らせて、翌日太陽の日差しで解凍させる。これを何日か繰り返し、水分をなくすことによって長期間保存できるようになるのだ。乾燥したチューニョは軽石のようで、このまま食べずにスープなどに入れて食べる。食感は硬めで、なんとも言い表せない独特な味がする。
アンデス発祥の乾燥じゃがいもチューニョ(2020/09/26 Photo by Aika Shimada)
また、じゃがいもと同じぐらいペルーで重要な食材といえば唐辛子である。
ペルー人は唐辛子の旨味だけを生かすことを知っており、びっくりするような辛さの料理は少ない。
よく使われるのは黄色い唐辛子アヒ・アマリーリョであり、油で炒めたアヒと玉ねぎにチーズ、牛乳、クラッカーをミキサーで混ぜたソースを使った「パパ・ア・ラ・ワンカイーナ」は代表的なペルー料理の一つである。
その他にも紫色のとうもろこしを使ったジュース「チチャ・モラーダ」や、沿岸部で食べられる魚のマリネ「セビーチェ」などが有名だ。
パパ・ア・ラ・ワンカイーナ(2020/01/31 Photo by Aika Shimada)
そして忘れてはならないのは、ペルー料理が中国系移民の影響を受けていることである。
代表的なペルー料理である「ロモ・サルタード」は牛肉と野菜を強火でさっと炒めたもので、味付けには醤油と酢が使われる。フライドポテトが添えられる(場合によっては一緒に炒められる)のがなんともペルーらしい。
更にはリマを中心にChifa(チファ)と呼ばれる中華風レストランが数多く立ち並び、炒飯やワンタンスープ、あんかけ焼きそば等を食べることができる。
白いご飯がすすむロモ・サルタード(2020/08/06 Photo by Aika Shimada)
著者プロフィール
- 島田愛加
音楽家。ボサノヴァに心奪われ2014年よりサンパウロ州在住。同州立タトゥイ音楽院ブラジル音楽/Jazz科卒業。在学中に出会った南米各国からの留学生の影響で、今ではすっかり南米の虜に。ブラジルを中心に街角で起こっている出来事をありのままにお伝えします。2020年1月から11月までプロジェクトのためペルー共和国の首都リマに滞在。
Webサイト:https://lit.link/aikashimada
Twitter: @aika_shimada