パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
14歳の殺し屋逮捕が露わにしたSNSによる請負い凶悪犯罪の低年齢化
10月初旬に公になったマルセイユで起こった殺人事件の実行犯が14歳の少年であり、またその少年の犯行がSNSで募集された請負い殺人であったことや、その雇い主である首謀者が刑務所に服役中の受刑者であったこと、そして、その被害者が本来、標的であった人物とは違う、単なる巻き添えを食った別の人物であったこと、また、この少年が失敗したことから、この少年を雇用?した首謀者が刑務所から少年の犯行を通報して逮捕されたことなど、その全てがもう「どうなっちゃってるの?」と思わざるを得ない不可解では済まされない闇の深さを露呈しています。
関連する2つの殺人事件と麻薬密売+人身売買組織
この殺人事件は、麻薬密売+人身売買組織の敵対するマフィアのギャング勢力の抗争の一端であり、2日前に起こった残虐な殺人事件の報復とみられており、殺人・暴行等の実行そのものは、いずれもSNSにより募集された14歳、15歳という未成年の少年が行っているものです。
最初に露呈した14歳の殺し屋による殺人事件は、事件直後の刑務所内の受刑者からの通報により、容疑者の少年は、ただちに逮捕されましたが、この事件の被害者は、首謀者が依頼した対象者ではなく、巻き添えを食った関係のない人物・VTC(直訳すれば運転手付きの車)の運転手で、目的地に向かう移動中に口論となり、車内で射殺され、車はそのまま学校の建物に突っ込み大破、一見、自動車事故?のようにも見えるような事件で、当初は、後頭部を負傷した男性が起こした交通事故として、市の消防署は報告を受けています。
ところが、この数時間後、自らがこの事件の先導者であると名乗る刑務所の独房から電話をかけていると名乗る男からの通報により、この事件の実行犯の少年の名前や居場所が告げられたとされています。この先導者である受刑者によれば、少年は、依頼した任務を正しく?遂行していないために、少年を切り捨てて通報したとのことですが、どうにも警察を舐め切っているとしか言いようのないやり口のうえ、巻き沿いを食って殺害された被害者には、言葉もありません。
この14歳の殺し屋が雇われたのは、2日前に起こった15歳の少年が50か所も刺された後、生きたまま焼かれたという残忍な殺人事件の報復であったと言われていますが、この被害者の少年もまた、敵対する麻薬密売+人身売買組織を脅迫するためにSNSを通じて雇われた人物で、この雇い主もまた、この後に起こる殺人事件の首謀者と同刑務所に服役中の受刑者であったことも衝撃的な事実でもあります。
つまり、このような裏の組織のマフィアのギャングたちが、自らの手を使わず、たとえ、刑務所内にいても、SNSを利用して未成年者を雇って抗争事件を起こしているという壊滅的な状況なわけです。
ティーンエイジャーの殺し屋は、なぜ増えているのか?
今回の殺人事件は、巻き添えを食って間違えて殺されたVTCの運転手を除けば、被害者、加害者は、14歳と15歳という未成年中の未成年。一般的な概念では、「殺し屋」などとは、無縁であるはずの年齢の彼らがなぜ?このような事件に関わることになっている理由のひとつは、SNSというツールでもあり、麻薬・人身売買を取り仕切るマフィアたちは、たとえ、刑務所内に服役中でさえも、できるだけ安価に雇える未成年を募集して、敵対する勢力に攻撃をしかけ、脅迫や殺人までも依頼しているという現実なのです。
今回の2つの事件では、最初に敵対勢力の脅迫行為を依頼された15歳の少年は、2,000ユーロ(約33万円)、そして、殺人を依頼された14歳の少年は5万ユーロ(約815万円)でこれを請け負っています。簡単にお金を手に入れるために他人の生命を絶つという極めて深刻な行為に対する認識の希薄さとともに、あまりに銃というものが簡単に手に入る現状も挙げられています。しかし、結果的には、この2人の少年は、これを成し遂げることに失敗し、一人は惨殺され、一人は、雇い主により通報されて逮捕されるという彼ら自身が致命的に傷つく結末に至っています。
たしか、3年ほど前に、マルセイユで起こった麻薬密売組織の抗争による銃撃事件が重なって起こったときに、マルセイユ市長が「マルセイユでは、パン・オ・ショコラを買うようにカラシニコフを買うことができる。この現実はなんとしても止めなければならない!」と発言したのを聞いて、驚愕したことがありましたが、その現状は、全く止められていないどころか、ますます悪化していると言わざるを得ず、12歳の子どもの母親が子どもが自宅のクッションの下に隠してあった銃を発見した!などという話までもが浮上してきています。
十代の若者たちの中には、その危険さを知らないままに、容易に稼げるツールを持った法の外にいるギャングに魅了されるタイプの少年たちもいることも事実で、この麻薬密売組織・人身売買組織は、できるだけ安く、できるだけ多くの暴力と残虐行為を行う犯罪を実行するために彼らを利用しています。彼ら(マフィアはもちろんのこと雇われている少年たち)には、生命という概念が明らかに著しく欠如しており、一部のSNSを麻薬密売・人身売買の代理店のように利用しているのです。
そもそも、刑務所内の独房にいる囚人がなぜ?携帯を持っているのかということからして、訳がわかりませんが、このSNSと麻薬、銃器等の武器・・そして、その駒として利用されているのが未成年の少年たちに移行しているということは、極めて深刻な事態と言わざるを得ません。
SNSで募集された少年たちは、2,000ユーロで脅迫行為を請け負ったばかりにメッタ刺しにされた上に生きたまま焼かれ、5万ユーロで殺人を請け負った少年は、失敗して、違う人物を殺害し、いとも簡単に切り捨てられ、彼ら自身の人生も滅茶苦茶になっています。14~15歳の少年からしたら、2,000ユーロであれ、5万ユーロであれ大金で、特に14歳の少年の方は、両親ともに服役中という家庭環境にあり、貧しさゆえにお金欲しさということもあったのでしょうが、どこかゲーム感覚のような気持ちもあるのではないかとも見られています。しかし、そのようなマフィア同志の抗争に関わることが自分の死と隣り合わせであることを彼らが理解できていないことも、このような犯罪が起こる原因のひとつであるに違いありません。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
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