パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
シャルル・ド・ゴール空港からの車を狙う狂暴な強盗の増加
一年を通して、決して治安が良いとはいえないパリも、これから年末からノエル、年始に向けては、中でも最も治安が悪い季節になります。フランス人にとっての一大イベントであるノエルに向けて、街は華やかに飾り付けられ、なんとなく世間も浮足立つ感じがある中で、犯罪者たちも、いつにも増してお金が欲しくなるとでもいうのか?スリや強盗などにとっても稼ぎ時という感じでもあります。観光客狙いのスリや置き引きなどは、日常茶飯事ではありますが、最近、目立って増加しているのが、空港からパリ市内に向かう車を襲う強盗の存在です。
パリは空港についた瞬間から気を抜いてはいけない
つい先日、来年のパリオリンピック準備の安全委員会に出席するために訪れたオリンピック モンゴル代表団の代表夫妻がロワシー・シャルルドゴール空港からパリ市内のホテルに向かうVTC(運転手付き車両)での移動中に強盗に襲われたことが話題になっています。オリンピックの安全委員会に出席するために来仏して、パリに到着するやいなや強盗に遭遇するとは、大変、皮肉なことで、このオリンピックの安全委員会にもパリがいかに危険な場所かという認識が浸透したのではないかと思われます。
ふつう、長旅を終えて、税関を通過して、空港に出て、タクシーなどの車に乗ったら、ひと安心というところですが、パリではそういうわけにもいかないようです。
この2人を乗せた車は空港からパリ市内に向かうヨーロッパ最大級の高速道路A1を通過中、車がサンドニのスタット・ド・フランスの近くのランディトンネルに差し掛かったあたりで、バイクで近付いてきた強盗が車の窓ガラスを割って、後部座席から高価な宝石の入ったバッグを強奪したと言います。彼らの被害申告によれば、バッグの中身は、単価16万5千ユーロ相当のゴールドとダイヤモンドのイヤリング2個を含む57万ユーロ(約9,200万円)とのことで、逆に言わせてもらえば、「なんで、そんなもの持ってくるの?」というか、「オリンピック関係者ってどれだけ持ってるの?」という気もしてしまいます。
とはいえ、彼らが狙うのはオリンピック関係者に限ったことではなく、この種の強盗は組織的なチームによるもので、彼らは、まず空港で、ターゲットを絞り込み、狙いを定めて、この顧客情報(ターゲットの服装や空港から乗った車についての情報など)を仲間に連絡します。つまり、空港についた瞬間から、狙われているのです。空港では、警備が厳しく、たとえ強奪したとしても検挙される可能性が高いために、彼らは、空港を出た車を狙うのです。そして、彼らはその車を追跡し、その車が渋滞などで、速度を落としている瞬間を狙って、車を襲撃するのです。彼らはバイクでやってくるので、渋滞している車の脇を抜けて近付き、徒歩(たいていは二人組なので、そのうちの一人)、またはバイクに乗ったまま、車の隣に立って、側窓を割り、車内の座席の上にあるバッグなどの金品を奪います。まず、車に乗っていて、車の窓を割られた時点で人々はパニックに陥ります。窓を割ってしまえばドアのロックを解除することも難しいことではありません。
Les racailles attaquent les touristes dans les taxis.
-- Bruno Attal (@Bruno_Attal_) May 24, 2023
On leur demande de partir en province pendant les #JO2024 ?
pic.twitter.com/AILdsPVIUA
また、このCDG空港からパリ市内に向かう高速道路A1は、度々、渋滞することでも有名です。私が空港からパリに帰ってくる際なども、渋滞なしにスイスイ帰ってこれたことはほとんどありません。こうなってくると、まず、狙われたら最後、身を守るには、空港到着時から、できるだけ目立たず、簡素な服装に身なりを包み、車に乗ったら、バッグ等は車外から目につきにくい足元に置くなどしか方法はありません。
今回のオリンピック代表団団長夫妻を襲った強盗3人(空港での連絡係とバイクで強盗を実行した2人)は、すでに逮捕されていますが、彼らは、先月にも同様の手口でアラブ人を襲い、5万ユーロほどを荒稼ぎしていたと伝えられています。
ターゲットは、アジア人、中東人
しかし、この種の強盗は、最近、増加傾向にあるとはいえ、今に始まった話ではなく、ここ15年ほど続いているようで、空港で待機するタクシーなどの運転手には、知らない人はいないほど、有名な犯罪の手口のようです。この高速道路A1での強盗事件は、警察関係者からは、「玄関先での強盗事件」として、位置付けられているもののようですが、解決策がとられるどころか、増加しているのでは、救いようがありません。
何よりも日本人としては、アジア人の顔をしているだけで、ターゲットとして、選別されかねないわけですから、より一層、気を引き締めていなければなりません。空港に到着したところで、ホッとしがちなタイミングでもあり、パリに持ってきたすべてのものを持っているわけですから、この車を襲撃することは、狙う側からしたら、効率のよいことに違いありませんが、これは、空港からの車だけでなく、パリ市内においても同じことです。私の知人には、パリ市内(16区)で車を停車させたとたんに車に押し入られて、バッグを強奪された人もいます。車内というのは、一見、安心しがちな場所ではありますが、車をロックし忘れていたり、さらには、窓ガラスなどを割られてしまえば、かえって身動きがとれない場所であるとも言えます。
こんな状態では、来年のパリオリンピックで選手団や観光客で溢れかえった状態になった時は、一体、どんなことになるのか、大変、心配です。華やかそうに見えるパリでおしゃれができないのは、残念かもしれませんが、実際に、私は、外出するときなど、かなり簡素な服装しかしませんし、ブランド物のバッグなどは、まず、持ち歩きません。
オリンピック開催時に、このような事件がおきれば世界中に轟きわたる大スキャンダル。オリンピックの際には、特別警戒状態が敷かれることになると思いますが、とはいえ、何も強盗などの犯罪は、空港からの道のりだけに限ったことではなく、また、多くの人でごった返す状況では、国ができることにも限度があります。とりあえず、このような犯罪者に狙われないように、できるかぎりの対策をとって自分の身は自分で守る対策をとることは、大事なことに違いありません。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR