パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
ラグビーワールドカップとジャニーズ性加害スキャンダルとフランスの日本のマスメディア批判
現在、フランスでは、9月8日から10月28日までという長期間にわたり、ラグビーワールドカップを開催しており、街は多くのラグビーファンで盛り上がりを見せています。不勉強にもラグビーとは、こんなに人気のスポーツであったのか?と驚かされるほどです。
パリのコンコルド広場には、いつのまにか、ラグビーヴィラージュなる特設会場が出来上がっており、そこで競技が行われるわけではないものの、ちょっとしたラグビー村のようなスペースには、大きなラグビーワールドカップオフィシャルショップや巨大スクリーン、特設ステージの他、子供も楽しめるミニラグビー場や簡単な軽食をとれるお店なども出店されており、このパリのど真ん中、シャンゼリゼの麓、エッフェル塔も拝め、チュイルリー公園に隣接するコンコルド広場という場所にこんな空間ができるものか?と驚いています。
アサヒホールディングスがいち早くジャニーズに対する見解を明らかにした理由
日本で大炎上中のジャニーズ事務所の性加害問題について、同事務所に広告を依頼していた企業が続々と撤退を発表しているようですが、中でも、かなり早い段階でアサヒホールディングスが会見で「ジャニーズタレントを広告に起用するということは、人権問題に寛容な企業と判断される」とジャニーズ広告の撤退を発表したのには、現在、行われているラグビーワールドカップのスポンサーを務めていることが何よりも早い対応が必要だった理由のひとつであることは言うまでもありません。なにも、このワールドカップでのアサヒビールの広告にジャニーズタレントが使われているわけではありませんが、アサヒホールディングスがそのような問題ある芸能プロダクションと関わりがあるという企業であるとみなされるだけで大打撃、というよりも、下手をすると、アサヒホールディング自体が撤退を余儀なくされかねない恐れさえあります。
海外では、何か問題が起こったときには、特に、何も反応しないということは容認しているものとみなされるのは常識で、些細な日常生活のトラブルなどでも、言うべきことは言わないと、間違った判断をされたとしても、言わない方が悪いようなカタチになってしまいます。よって、このような全世界が注目するラグビーワールドカップのスポンサーを務め、いつも以上に注目を集めている立場である今回のアサヒホールディングスの早急な意思表明は、まことに賢明かつ当然の対応であったと思います。
ましてや、この犯罪の内容が長期間にわたる未成年者への性的虐待行為という絶対的に許されない行為であるだけに、それを容認している企業となれば、その企業自体が大バッシングを受けることは必須なのです。
関連企業の広告撤退と日本のマスコミ批判
日本での今回のジャニーズ問題への報道、YouTubeなどを見ていると、「海外だったら、絶対にアウト!」などと言われており、実際に、アウトだと思いますが、もちろん、海外進出している企業にとったら、それこそ命取りになりかねない大問題で、広告がマイナスに受け取られるわけですから、撤退するのは、至極当然のことであるとは思います。
しかし、これが、海外だったらアウトだから・・という見方は、どうにもモヤモヤするところでもあり、海外だったら・・というのではなく、日本でも絶対ダメでしょ!と思うのです。そもそもこの問題がようやく表面化したのも、BBCなどの海外メディアが取り上げたり、国連までもが動きだしたことによるのも、海外がつついてくれなければ国内だけだったら、ごまかし続けたという日本のテレビや新聞などのマスメディアの機能不全の問題でもあります。
タレントに罪はない・・かわいそう・・などと言う声もあるようですが、とにかくこの事務所のやってきたことは、絶対に許されないことです。会社本体が問題を起こしたり、倒産したりしても、社員に罪はなくとも、リストラされたり、失業したりすることは、決して珍しい話ではありません。なんなら、その事務所に居続けること自体、この事実を容認していると受け取られても仕方がないくらいな話でもあります。とはいえ、これから信頼を回復し、会社をともに立て直していくのであれば、公の立場に出るタレントとしたら、一般人とは違うので、個々にこの問題に対しての意見を表明してもいいくらいではないかとも思います。
とはいえ、芸能界という特殊な世界のこと、あくまでも、私の個人的な見解です。
今回のジャニーズ問題について、フランスの報道では、現在のところ、そこまで大きく取り扱われてはいません。とはいえ、報道機関は、全く無視しているわけでもなく、現在、起こっているこのスキャンダルについては、把握しています。事実、今回のラグビーのワールドカップのジャパンアンバサダーにジャニーズタレントが使われていることを疑問視する記事がルモンド紙(仏大手新聞社)に掲載されていまし、フィガロ紙の特派員が「弱きを挫き、強気を助ける日本のマスコミ」という痛烈な日本のマスメディア批判の記事を掲載しています。
実際に、この日本のマスメディア批判は今に始まったことではなく、安倍元総理暗殺事件の時の報道でも、フランスがさんざん批判していたことで、ヘリコプターまで飛ばして、多大な人員と費用を費やしつつも、警察当局発表のニュースを垂れ流す、しかも翌日の新聞の見出しは大手新聞社が一言一句違わないタイトルをつけて発表するという不甲斐なさ。しかも、目前に控えた選挙が終わるまでの報道規制などを、もはや日本のマスメディアはその役割を果たしておらず、卵の殻の上を歩いているようなものだと猛烈に批判していました。
「記者魂」という言葉は、今や死語なのかもしれませんが、「表現の自由」「報道の自由」「言論の自由」を尊び、いわば、お家芸とも言うほど、何につけても黙っていないフランス人、ましてや報道に携わる立場の人間ならばなおさらのこと、まさに「強気を挫き、弱きを助ける」、「真実を伝える」、ある意味、世直し的な使命感を持たない報道機関などあり得ない、存在価値がないという見方をしていますし、事実、これが報道機関のあるべき姿であると私も考えます。
この犯罪が大変な罪であることはもちろんではありますが、テレビ局や報道機関が利益を優先して、本来の彼らの使命であるべき真実の報道を捻じ曲げ、伏せ続けていたことが今回の事件の被害が拡大してしまった大きな原因でもあります。日本のマスメディアの機能不全の体質は、ジャニーズ事務所の問題のみならず、あらゆる場所における問題を隠蔽し、被害を拡大させることに繋がっています。
テレビなどの媒体は、テレビ離れなどと言われつつも、まだまだ影響力は大きな存在で、特に放映権という特別な権利を享受している媒体で、その権利には、自分たちの利益の前に、その使命があるということを認識し、少々、野暮ったい言い方ではありますが、強気を挫き、弱きを助ける正義の味方でいてもらいたいものです。
何かといえば、物申すフランス人で、それが行き過ぎだと思う場面も少なからずあるのも事実ではありますが、どの国もどんな社会でも問題を追及し、社会に問題を投げかけるマスメディアは不可欠です。海外だったら、絶対にアウト!などと言われるのも、海外のマスメディアも国民も、このような犯罪に対して、絶対に黙ってはいないからなのです。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR