パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
パリ 日本大使館近くで銃撃事件 場所おかまいなしになってきたパリの治安
ここ1~2年でフランスの治安が一段と悪化している気がするのは、恐らく私だけではないと思います。テレビのニュースでは、殺人事件の話を聞かない日が珍しいような気がするし、また、その事件が起こる場所が、えっ??そんなところで??と思うような場所で起こったりすることには、言いようのない絶望感を感じます。
パリ 日本大使館近くでの銃撃事件
これまでも、パリ全体、決して治安のよい街とは言えないことは承知していましたが、それでもパリの中でも比較的ヤバい地域、特にパリ北部のサン・ドニや、麻薬やドラッグの拠点といわれるスターリングラード広場、19区あたりなどは、犯罪が多発している場所というイメージがあり、少なくとも、そのような場所はできるだけ避けるようにすることで、犯罪に巻き込まれることをある程度は回避できるように考えていました。
また、観光客狙いの強盗や暴行事件など、エッフェル塔近辺、特に夜中の時間帯での暴力的な犯罪も少なからず取り上げられてきていたので、せいぜい、スリや置き引き、ひったくり、窃盗などは日常茶飯事としても、いわゆる観光地のポイントとなっている場所はそれだけでは済まなくなる可能性もあるため、特に夜中の外出は絶対に避けるべき!などと思っていました。
もう、私自身、スリや置き引き、ひったくり、窃盗などは日常茶飯事で大したことない犯罪と思ってしまっていること自体、考えてみたら、ちょっと、どうかしていると思うのですが、私がそう感じてしまうようになっているのも、それ以上の凶悪事件が起こっているからに他なりません。
だいたい、銃による事件が一段と増えたのも特徴的な気がしています。フランスは狩猟などの特別な免許を持たない限り、銃の所持自体が違法なはずなのに、これだけ銃による事件が後を絶たないのも、これは早急になんとか対応してもらわなければならない問題なはずです。
先日、テレビのニュースで「パリ・クールセル駅(メトロ)の近くの路上で銃撃事件・男性1名死亡」のニュースが流れて、「およっ?」と思ったのです。それが聞き覚えのある駅だったからです。パリでの生活も、もう結構、長くなったとはいえ、私の日常の行動範囲は限られていて、パリにあるメトロの駅を全部知っているわけではないにもかかわらず、通勤圏内でもなく、頻繁に行く場所でもないのに、聞き覚えがある・・という程度のメトロの駅・・しばらく、考えて、「え~~?まさか、日本大使館の近くじゃん!」と思い当たるまでには、そんなに時間はかかりませんでした。
在外邦人にとって、日本大使館は、在外投票、パスポートの更新手続き、日本での公的手続きに必要な書類の申請だったり、娘が小・中学生の頃は年に2回、日本の教科書を頂きに9年間、仕事の合間を縫って通いました。なので、そんなに頻繁に行くところではないにせよ、そこそこ行っている場所ではあるのです。
パリの日本大使館は、シャンゼリゼからもほど近い、いわゆる一等地の部類に入る場所にあり、気候のよい時などは、近辺を歩くのは気持ちのよい素晴らしい場所にあります。そんな場所で、日中、しかも路上での銃撃事件とは、まことに穏やかではありません。いわゆる危険な場所といわれる場所ならいざ知らず、あんなにゆったりとした優雅な街並みのあたりでこんな事件が起こるようになるとは、世も末、ましてや路上で銃を発射するなど、もってのほかです。目撃者の証言によれば、銃声は少なくとも3発は聞こえたということで、流れ弾に当たれば、おしまいです。
この一件は、どうやら、個人的な恨みによるものであると見られていますが、複数の犯人は、すぐに数台のバイクで逃走し、数分後には、逃走に使われたバイクはパリ郊外に乗り捨てられており、待ち構えていた車で逃走したと言われているので、計画的に個人を狙った犯行だと見られていますが、未だ、犯人が確保されたというニュースを目にしていません。
シャンゼリゼ近辺でも銃撃事件 もはや銃撃犯は場所を選ばない
この事件が起こったちょうど一週間くらい前にも、シャンゼリゼのジョルジュサンク(メトロ)(シャンゼリゼの中腹あたり)からすぐのところで、銃撃事件があり、男性が1名死亡しています。シャンゼリゼから数分のところでの銃撃事件と聞いて、「もはやパリには安全な場所はない・・」と思ったばかりです。
しかし、この時は、真夜中の出来事で、しかも犯人が銃を発射したのは一発のみで、被害者はほぼ即死の状態で、一般市民が巻き込まれることはなかったのですが、真夜中とはいえ、繁華街での出来事で、人通りが少なくはなく、現場近くにいた人々はパニック状態に陥ったそうです。
今回の日本大使館近くでの銃撃事件にせよ、シャンゼリゼ近くの銃撃事件にせよ、同じエリアでもあり、また、いわゆるパリの優雅な街並みが連なる場所ということが何よりも衝撃的です。これまでは、このような凶悪犯罪は、比較的、それなりの場所?で起こっていたのが、もはや銃撃犯は、場所を選ばなくなっていることが恐怖です。日頃、私はフランス国内であまり地方には行かないのですが、それでもたまに地方に行く機会があって、パリに戻ってくると、警察官があまりにもたくさんいることに、あらためて驚愕することがありますが、それは必然なのかもしれません。
フランスはヨーロッパで一番、殺人事件が多い国
これらの事件を含めて、パリ、フランスの治安悪化について、マクロン大統領は、「原因が何であれ、社会において正当化される暴力は決して存在しない!昨今の痛ましい事件は非文明化のプロセスである」と説明したことには、一定数の反発の声も上がっており、その反発する説明として、「40年前には、年間1,400件もあった殺人事件が今では800件ほどに減少している」という数字を挙げていましたが、これはこれでビックリな話でもあります。40年前の殺人事件がどのようなものであったのかはわかりませんが、現在、800件ほどに減少?しているといわれる殺人事件の数でさえ、ヨーロッパでは堂々1位の数字。1日2人以上の人が殺されているということになります。
中でも銃撃事件といえば、パリでは今回の事件を除けば、どちらかといえば、警察官が犯人を射殺・・ということの方がよく聞くような気がしますが、それは、いわば、それ以上の一般市民への被害が及ぶことを避けるために警察官は発砲するわけなので、そうでなければ、被害者が増える可能性がある、やむを得ない発砲です。
つい先日、日本で起こった長野県の立てこもり事件など、パリなら、犯人はすぐに警察官に射殺されてしまいます。いわゆる警察官の発砲事件で記憶に新しいのは、今年に入って早々のこと、パリ北駅で早朝にナイフを持った男が駅入り口から構内にかけて居合わせた人々に襲い掛かり、ナイフで6人を刺したところで、現場に駆け付けた警察官が犯人を射殺しています。パリを巡回している警察官は当然のことながら、皆、拳銃を携帯していますが、いつ、いかなる時にも、それを発射する覚悟があり、実際に行動に移すということです。死刑制度を非難する一方で、あまりに簡単に容疑者を射殺してしまうのもいかがなものかと思わないでもありませんが、市民の安全を守るためには、そこまでしなければならない現状なのかもしれません。
こういう事件も含めての殺人事件の数なのかどうかはわかりませんが、いずれにしても、物騒なことには変わりありません。警察官の発砲事件は別としても、拳銃を所持している人が格段に増加したのだろうということは、容易に推察できます。そのような武器をどのように入手しているのかは私には、わかりませんが、麻薬やドラッグなどの密売組織の武装化により、これらの組織が麻薬やドラッグとともに大量の銃などの武器を蓄え、密売していることも関係があるかもしれません。
数年前にマルセイユで麻薬の取り引き現場で14歳の少年が銃殺される事件に起こった時に、マルセイユ市長が「マルセイユではパンオショコラを買うようにカラシニコフを買うことができる」と話したことは衝撃的でしたが、フランスはヨーロッパ最大の麻薬消費国であるとも言われており、フランスの殺人事件の数がヨーロッパで一番であるということとも関係があるのかもしれません。
ようやく初夏らしくなり、観光客も一段と増えてきた華やかなパリには、闇が潜んでいるのも大変、残念なことです。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR