年明けからフランス人の話題の中心は「年金改革問題」で、デモ・ストライキといえば、先頭を切って始まるSNCF（フランス国鉄）やRATP（パリ交通公団）のストライキを皮切りに、学校や昨年、大騒動になったガソリンスタンドなどへの給油所や例をあげればきりがないほどです。

今回は年金改革問題ということで、全国民に共通する問題なだけに、あらゆるところでのストライキが考えられていたわけで、中には、高校生や大学生などの学生までもが学校を封鎖してしまったりして、「さすがにフランス・・すごいな・・まだ、働き始める前から年金問題にこれだけ真剣に向き合うんだ・・」と妙に感心したりもしていました。

パリの街はゴミに溢れている

今回の年金改革問題に抗議するデモやストライキは、１月から、ある程度、時間をあけて、数度にわたり行われてきましたが、ストライキの当日は、デモ・ストライキが終わると今回のデモは200万人動員したとかいう報告とともに、次回のデモは〇月〇日の予定・・などと発表されてきました。今回のデモは全国に共通するテーマだけに、全国組合連合のようなものが大旗を振っていて、２月の半ば頃の段階で、３月７日は、「国の機能を麻痺させるくらいの大規模なストライキを決行する」と予告されており、実際に、メトロやバス、国鉄、空の便までかなりの割合でキャンセルされ、たまたま当日に予定が入ってしまっていた私もメトロの間引き運転か・・などとタカをくくっていたら、まさかの駅が閉鎖で全く動いておらず、えらい目に遭いました。

そんな中、すぐには気が付かなかったのですが、まさかのゴミの収集業者がストライキを始めており、３月７日以来、ゴミの収集がストップし、１週間以上経ってもゴミの収集業者は復活せずに、あっという間にパリの街はゴミの山と化し、パリのゴミ問題は衛生的にも問題があるとテレビなどでも毎日のように大きく取り上げられています。

しかし、このゴミ収集の問題は、パリ市内の約半分の区に限られた話で、ゴミ収集を委託している区は、通常どおりにゴミ収集は継続されていて、幸いにも私の自宅近辺はゴミ収集をしてくれているので、ゴミ問題はありません。

とはいえ、狭いパリのこと、少し歩けば隣の区にいけるわけで、そのゴミの山の凄まじさには、強烈なゴミの臭いとともに、かなり閉口してしまいます。普段、ゴミの集積所などは、あまり気にしていないので、どのくらいパリにゴミの集積所があるかはわからないのですが、こうして、雪だるま式にゴミが溜まっていくと、もうその界隈、数十メートルおきにゴミの山があるわけで、少なくとも通常は景観を乱すことにとてもうるさく、お店のテントの色までにも口を出すようなパリの街がもうぶち壊しどころの騒ぎではなく、しかも、それが盛大な異臭を放っているとなれば、もう言葉もありません。

ネズミが街を徘徊しても衛生的には問題ない？

パリは旧建築も多く、配管なども古く、また建物自体の内側も入り組んでいたりするため、もともとパリとネズミは切っても切れない間柄で、ネズミが数多く生息する街でもあります。以前、勤務先にゴミ収集が来た際に、ゴミ箱からネズミが出てきて悲鳴を上げた私にゴミ収集業者のおじさんが「ここをどこだと思ってるの？ここはパリだよ！ネズミくらいで驚いていたらパリでは暮らせないよ！」と鼻で笑われたことがあり、実際、定期的に職場には、ネズミ除けの薬を置きにくる業者が来ていました。ある日、朝早くに会社に出ると、その毒？を食べたネズミが社内の絨毯で死にかけていて、また悲鳴を上げた私に同僚の女性（若くて美しい人でしたが・・）が涼しい顔をして、紙でネズミをつかんで外のゴミ箱にネズミを捨てに行ったのを見て、仰天したこともありました。

今回は、昨日の段階でパリの街中には5,600トンのゴミが山積みになっているとかで、さすがにそれだけのゴミが街中に積み上げられれば、これまで屋根裏に隠れていたネズミは街中を徘徊し始めるわけで、衛生的にも問題視され始めています。

しかし、パリ市は「市民への健康への影響はない」としており、ついには内務大臣がストライキ中のゴミ収集業者に任務に戻るように働きかけることを要請するまでになっているにもかかわらず、パリ市長は「市長の権限の及ぶことではない」とはねつけているようで、ついには、国がパリ市のゴミ撤収にかかわることになるかもしれないと言われています。

ゴミの山にも慣れちゃった？

パリジャン・パリジェンヌといえば、カフェのテラスが大好きで、冬の寒い時にも、夏の暑い時でもカフェのテラス席で悠々とくつろぐのが大好きですが、さすがにそう広くもない通りでは、ゴミが溢れてテラス席も撤収しなければならない場所もあり、ましてや撤収しないまでも、ゴミの山と異臭に包まれてまで、テラスでカフェを楽しむこともないだろうと思いきや、いつもよりは断然、少ないとはいえ、それでもなお、カフェのテラス席にいる人もいて、「え～～どんだけカフェが好きなの？？」とちょっと愕然とさせられます。

また、このゴミの山の写真を撮っていたら、通り過ぎていく中年の男性がにっこりしながら「これがパリだよ！」と親指を立ててウィンクしていくのには、もう苦笑いするしかありません。山積みのゴミの横を通り過ぎていく人々は、もう、ゴミには目もくれずに平然と歩いていきます。

考えてみれば、ゴミの収集業者が来なければ、日本ならゴミを出さないようにするとも思うのですが、そんなことにはお構いなしにみんなが相変わらず、箱も崩さずにここぞとばかりにゴミを積み上げていくのも、迷惑を被りながらも、どこか、この騒ぎを大きくしてやろうという気があるのではないか？と思ってしまいます。

このパリのゴミ問題、マスコミでも大きく取り上げられて騒ぎになっているため、ゴミ収集業者のストライキは少なくとも来週月曜日までは続けられるということで、ここぞとばかりに騒ぎを盛り上げている気がします。

ストライキで仕事をしない分は当然のことながら給与は支払われないわけで、７日から少なくとも20日までといえば、２週間分の給与が支払われないことになります。そういう意味では身を削って抗議しているわけですから、ある意味、大した覚悟だとも思います。

「問題ないわけないわよね・・」と言われてしまいました・・

７日の時点のことですが、久しぶりにメトロのストライキにドハマリして、ミーティングの場にげっそりして到着した私は、久々のストライキの被害にちょっとウンザリして、約束していた相手に「ここまでどうやって来たんですか？」と聞くと、彼女は涼しい顔で、「私は車だから・・」と。私はメトロがクローズだったので、バスを何本も乗り換えてきたと話して、「こんなストライキにドハマリしたのは久しぶり・・」と言ったついでに、「日本では、もうずいぶん長い間、ストライキということもなかったし・・」とこぼしたら、「日本は何の問題もない国なの？」「問題ないわけないわよね・・」と言われて、返す言葉もありませんでした。