中国航海士・笈川幸司
第4回 小ナイロビ・キリン動物園ではキリンに触れられる
サイトでは、顧客による写真やコメントをバッチリ見ることができるが、犬カフェ・猫カフェに関しては、コメント通り、動物と触れ合う機会が多かった。実際に行ってみると、いつ行っても大人気で、お客さんでいっぱいだった。しかし、何か変だ。皆、おしゃれをしていて、女性はお化粧もしている。よくよく見てみると、美男美女のカップルか、おしゃれで綺麗な女性一人、おしゃれで綺麗な女性二人組ばかりで、私のように50歳のおじさんはそこにはいない。
みな、写真を撮りまくっている。Facebookとインスタが使えない中国では、WECHATが自己アピールの場になっているようだ。15年ほど前、日本ではミクシイが流行っていた頃、中国ではウェイボーやWECHATが流行る前、「人人網」があった。そこでは、プライバシーをさらけ出し、顔を出すのは当たり前。顔を出さない学生を見つける方が難しいほどで、誰もが、「自己アピール大会」の参加者だった。しかしながら、今は、日本人と同じかそれ以上に気をつけているようで、容姿に自信のある「一部」の若者だけが顔を出すらしい。従って、犬カフェ・猫カフェにくるのは、自分の容姿に自信のある「一部」の若者ということになる。ちなみに、この特殊な期間にリモート授業が日本でも行われたが、日本との相違点は、中国では顔を出す学生が皆無だということだ。教師も顔を出さないことがほとんどだった。中国人は、「一部」の人をのぞいては、顔を出さない。
時を戻そう。
中国では、犬カフェ・猫カフェに、子供は通えない。理由は、子供のいたずらによって、トラブルが多発したからだという。その代わり、豚カフェに通うことができる。ただ、そこで気づいたのは、豚カフェに行くのは、躾がしっかりされていて、上品な両親を持つ子供だけだ。
動物園での餌やりは子供たちに人気だ。ところで、私が住む杭州市、あるいはその周辺には、動物と触れ合うテーマパークが少なくない。「小奈良」と呼ばれているテーマパークでは、鹿と触れ合うことができる。「小ナイロビ」と呼ばれているキリン動物園では、キリンと触れ合うことができる。
今回は、「小ナイロビ」で、キリンと触れ合った1日について話していこうと思う。その日、妻に休んでもらいたいと考え、子供二人を連れて出かけた。
片道90キロ、往復3時間の道のり。出発前日にタクシーを予約した。ただ、普通に予約すると高くつくため、「滴答順風車」を使って予約した。中国タクシー業界で最も力があるのは「滴滴」だが、数年前に「滴滴順風車」の運転手が立て続けに犯罪事件を起こしたため、「順風車」...つまり、「俺も同じ方向へ行くから、ついでにお前も乗せてあげるよ。普通のタクシーより安いしね」というサービスが、「滴答順風車」だけになってしまったのだ。
「滴答順風車」で往復300元(5000円)を支払い、「小ナイロビ・キリン動物園」へ向けて出発した。
90分後、キリン動物園の駐車場に着くと、運転手に「二時間後に一度電話します。二時間半後にここで待ち合わせましょう」と言い残し、チケット売り場までお客を運ぶ専用車に乗り込んだ。片道10元(160円)かかった。
今回、8歳の息子は子供料金が必要だったが、4歳の娘は120cm以下だということで、無料だった。私は親子セット券を168元(3000円)で購入した。この中には、3人分の入場料と昼食バイキング無料券が含まれている。
チケット売り場を通り抜けると、いきなりキリンの群れが見えてきて、子供達の笑い声が聞こえてきた。どうやら、キリンに餌やりをしているようだった。近くに、人参と、人参を刺し、キリンに餌やりをしやすくするスティックが置かれてあった。店主らしいおばさんに2セット注文すると、「60元(1000円)!」と言われた。動物の餌としては少々高めだ。しかし、ここにきて餌を買わない人はいないだろう。常連客は、家から人参を持ってくるのだろうか。
キリンは長い舌を出し、餌を巻くようにして捉えてから食べる。だから、噛まれる心配はない。息子は、途中から手で餌をあげていた。キリンの長い舌に舐められ、手がベトベトになるので、手でやりたい人は、心の準備をしていってもらいたい。
ほんの20分ほどの出来事だったが、子供達はそのひと時を楽しんでいたようだ。それから、娘が「お腹がすいた」というのでレストランに向かった。途中、丹頂鶴の群れを見かけたので、記念撮影をした。そう、ここはキリンをメインにした動物園ではあるのだが、ほかにもアライグマやカンガルーといった人気者と触れ合うこともできるのだ。残念ながら、私が行った日は、係員から「カンガルーはお休みです!」と言われ、会うことができなかった...。
キリン動物園には宿泊施設があり、一泊2400元(4万円)で泊まることができる。レストランは五つ星ホテルのレストランということで、サービスは普通だったが、口に合うおかずを探すのは難しくなかった。
その日は気温が高く、35度を超えていた。節約のため、レストランの窓は閉めきったままだったが、気候の良い季節は、全ての窓が空けられていて、窓際の席からキリンに餌を与えることもできるそうだ。
あっという間に二時間半が過ぎた。
私たちはタクシーに乗り込み、家路についた。使った費用は約1万円だった。
最初に、犬カフェ・猫カフェでは、容姿に自信のある「一部」の若者だけが顔を出すと書いた。彼らは、WECHATのモーメンツに、犬や猫とのツーショット写真をあげるのだが、キリン動物園にいたのも上品な親子連れがほとんどで、どの家もパパが専属カメラマンと化し、きれいな洋服を着た大事な一人っ子と美人ママの笑顔をスマホにおさめていた。
著者プロフィール
- 笈川幸司
1970年埼玉県所沢市生まれ。中国滞在20年目。北京大学・清華大学両校で10年間教鞭をとった後、中国110都市396校で「日本語学習方法」をテーマに講演会を行う(日本語講演マラソン)。現在は浙江省杭州に住み、日本で就職を希望する世界中の大学生や日本語スキル向上を目指す日本語教師向けにオンライン授業を行っている。目指すは「桃李満天下」。