アルゼンチンと、タンゴな人々
インフレ年率64%。一カ月で経済相が2度変わる、アルゼンチンの謎だらけの経済事情
そしてまた複雑なのが、現在国内で流通しているドル⇔ペソの換金レートの数。現在は合計6つ存在し、新聞などでも日々更新されています。
それらは銀行のオフィシャルレート、輸出入用のビジネスレート、外国人旅行者用レート、闇レートなどです。(DOLAR : BNA, BLUE, TURISTA, MAYORISTA, CDO C/LIQ, MEP CONTADO)
住んでいても頭のこんがらがるようなシステムですが、フェルナンデス大統領が選挙当選時に公約として掲げていた、「アルゼンチン経済をダメにするBicicleta financiera(キャリー取引)からの脱却」は、一応守られている形です。
参考リンク : BBC News 「Qué es la "bicicleta financiera", un símbolo de la Argentina de Mauricio Macri con el que inversionistas de todo el mundo han ganado millones」
アルゼンチンのお給料事情
アルゼンチンの現在の最低賃金は45540ペソ/月、正規雇用の平均月収は100000ペソです。(2022年7月現在)
また中流階級層・4人家族の場合の、ひと月当たりの最低支出額は100000ペソと計算されており、それ以下となると貧困層というカテゴリーになります。
なので、正規雇用の共働きでも最低賃金で働いていれば、4人家族で貧困層家庭となるわけです。
家賃はブエノスアイレスの市街地のワンルーム賃貸でおよそ50000ペソ(2022年5月発表の平均価格)、郊外では20%~30%減くらいで同じ条件のお部屋を見つけることが可能です。
賃貸だと年に一度家賃更新があるのですが、その値上げ率はインフレ率と同じパーセンテージと定められていて、更新の際に値上げがいくらになるか計算が出来るサイトも政府によって制作されています。(私の家賃更新も来月なので、計算してみたのですが恐ろしいです・・・。)
そしてインフレ率に伴い給与も同じ比率で上がっていれば良いのですが、そうはいかないのが現実です。
職種(労働組合の強さ)にもよりますが、その比率のズレは、塵も積もれば山となります。私の周りの様々な正規雇用(会社勤務、市立・国立オーケストラ正団員など)の友人たちに事情を聞いてみたところ、昇進などを考慮せず同じように勤務した場合の給与をドル換算すると、10年前に比べておおよそ3分の一程度に減っているという計算になっているようです。
航空券購入や国外利用でのクレジットカード分割払いが不可能に
アルゼンチン中央銀行は2021年11月、航空券や宿泊代など外国旅行サービスのクレジットカードによる分割払いを禁止しています。これには外国旅行に対するディスインセンティブを働かせて外貨流出を少しでも抑制する狙いがあり、逆に国内旅行で消費を促す為の政策「Previaje」が、2021年~2022年のバケーションシーズンに合わせて実施されました。
これは、国内旅行の航空券代・ホテル宿泊代など特定の旅行費用に関して50パーセントがバックされ、バック分は国内の指定の飲食店などで利用できる、というものでした。
なので今年のバケーション期間には、普段外国に行く人もPreviajeを利用して国内旅行へ出掛けていたような印象です。(経済危機でも、バケーション期間にはしっかりバケーションを楽しむ、というのがアルゼンチン流・危機のやり過ごし方です。)
それに加え今月7月7日、中銀は免税店など外国での商品購入時、また越境通販を利用する際のクレジットカードの分割払いを禁じました。国内で発行されたクレジットカードでの取引が対象となっています。
著者プロフィール
- 西原なつき
バンドネオン奏者。"悪魔の楽器"と呼ばれるその独特の音色に、雷に打たれたような衝撃を受け22歳で楽器を始める。2年後の2014年よりブエノスアイレス在住。同市立タンゴ学校オーケストラを卒業後、タンゴショーや様々なプロジェクトでの演奏、また作編曲家としても活動する。現地でも珍しいバンドネオン弾き語りにも挑戦するなど、アルゼンチンタンゴの真髄に近づくべく、修行中。
Webサイト:Mi bandoneon y yo
Instagram :@natsuki_nishihara
Twitter:@bandoneona