シリコンバレーと起業家
コロナ禍で見えてきたシリコンバレーの変化
──そういったシリコンバレー・ベイエリアでの人の動きやトレンドを踏まえて、内藤さんから見て伸びていると感じるプロダクトやサービスはありますか。
内藤:リモートワークの流れでいうと、半ば強制的にリモートワークに移行したことで、使わざるを得なくなったサービスが増えたと思います。例えば、コミュニケーションであればSlack、タスク管理であればAsana、ビデオ会議であればZoomといった具合です。そういう観点で、やはりSaaSのプロダクトは伸びていると思いますし、実際にそう聞きます。
その波に乗って、資金調達を行ったSaaSのスタートアップは多いです。最近だとLoomというビデオを録画し、それを簡単にリンクでシェアすることで非同時接続でコミュニケーションが取れるという、リモートワークにおける時差問題などを解決してくれるプロダクトも伸びていると聞きます。Zoomはリアルタイムでのコミュニケーションですが、Loomを使えば住んでいる地域や国、時差に関わらずコミュニケーションが取れるというのは今のリモートワークのニーズをうまく捉えています。
こういったSaaSのプロダクトが伸びている一方、特定のC向けのプロダクトも伸びている印象があります。コロナウイルスの影響で外に出て実際に人と会う機会が減り、家の中で過ごす時間が増えたことで、それに比例して人々の可処分時間も増えています。その時間を使って例えばHousepartyというビデオチャットアプリでコミュニケーションを取る人が増えていたり、少し前に有名になったClubhouseというグループ音声チャットアプリなどが盛り上がっています。コロナ前のHousepartyは、伸び悩んでおり、Epic Gamesに会社を売却した経緯があったのですが、今回のコロナウイルスの影響で息を吹き返した印象があり、これらは面白いトレンドだなと思います。
また、ビジネスのミーティングやコミュニケーションがオンラインに移行している影響もあり、Lunchclubというビジネス向けのTinderのようなマッチングアプリが、アンドリーセン・ホロウィッツ(通称、a16z)というシリコンバレーのトップティアのベンチャーキャピタルから約100億円の企業価値をつけて資金調達をしていたり、コロナ禍だからこそ生まれているチャンスや分野もあるのかなと感じます。
著者プロフィール
- 内藤聡
Anyplace共同創業者兼CEO。大学卒業後に渡米。サンフランシスコで、いくつかの事業に失敗後、ホテル賃貸サービスのAnyplaceをローンチ。ウーバーの初期投資家であるジェイソン・カラカニス氏から投資を受ける。ブログ『シリコンバレーからよろしく』。@sili_yoro