パスタな国の人々
コロナ時代のイタリアスキー事情
例の記事では、ミラノから車で4時間、スイス国境を越えてツェルマットの街へ入るまで、全くコントロールはなかったという。
ツェルマットの街から登山電車に乗ってゲレンデに到着すると、そこからゴンドラに乗ってヨーロッパ最高地点にある「マッターホルン・グラチャーレ・パラディーゾ」3883mに到着する。そこからまっすぐに滑り下りればイタリア(だけど禁止)、右へ降りて行けばスイス、という憧れのコースだ。
ちなみにマッターホルンというのは英語名で、イタリア語ではチェルビーノ。世界的に有名な、あの左にちょっと折れ曲がった山頂の美しい姿はスイス側から見た姿で、イタリア側から見た姿はちょっと不恰好だ。山男たちはA面、B面なんて言ってるらしい。イタリア側からは不恰好だから当然B面だ。でもイタリア側の麓の村、チェルビーニャからはマッターホルンがすぐ目の前に迫ってものすごい迫力であるのに対して、ツェルマットの村からは遠くにその美しい姿を眺める感じだ。
私の住むトリノからは、ほぼ真北に120キロほど行けば、そのマッターホルンの足元でスキーができる。100キロ西へ行けばピエモンテとフランスの国境沿いにスキー場があちこちにあり、そこが2006年の冬季オリンピック会場になった。そして北西へ150キロ行ったらモンブランがある。ヨーロッパの素敵なところは、イタリア側からゴンドラで上がって行って、スイスへ、フランスへ、滑り降りていくことができる、長い長いコースがあるということだ。朝一で、イタリア側のゴンドラに乗って頂上へ着き、反対側の国へ滑り降りたらランチをして、もう一度山頂へ上がって帰って来れば1日が終わる。そんなダイナミックさと、本物のアルプスという贅沢な眺めが最高に気持ちいい。スキースキーと書いているけれど、スノボももちろん盛んになっている。
イタリア、フランス、ドイツは、アルプスでつながっているので、統一を図るためにみんなで禁止に同意しているが、オーストリアはそれに反対、そしてスイスは営業をしているという今回の話。だけどイタリア人がスイスに行ってスキーができたとしても、お金を落とすのはスイスになってイタリアは潤わない。それってどうなんだろう?
著者プロフィール
- 宮本さやか
1996年よりイタリア・トリノ在住フードライター・料理家。イタリアと日本の食を取り巻く情報や文化を、「普通の人」の視点から発信。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」でのコロナ現地ルポは大好評を博した。現在は同ブログにて「トリノよいとこ一度はおいで」など連載中。