パスタな国の人々
コロナ時代のイタリアスキー事情
「コロナで経済打撃を受けて、毎日の食事にも事欠く状況の人がたくさんいるのに、スキーバカンスだなんて、いいご身分だこと」と思うことなかれ。スキー場がオープンしなくて困るのは「行きたい人」たちもそうだけど、「来て欲しい人たち」にとって重大で深刻な問題だからだ。
イタリアはピエモンテ、ヴァッレ・ダオスタ、ロンバルディア、ヴェネト、フリウリ=ヴェネチア・ジューリア、そしてトレンティーノ=アルト・アディジェという北部6州が、ヨーロッパアルプスに接していて、スキー文化はとても盛んである。今回のテーマは「スイスに行けばスキーができるのか?」「コロナ禍で国境を越えてスキーに行けるのか?」という話なので、中部のアペニン山脈の話はちょっとおいておく。それで、スキー文化が盛んな北イタリアでスキー場のオープンが禁止されているから、話は深刻だというわけだ。スキー場を抱えるたくさんの市町村で、リフト券などスキー場そのものの収入に加え、宿泊施設、レストラン、ショッピング関連施設が莫大な損害を抱えることになりそうだからだ。ロイター通信によれば、イタリアのスキー場の年間収入は110億ユーロ(約1兆3700億円)だというから、今シーズン一番の書き入れ時のクリスマスから年末年始に営業できないとなったら、その約4割を失うということだ。
しかもコロナ禍は、昨シーズンの途中から始まっている。私も、2月後半のカーニバル休暇でスキー旅行中に、コロナで娘の高校が閉鎖になる、というニュースが飛び込んで来て驚いたのを思い出す。つまり昨シーズンの半分ぐらいは、すでに被害を被っているということだ。
著者プロフィール
- 宮本さやか
1996年よりイタリア・トリノ在住フードライター・料理家。イタリアと日本の食を取り巻く情報や文化を、「普通の人」の視点から発信。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」でのコロナ現地ルポは大好評を博した。現在は同ブログにて「トリノよいとこ一度はおいで」など連載中。