パスタな国の人々
イタリアがコロナ優等生になった本当のワケ
例えば3月に日本のある大新聞は「イギリス首相、ロックダウンを大英断」と書いた。
しかしイタリアに住んでいる私を含む多くの日本人たちは、「おいおい、ちょっと待って。前例のない中で、ヨーロッパで最初にロックダウンを決断したのはイタリアのコンテ首相だよ!」とみんなが思った(に違いない)。ちなみにイタリアの全国ロックダウン開始は3月9日。イギリスは同23日だ。早い遅いを競うわけではないが、イギリス首相はロックダウンを決める少し前には、「ロックダウンはしない。国民の大勢が感染して集団免疫をつける。大事な人たちが少なからず死んで行くことに慣れてください」というような声明を出してイギリス国民はもちろん、大切な家族や友人がどんどん亡くなって辛い思いをしていたイタリア人からも、大いにヒンシュクを買った。
もう一つちなみに、最近もジョンソン首相は議会でこんな発言を。
「イギリスはイタリアやドイツよりも感染者数が多いのは、自由を愛しているから」。これに対し、イタリアのマッタレッラ大統領がやり返した。
「我々イタリア人も、もちろん自由を愛しているが、真面目さを尊重するハートもある」と。
断っておくが、私はイギリス首相やイギリスを責めているのではない。コロナウイルスという未知の敵に対して、みんなが手探り状態で戦っているんだから、間違えたって、変な発言をしたって仕方がないと言える。でも、報道ジャーナリストの皆さんは、もっと勉強して正確な記事を書いて欲しい。webの時代になって早さばかり勝負しているメディアも多いようだけど、いくら早くたって、内容が正確でなければ意味がない。
というわけで、今、イタリアが感染を抑え込む優等生になっているという話。
イタリアはヨーロッパで最初にコロナウイルスの感染が拡大し、3月4月の一番ひどい時期には1日の感染者数6,557人(3月21日)、死者数が919人(3月27日)にも登っていた。特にひどかったロンバルディア州ベルガモなどでは医療崩壊が起こり、亡くなった人たちを埋葬する場所もなく、軍のトラックが遺体を運ぶ痛ましい映像は世界を震撼させた。
著者プロフィール
- 宮本さやか
1996年よりイタリア・トリノ在住フードライター・料理家。イタリアと日本の食を取り巻く情報や文化を、「普通の人」の視点から発信。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」でのコロナ現地ルポは大好評を博した。現在は同ブログにて「トリノよいとこ一度はおいで」など連載中。