スペインあれこれつまみ食い
消費者を守れ!スペインでインフルエンサー法承認
スペイン政府は4月30日、ソーシャルネットワークへの投稿を規制し消費者を保護する目的の「インフルエンサー法」を承認しました。
今や若者を中心とした人々の生活に欠かせないソーシャルネットワーク。情報を得るための手段としてとても便利な一方で、虚偽の情報が拡散されたり依存性が心配されたりと、問題視される課題もまだ多くあるのが事実です。今回そんなソーシャルネットワークに対してスペインでこのような法律が承認された背景にはいくつかの理由がありますが、最も重要視されているのは「現在インフルエンサーと定義されている人々が提供するコンテンツからユーザーを保護すること」。スペインのデジタル省はインフルエンサーの意見が現代の社会に様々な影響を与えていることを指摘しており、こういったソーシャルネットワークに対する規制は現在ヨーロッパ各国で行われているようです。
インフルエンサーの定義
ソーシャルネットワークの発信を通して世間に影響を与えている人のことを一般的にインフルエンサーと呼びますが、今回承認されたスペインの法律ではどのような人が規制の対象となるのでしょうか。スペイン政府はインフルエンサーを以下のように定義しています。
・投稿による収入が30万ユーロ以上であること。
・一つの動画のプラットフォームで100万人のフォロワー、または合計で200万人のフォロワーを保有していること。
・年間で24本以上の動画を投稿していること
とある報道によると、スペイン国内でこれらの条件を満たしているインフルエンサーは600〜900人ほど。彼らは7月3日までに財務省に登録をし、以下のことを守らなければなりません。
新しいインフルエンサー法の中身
・広告であることを明確にすること
視聴者が多いインフルエンサーには企業からのオファーが届くことも珍しくありません。もしコンテンツの中でその企業の製品を紹介すれば、再生回数や販売数に応じて企業から報酬を受け取ることができるのです。この法律ではこのように企業の宣伝がコンテンツに含まれる場合、ハッシュタグなどで公告であることを視聴者に公開することが義務付けられます。
・タバコや薬品の宣伝は禁止
電子タバコを含むタバコや薬品の宣伝は今後法律で禁止されることになります。「これを飲んだら痩せました」のような宣伝は今後できなくなるということです。
・アルコールとギャンブルの広告規制
20度以上のアルコール製品の広告は朝01:00~05:00の間のみ、それ以下のアルコール飲料は20:30~05:00の間のみ広告可能。また、政府からの許可なしに賭け事やギャンブルの広告を発信することは法律で規制されます。
・視聴者の保護
未成年の視聴に適さないコンテンツに対しては年齢制限を表記することが義務付けられ、未成年者の経験・知識・判断能力不足を利用して何かを購入するように促すようなコンテンツの投稿も禁止されます。また暴力や差別などを助長するような投稿も視聴者の保護の観点から法律で禁止されることになります。
もしこれらの規制に反した場合、そのインフルエンサーには1万ユーロから5万ユーロの罰金が科せられます。
国民の声
この法律の制定には賛否両論の意見があるようですが、規制の内容については賛成の声が多いように思います。
実はスペインの子供たちが将来就きたい職業ランキング第1位はインフルエンサー。それほどインフルエンサーの存在はスペインの未成年らにとって身近で影響力のあるものなのです。以前、子供の携帯電話の所持についてスペインで規制の動きがあることについてブログに書きましたが、今回承認されたインフルエンサー法のようにある程度コンテンツの規制をする動きは現代では避けられないのかなと思ったりしています。
著者プロフィール
- 松尾彩香
2015年スペイン巡礼(カミノデサンティアゴ)フランス人の道を完歩。スペイン語習得のために渡ったコロンビアでコーヒー農家になるもスペイン移住の夢が捨てられず、現在はコロンビアのコーヒー事業を継続しながらマドリードのベッドタウンでひっそりとスペインライフを満喫中。
Twitter: @maon_maon_maon