日本人コーヒー生産者が語るコロンビア
日本の母の日はコロンビア無しでは語れない?!
3月8日は母の日。今年の母の日にカーネーションを贈った人、もしくは貰った人も少なくないと思いますが、そのカーネーションはもしかしたらコロンビアから来たものかもしれません。なんと日本で輸入されているカーネーションの7割はコロンビアから輸入されたものなのです。
コーヒーのイメージが強いコロンビア。実はコロンビアは花の生産大国で「花の国」とも呼ばれていることをご存知でしょうか。輸出量はオランダに次いで世界第2位。年間6億5000千万本もの切り花が世界各国に向けて輸出されているのです。特にバレンタインデーと母の日は需要が増え年間の輸出量の30%はこの時期に集中し、2021年は30万トンの切花を輸出したのだとか。切り花の輸出量は年々増え続けており、今年の母の日に向けた輸出量は前年比26%増だったようです。パンデミックの影響でここ1、2年様々な業界が苦戦を強いられましたが、コロンビアの花産業にはそれほど影響がなかったとも言われています。家から出られない日が続き、部屋を少しだけでも華やかに見せようと花を飾った経験のある人は世界中にたくさんいるのではないでしょうか。コーヒー同様、こう言った需要の増加が厳しかった時代のコロンビア経済を支えていたのです。失業率が大きく落ち込んだ近年でも花産業は14万もの雇用抱え、そのうちの25%を就業に就きにくいとされている女性が担っています。
花大国のワケ
コロンビアが花大国と呼ばれるのには様々な理由がありますが、最も大きな理由は気候と生産コストでしょう。コロンビアから輸出される花の8割近くは首都ボゴタ近郊で栽培されていますが、これらの地域の標高は2650mと高く、東京の3月くらいの肌寒い気温が1年中続くのです。気温が安定しているため温室の気温のコントロールが必要ないことから、生産コストを大幅に抑えることができるのはコロンビアの花産業の大きな強みと言えるでしょう。
また、アメリカが近いこともコロンビアで花の輸出が盛んな理由の一つと言えそうです。コロンビアで生産された花の1番の輸出国はアメリカ。割合は全体の76%を占めています。新鮮な花をアメリカのような大国にたくさん輸出できることが、コロンビアが花の輸出世界第2位をキープできる秘訣かもしれませんね。
ちなみ日本は輸出先としてはアメリカ、ロシア、イギリスに次いで4番目。日本とコロンビアはコーヒーと花で結ばれていると言っても過言ではないかもしれません。
メデジン花まつり
コロンビア全体で生産される花の22%は第2の都市メデジンで栽培されています。その中でも標高2200mを超えるサンタエレナと呼ばれる地域は特に花の生産で有名。毎年8月には「花まつり(Feria de las flores)」と呼ばれるメデジン最大のお祭りが行われ、シジェテロと呼ばれる花飾りを担いだ花の生産者がサンタエレナからメデジンの街までパレードを行うのです。過去2年間パンデミックの影響で大々的に行うことができなかった花まつりですが、今年は観光客も戻りマスクの義務化からも解放され、いつも通りの賑やかな花のパレードが楽しめるでしょう。今頃サンタエレナの生産者たちは8月の花まつりに向けて着々と準備を進めているはずです。
ウクライナ情勢が向かい風に
年々需要が増えているコロンビアの花ですが、ロシアのウクライナ侵攻はコロンビアの花き栽培者に大きな影響をもたらしました。ロシアはアメリカに次ぐコロンビアの花の輸出国。しかし経済制裁やSWIFT除外を受けてロシアに送る予定で生産されていた花が行き場を失ってしまったのです。花は国によって好まれる種類や特徴があるためロシア向けに作られた花を他国に同じ値段で売る事は難しく価格を下げて他の国に売るしか方法がないそうで、これは生産者だけでなくコロンビアにとっても予想外の痛手になった事でしょう。
このウクライナ侵攻を受けて、日本でもカーネーションの値上げが行われたという情報を目にして残念な気持ちになりました。来年こそは通常通りに日本の方がコロンビアのカーネーションを手にできますように。一日も早くこの侵略戦争が収束することを願うばかりです。
著者プロフィール
- 松尾彩香
コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住
Twitter: @maon_maon_maon