日本人コーヒー生産者が語るコロンビア
「もう暴力はうんざりだ!」相次ぐ暗いニュースに怒り悲しむコロンビア
以前ブログで、コロンビアの警官が一般市民が死亡させる事件が起き、各地で抗議運動が行われている件についてお話しました。あの出来事から12日後の9月21日、首都ボゴタを中心としたコロンビアの各都市で大規模なデモ行進が開催されました。
コロンビアでは今年にはいって殺人や暗殺事件が相次ぎ、国民の政府に対する不信感が高まっています。
ロックダウンが解除され、10ヶ月ぶりのデモ行進
前回、大規模なデモ行進が行われたは2019年11月21日。デモ隊と機動隊が激しく衝突し、負傷者や逮捕者が続出。ずるずるとデモ運動が長引きました。参加者は13万2千人とも言われ、コロンビア国内に限らず世界各地に住むコロンビア人も各国でデモ運動を行うほど大規模なものになりました。この昨年11月に行われたデモの目的は教育予算の増額や年金制度の改革、増加する指導者の暗殺に対する抗議などでしたが、今回のデモでは「暴力反対!」がなにより一番の目的でしょう。
増え続ける殺人事件。見て見ぬふりをする政府。
コロンビアがコロナウイルスによる非常事態宣言を発表したの3月中旬。それからというもの、ニュースで頻繁に「masacre(大虐殺)」という言葉を聞くようになりました。大虐殺とは「ひとつの場所で3人以上殺害される殺人事件」のことを指し、今年だけで61件の大虐殺が報告され、246人が殺害されています。特に7月以降の件数の増加は著しく、8月は11件、9月は12件もの大虐殺が起こりました。
大虐殺と同様に、近年増加しているのが社会活動の代表者や先住民、元武装組織メンバーの暗殺です。社会活動代表者に関しては今年に入って既に205人が暗殺されていると言われています。7月にはカウカ県でコーヒー農家を取りまとめ、コロナウイルスの拡散防止に努めていた代表者が暗殺され、コロンビア生産者連合会のロベルト・ベレス代表もツイッターで怒りをあらわにしました。
Quien mata a los líderes cafeteros? El gremio está de pésame por el asesinato de Sigifredo Gutiérrez. pic.twitter.com/p1ZJyVcyH4
-- Roberto Vélez Vallejo (@robertovelezv) July 19, 2020
政府はこれらの殺人事件を「麻薬関係者による犯行だと推測している」と発表しています。しかし多くの国民やメディアは、それだけでなく政府が2016年にコロンビア革命軍と結んだ和平合意をないがしろにしている事による反政府武装組織の犯行の可能性も考えています。コロンビアには多くの武装組織が存在し、2016年の和平合意が守られていないと今後これらの組織との和解も困難になり、コロンビアの平和が遠のいてしまう事を国民は心配しています。
平和的なデモを!機動隊の武器の使用を禁止
去年11月に行われたデモ行進では、デモ隊と機動隊が激しく衝突し、18歳のディラン・クルス氏が機動隊に頭を撃たれて死亡。今年9月9日に警察による暴力によって死亡したハビエル・オルドニェス氏の事件に対する抗議活動では、警察の発砲による死亡者を含む10人もの死亡者がでました。翌日、首都ボゴタのクラウディア・ロベス市長は「誰も銃を使えと命令していない」と警察を非難。9月21日に行われたデモ行進では警察の危険な武器の使用を禁止し、市民には破壊行為や暴力行為を許さないと呼びかけました。結果、一部破壊行為や警察官との衝突はあったものの多数の負傷者や死亡者がでる事なくデモ行進は終了しました。
警察の次は軍隊。一般市民の頭を撃ち女性1人が死亡
デモ行進が行われた3日後の9月24日、カウカ県で軍隊による検問を避けようとバックした車に向かって軍隊が発砲。助手席に乗っていたフリアナ・ヒラルド氏の頭に銃弾が当たり死亡する事件がおきました。運転席に乗っていたフリアナ氏の夫がその場の様子を携帯電話で撮影。「フリアナを殺しやがった!あの男が頭を撃ったんだ!助けてください!」と泣きながら訴える動画がSNSで一気に広がりました。
En Miranda, ejército disparó contra una mujer que iba con su esposo en un vehículo ocasionándole la muerte. ¿Por qué quienes nos deben cuidar asesinan de esta manera? ¿hasta cuando? pic.twitter.com/LyzBHP0epV
-- Michelle (@michelleobandoc) September 24, 2020
コロンビアでは軍隊も警察も国防省に属しています。度重なるこれらの事件を受けて、国防省の大臣であるカルロス・トルヒージョ氏の辞任を求める声が高まっています。
毎日流れる暗いニュースに怒り悲しむコロンビア人たち
このブログを書いている間にも、新たにチョコ県での大虐殺の報道がありました。昨年2019年に起きた大虐殺の数は36件。それでも2014年以降最も多い件数でした。このスピードだと今年の大虐殺の件数は、前年の倍かそれ以上になる可能性も否定できません。誰が悪いのか、何が原因なのかについては色々と意見が分かれますが、次々と増える犠牲者の数に国民の怒りと悲しみは増していく一方です。パンデミックの影響で失業率も20%を超え、国の治安もどんどん悪くなっているように感じます。この異常な流れを断ち切る為にも、政府には早急な何らかの対応が求められるでしょう。
著者プロフィール
- 松尾彩香
コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住
Twitter: @maon_maon_maon