日本でも大人気のコロンビアコーヒー、その美味しさにはコロンビアの気候が大きく関係していることはご存知でしょうか。コロンビアには春夏秋冬のような季節がなく、気温の変化は一年通してほとんど同じです。しかしコーヒーが生産されている地域では乾季と雨季が約3ヶ月おきに交互に訪れ、それがコーヒーの木に適度なストレスを与えることから美味しいコーヒーができているのです。

しかし先日、世界気象機関(WMO)はこの夏にエルニーニョ現象が起こる可能性が高いことを発表しました。エルニーニョ現象は南米付近の赤道域の海面水温が平均より高い状態が続く現象を指します。逆に海面水温が平均より高い状態が続く現象をラニーニャ現象と呼び、これらの現象が発生することにより世界的に洪水や干ばつなどの異常気象が起こりやすくなります。コロンビアではこのエルニーニョ現象によって降水量が大幅に減り干ばつが起こる可能性が高く、その影響は農業やコロンビアが近年力を入れている再生可能エネルギーなど広範囲に渡ることが予想されています。

コーヒー産業における被害

コロンビアといえばコーヒー。先ほどコロンビアコーヒーが美味しいのは乾季と雨季があるからという話をしましたが、エルニーニョ現象が発生してしまうと降水量が減ってしまい、コーヒーの生産量や質に悪影響を与えてしまいます。コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)はすでに警鐘を鳴らしており、生産者らにエルニーニョ現象が発生した場合の対応についての指導を進めています。

さて、そもそもエルニーニョ現象が発生するとコーヒー栽培にはどんな影響があるのでしょうか。エルニーニョ現象により雨が降らなくなると、地面は乾燥します。するとコーヒーの木の肥料を吸収する力が弱くなるため、木の発育が悪くなってしまうのです。また、乾燥した空気はブロカと呼ばれるコーヒーの種を食べる虫にとって繁殖しやすい環境を作ります。FNCの研究センターであるセニカフェが行なった調査によると、エルニーニョ発生時には通常の２倍近くの量のブロカが発生するとのこと。もしエルニーニョ現象が発生してしまうと虫食いのコーヒー豆が大量に生産されてしまい、コロンビアコーヒーの品質を下げる大きな要因となってしまうでしょう。また厳しい日差しはコーヒーの木の葉を焼き、生育を妨げます。もともと日陰で育てることが好ましいとされているコーヒーの木。数年前からFNCは植林プロジェクトに力を入れ、コーヒー畑に背の高い木を植え日陰を作るようにと苗木を寄付するなどして農家らに植林を呼びかけてきましたが、今回のエルニーニョ現象発生までに日陰となる木が影を作れるほど成長できているのでしょうか・・・・。

2015年の脅威再び？

前回エルニーニョ現象がコロンビアコーヒー産業に打撃を与えたのは2015ー2016年。60万ヘクタールのコーヒー農園がこの被害を受けたと言われています。特に被害が大きかったのは標高1300mほどの低い地域で栽培されているコーヒー農園。ただでさえ地球温暖化で平均気温が上がり、コーヒーの栽培に適さなくなってきていると心配されている地域に襲ったエルニーニョ現象。降水量の減少により実が育たず、生産者の収入に大きな影響を与えました。もともと世界一雨が多いと言われているコロンビアでは軽度のエルニーニョ現象は逆に生産量が増えると言われています。しかし、今回発生が予測されているエルニーニョ現象がこの頃のような厳しいレベルのものになってしまえば、コロンビアのコーヒー農家にとって大きな脅威となってしまうでしょう。

ラニーニャ現象が終わったと思いきや・・・

2020年9月から3年近く続いたラニーニャ現象。私の農園でも雨が原因で収穫量が激的に減り、湿気で病気が蔓延したことによって多くのコーヒーの木が死んでしまいました。去年のコロンビア全体のコーヒー収穫量は、このラニーニャ現象がもたらした長雨の影響を受け1170万袋(60kg/袋)と、目標としていた1400万袋を大きく下回っています。今年は雨が降らない日も増えてきて、やっと３年ぶりに通常通りの栽培が再開できるかと思っていた矢先のニュース。どうやらコロンビアのコーヒー農家たちは今年も安心して栽培に専念することは出来なさそうです。