魅惑の摩天楼、香港フォト通信
今の香港は「お口にはチャック」 日本はいいよね、物が自由に言えて
「魅惑の摩天楼」香港第三回目は魅力的なスポットを取り上げようかなと思ってたのだけれど、今の香港の暗い部分を伝えるのも現地の生の声を届ける一環として必要なのでは? という考えに至ったので予定変更。
本当の香港好きさんはガイドブックからは取れない今の魅惑の都市、香港を覆っている雨雲の部分も知りたいかもしれないとふつと思った次第なので。
消えた声、消えたスローガン、消えた歌声
去年(2019年)の6月9日の100万人大規模デモに端を発した香港の抗議活動が始まったのは周知の通り。
そしていつからか夜10時になると示し合わせたかのように 時●●●、 時●●●と街角や、スーパーの前や、マンションの窓から住人達が窓を開け大声でスローガンを声高々に言い合う姿が見られた。
なぜ私は●を使ったのでしょう?
国安法が施行された今の香港では、この四文字は絶対に言ってはいけないタブーワードだから。
実際にこの四文字を書いた紙を持っているだけで警察に逮捕された事件も起きている。
だからこの4文字は書けない。日本のマスコミはためらい無く使っているけれど、今、私は香港に居るので怖いので字を伏せることにする!
スローガンとともにもう一つ消えたものがある。
それは民主化を訴える市民が口ずさんでいた"香港に栄光あれ"という歌。
これも分離行為に直結するので口ずさむと逮捕の対象になる。
ニューズウイーク日本版の早坂隆氏の秀逸コラム
今月9月11日掲載のニューズウイーク日本版の早坂隆さんの"されどジョーク、たががジョーク"のコラムが秀逸だった。
出だしが誰もが思いつかなかった発想で笑ってしまった。内容はこれまた今の香港では書けないのでリンクを貼るのでそちらから読んで欲しい。
読み終えた後、口に出たのは『日本だから書けるんだよね』『今の香港でこれ言ったら大変なことになる』
国安法が制定されて以来、香港の姿は変わりつつある。
国安法は香港のみならず海外での発言にも適用され香港入境時に逮捕も可能だと言われている。
先日のキャリー・ラム行政長官の放った言葉、『香港には三権分立など存在しない』には香港在住者はヒヤッとした。
そして香港の教科書からも三権分立の言葉は削除される方向にむかうとのこと。
司法の独立性はどうなるのか香港在住の日本人も戦々恐々としている。
香港ドルはどうなるの? 撤退を考えている日系企業は?
台湾に逃亡を試みた香港人の活動家12人が中国に拘束され、9月27日に、この12人を逮捕する方針であることが報道された。分離主義者と認定されたからである。
国安法は活動家の動きにメスを入れるものであって、一つの中国を無視した国家分裂の呼びかけや扇動行為または資金提供が国安法に抵触するのであって、それさえしなければ我々在港日本人はごく普通に暮らせる。
そして国安法が施行されたことでアメリカが香港に今まで与えていた特権を剥奪し、制裁を加えだしたから大変だ。先行きが見えない。
親しい日本人との会話では『今後の香港どうなるんだろうね?』
『それより香港ドルどうなるのだろう?』『今持っている香港ドル資産はドルか円に買えたほうがいいのだろうか?』という話題になる。
香港ドルはペッグ制と言って米ドルと連動している。米国のお隅付き通貨であるからこそ国際的に信用のある安定した通貨であるが、米国をここ迄怒らせてしまって、米ドルとのペッグ制度を廃止しますとトランプが決めようもんなら、瞬く間に香港ドルは紙くずとなる。どうしたらいいのだ?
HSBC(香港上海銀行)で数回『アメリカの香港への制裁で香港の金融市場大丈夫なのでしょうか?』とわざと聞いてみたら『香港の金融市場の未来は明るいです』との答えが必ず返って来る。
未来の展望は暗いんですって言うはずないよね、明るいと言っとけとお達しが出ているのかな? しかしながらこんな記事も目に入った。
<国安法支持の香港金融業界 本音は『地雷どこにあるか分からない』>
そしてもう一つ話題に上るのが、どれだけの在香港の日系企業が撤退するのかそれとも残留するのか? ジェトロの調べによると在香港の日系企業の8割強が国案法を懸念すると回答。
そんな最中、9月7日、インターネット金融大手SBIが香港撤退を検討すると発表。
国安法を懸念はするが今後どうするか様子見の企業が多い中、今後の方向性をはっきりと打ち出してきた企業の一つだと思う。
やまない雨は無い
以上、色々と暗くなるような話題ばっかり書いてしまったけれど、それは大好きな香港を憂うからこそ。
9月の香港はこれでもかというばかりの大雨続きだった。晴天の日は数えるぐらいしかなかった。
雨の合間の晴天の日は外に出て空や花を見るようにしている。美しい青空だね。
そしてやっぱり美しい香港の景色。やまない雨は無いと言い聞かせている自分がいる。
著者プロフィール
- マリエ
香港在住の雑貨が大好きなフォトグラファー。大学卒業後、自動車会社、政府機関、外資企業にて広報担当。夫の転勤で香港に移住後、カメラに興味を持ち、日本人、外国人フォトグラファーに師事。現在、雑貨を可愛く撮るカメラ教室「Zakka Styling」を主宰。同時に家族写真、ロケーションフォトの依頼もこなす日々。インスタグラムはこちら。