悠久のメソポタミア、イラクでの日々から
イラクで猛暑から逃れる方法
イラク南部ではいまだに50℃に近づく暑さが続いていますが、こちら北部のクルド自治区では日中でも40℃を少し超えるくらいの気温になってきました。
昨年の今頃はここ北部地域でも50℃に迫る気温が8月末頃まで続いていたことを考えると、今年は比較的涼しい、そして短い夏だったかなと思います。
しかし以前の記事でも書きましたように、首都のバグダードを中心にイラク中部や南部の地域では不安定な電力事情が続いており、涼しい秋が来るのを人々は待ち望んでいます。
今日は残暑を感じるイラク北部のクルディスタンから、イラクの人たちの避暑の方法をご紹介します。
暑い夏はイラク北部へ
イラク北部のクルド自治区は、大自然に加えて豊かな水資源もあります。
また40℃を平気で超してくる中部や南部と違い、ここ北部地域のさらに北の方では暑くても25℃~30℃くらいの気温で、10%前後の湿度と相まってとても過ごしやすい場所となっています。
砂漠や荒野を連想されるイラクという国で(事実、国土の60%は居住困難な砂漠ですが)、こういった自然があるのは意外なのではないでしょうか?
実際、ここクルド自治区では春先や秋口にはたくさんの大型バスがやってきており、地元イラクの中流階級の人たちが国内観光客として訪れます。ちなみに上流階級は海外に行きます。
アルビル市内中心部のバザールでも、涼しい時期には地元の人々が使用するクルド語よりもアラビア語の方が飛び交っており、観光客の多さを感じさせます。
(この国内の活発な人の流れが新型コロナウイルスの拡大に貢献してしまったという残念な事情もありますが...)
また北部の山岳地帯では、トレッキングを目当てに主にヨーロッパからの観光客も来ています。
しかしここ最近ではトルコ軍がトルコの反政府勢力であるPKKをしばしば空爆しています。イラク国内への越境空爆もされているため同地域では治安の悪い状態が続いており、個人的に行くことは勧められません。
イラクの人たちはピクニックが大好き
このような北部の自然を満喫するため、また都市部の酷暑から逃れるため、この夏の終わりの時期でも多くの地元の人が涼しい郊外へとピクニックに出かけます。
ここアルビル市内でもあまり娯楽のオプションは少なく、「週末にどこか行った?」と友人に聞いても「特に何も」か「家族とピクニック!」と返ってくる確率が全体の9割方を占めているのではと感じるほど、ここクルド自治区の人たちはピクニックが大好きです。
また、以前の春先の記事でもご紹介しましたが、特にこちらの週末にあたる金曜日には多くの地元の人たちが郊外に出かけ、夜一斉にアルビル市内に戻るために幹線道路は大渋滞を起こします。
先日、同僚たちと行ったピクニックでは(諸事情あり具体的な場所は伏せさせていただきますが)、朝早くに出発、午前中は涼しい中で自然を満喫し、ボードゲームをして遊ぶ。
お昼を近くのレストランからテイクアウトして食べ、落ち着いたら川で1時間ほど泳ぎました。ちなみにイラクでは日本のように水泳の授業がないためほとんどの人が泳げません。泳ぐと言っても、足が余裕で着く場所で、水遊びをしている感覚です。
何人かは泳げるようになりたいと話していたので、特に水泳得意という訳でもない私ですが、バタ足を中心にクロールや水に浮く方法を彼らに教えました。もし溺れそうになった時、少なくとも命を救えるようにはなってもらいたいと願っています。
夕方も近づいてきた頃、晩御飯の準備を始めます。
みんなで手分けしてサラダを作ったり、川の端に流木で火を焚いてお肉と野菜を炒めます。
新鮮で柔らかい仔牛肉と地元の八百屋さんで買った野菜の炒め物はもう絶品。
パンに挟んで食べると肉汁がパンに移って食べる手が止まらなくなってしまいます。
食後、すでに外は真っ暗ですが、お茶を飲み談笑したまに音楽をかけてみんなで踊り、ゆっくりと時間が過ぎるのを楽しみます。
現地に着いたのが9時過ぎで、その日アルビルに戻ったのも21時を回ったくらいでした。
都市の喧騒から離れ自然の中でゆっくりと友人たちと過ごす休日は、心を洗ってくれます。
今回はイラクの人たちの避暑の方法をご紹介しました。
著者プロフィール
- 牧野アンドレ
イラク・アルビル在住のNGO職員。静岡県浜松市出身。日独ハーフ。2015年にドイツで「難民危機」を目撃し、人道支援を志す。これまでにギリシャ、ヨルダン、日本などで人道支援・難民支援の現場を経験。サセックス大学移民学修士。
個人ブログ:Co-魂ブログ
Twitter:@andre_makino