悠久のメソポタミア、イラクでの日々から
クルド流、春の過ごし方
今回からWorld Voiceに投稿させていただきます、イラクはアルビル在住の牧野アンドレといいます。
これから、アルビルを中心にイラクの生活や文化、中東も含めた政治問題についてなどを発信できればと思います。
どうぞよろしくお願いします!
クルド流、春の過ごし方をご紹介
夏場には50℃を超すここアルビルも、11月頃から始まる短い雨季を経て3月頃から気持ちのいい春の天気が続きます。
荒涼とし大地には一気に緑の絨毯がしかれ、目と心を楽しませてくれます。
この季節は、僕の住むイラク北部のクルド自治区の人々にとっては短い憩い季節でもあり、週末には多くの地元の人が街の外に出て川遊びをし、草原でピクニックを楽しみます。
肌寒くなってきた夕方頃、市民が一斉に街へ戻るために幹線道路は大渋滞を起こします。ピクニックでは誰も周りにいなかったのに。。この広大なイラク北部の自然を面白い形で実感をします。
春はクルド人にとっての新年
3月の終わりは、緑の季節であり、実りの季節であり、クルド人にとっては新年にもあたります。
今年は3月21日であった「ノウルーズ」と呼ばれるクルド人の新年は、ペルシャ暦の一年の最初の日にあたります。
ここイラクのクルド自治区では太陽暦、イスラム教のヒジュラ暦、さらにクルド人のペルシャ暦という3つのカレンダーが共存する世界でも珍しい地域になります。
ここ2年ほどは新型コロナによる制限措置で大きなお祭りはできていませんが、人々は伝統衣装に身を包み、家族で食べて踊り新年をお祝いします。
「ワラビスタン」と呼ばれる、クルド人の多く暮らす埼玉県蕨市。そこのノウルーズのお祭りの写真など、ご覧になった方もいるのではないでしょうか?
実際にピクニックに行ってみた
最後に、実際に僕が地元の友人たちに連れて行ってもらった、クルド人のピクニックの様子をご紹介します。
アルビル市内から20分ほどの場所にある草原。
4月の初めは、まだ太陽が雲に隠れると肌寒い天気でした。大地には赤い蘭の花の一種が目立ちます。
到着するとすぐ、友人たちはバレーボールのネットを設置し始めました。地面に穴を掘り、杭を打ち、紐をひいて白線代わりにします。
一時間ほど遊びつくすと、朝ごはんの時間です(昼11時くらい)。
新鮮な野菜、フムス(ひよこ豆のペースト)、ムタッバル(ナスとガーリックのペースト)、ファラフェルなどと、中東の代表的な前菜メニューが並んでいます。
朝食後は水たばこを吸い、お茶を飲みお腹を落ち着けます。
その後は各々お昼寝をしたり、子どもたちは遊んだり、アクティブな友人たちはまたバレーボールに興じます。
陽が傾きはじめた午後4時頃になると、お昼ご飯の準備を始めます。
この日は友人がミニBBQセットを持ってきてくれていて、朝から用意していたラムのミンチ肉を巻いてシシケバブに、さらに前日の夜からマリネにしてくれていたチキンを丸々一羽焼き上げます。
香ばしい匂いが風にのって漂う中、しっかり全部焼かれると、みんなで薄いナンのようなパンを片手に肉に食らいつきます。
このスパイスのきいた肉の美味しさは病みつきになるので、アルビルを訪れました際はぜひシシケバブを食べてもらいたいです。
自然に出るといつも感じるのは、時間の流れるスピードの遅さです。
アルビルというイラクでも都市に入る場所で暮らしていると時間はあっという間に過ぎてしまいますが、ネットの届かない草原で風の音と鳥のさえずりだけを聞き、友人たちとひたすら自然に身を任せて過ごす時間。このゆったりと過ぎる春の時間が、地元の人たちみなが大好きです。
クルド流の春の過ごし方、いかがでしたでしょうか?
今後もイラク現地のライフスタイルについても、発信していきたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
著者プロフィール
- 牧野アンドレ
イラク・アルビル在住のNGO職員。静岡県浜松市出身。日独ハーフ。2015年にドイツで「難民危機」を目撃し、人道支援を志す。これまでにギリシャ、ヨルダン、日本などで人道支援・難民支援の現場を経験。サセックス大学移民学修士。
個人ブログ:Co-魂ブログ
Twitter:@andre_makino