イタリアの緑のこころ
イタリア人と既製ジェラート:調査結果と地獄・天国・煉獄ジェラート、ミケランジェロジェラート
夏、ジェラートのおいしい季節です。イタリアでは、各メーカーが出す既製品のアイスにもおいしいものがある一方で、新鮮な食材を使って職人が作るおいしいジェラートを、安く手軽に食べられるジェラート屋も、年中を通してあちこちにあります。ジェラートがおいしいのは、評判が高い店や、何かの賞を獲得した店ばかりではありません。たまたま前を通ったり、見かけたりしたから買ったジェラートがおいしくて、その後よく通うになった店が、わたしたちにもいつくかありますし、町の人から「この店で一番おいしい」と聞いた店は、見た目は何の変哲もないバールであるのに、ジェラートがとびきりおいしかったということもあります。
そんな中、各メーカーが製造・販売する既製のジェラートも健闘していて、感染下による規制の影響や安全面を考えての配慮からか、昨年、2021年1月から9月までの9か月間に、屋外で食べるために購入された既製のジェラートは、前年の同期間に比べて、売り上げが52.9%も増えたとのことです。
引用元:https://www.mixerplanet.com/gelato-nellera-post-covid-vola-il-fuori-casa-529-sul-2020_197527/
また、DoxaとForneri Italiaが今年共同して行った調査 によると、94%のイタリア人が定期的に既製のジェラートを食べているとのことです。調査対象となった2千人が好むジェラートの風味を見ると、最も人気があるのがチョコレート(27%)、次いで、ピスタチオ(14%)、ヘーゼルナッツ(11%)という結果が出ています。
Il 94% degli italiani consuma regolarmente il gelato confezionato: (Adnkronos) - Il risultato confermato dalla ricerca condotta da Doxa insieme a Froneri Italia, joint venture tra la multinazionale inglese specializzata nella produzione di gelati R&R e... https://t.co/9W1NX7r3kx pic.twitter.com/K6SGxenXjQ
-- Fisco24 (@fisco24_info) May 18, 2022
また、37%が、幼い頃から親しんでいる伝統の味に魅かれ続けているものの、一方では、36%の人が、季節ごとに新たに出る新しい味の組み合わせを楽しみに待っているとのことです。さらに、41%の人は、理想の既製のジェラートは、おいしいだけではなく、見た目にも魅きつけるものがなければならないと考えているとのことです。
既製品のジェラート製造業者で、イタリアで最も人気のあるアルジダ社は、イタリア語の父、ダンテ・アリギエーリ(1265年〜1321年)の没後700周年記念であった昨年、ダンテの傑作である『神曲』が、地獄篇(Inferno)・煉獄篇(Purgatorio)・天国篇(Paradiso)の三部作からなることから、そのそれぞれの名を冠したジェラートを、Magnumシリーズ商品として、期間限定で特別販売していました。
ダンテ没後700周年だった去年、限定販売で私たちは食べ損なっていた地獄ジェラートを夫がスーパーで見つけて購入。塩気があり、不思議なおいしさ。チョコの中のアイスが灰色でびっくり! どうやら売れ残っていた模様。
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) June 14, 2022
この夏の限定アイスはミケランジェロ。今から楽しみ。https://t.co/mWitEl9lC0 pic.twitter.com/AZG1mAB5MR
例えば、昨年3月・4月に特別限定販売されていた地獄(Inferno)のジェラートは、ブラックチョコレートのコーティングに包まれ、中のジェラートは灰色で、その中にラズベリー風味のピンクの筋が入っていて、地獄の様相を色とデザインで表していました。
今年は #ダンテ 没後700周年。ダンテを称えて7月・8月に期間限定で販売される天国 #Pardiso #ジェラート。昨日、ラヴェルナに行く途中、バールで見つけて購入。ホワイトチョコレートの下にルビーチョコレート、中のジェラートはピスタチオ風味でおいしかったです。#イタリアhttps://t.co/OoEb4qJAOp pic.twitter.com/uxo2zeMT09
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) June 28, 2021
また、7月・8月に販売された天国(Paradiso)のジェラートは、ホワイトチョコレートのコーティングの中に、さらにルビーチョコレートの層があり、その中にピスタチオ風味のジェラートが入っていて、天国の光や甘美な様子を表そうという工夫が見られました。
新しい味やその組み合わせに興味を持ち、見た目にも魅きつけるものがあるジェラートを食べてみたいと考えるイタリア人の好みを把握し、また、ダンテ没後700周年という記念の年に、その傑作ゆかりのジェラートを大胆な発想で創り上げて売り出すというアルジダの挑戦が、うまく功を奏したのでしょう。昨年は、わたしたちが食べたいと思ったときには、販売期間内でありながら、いくら探しても、煉獄ジェラートが売り切れている店ばかりで、結局食べられずじまいでした。そんなふうに売り切れが続出するほどの人気商品だったのだと思います。
ミケランジェロアイス、食べました! ココナツとカカオは絵画の色、ホワイトチョコレートは画布、散りばめられたラズベリーのつぶつぶは、作品を人々を感嘆させる傑作に仕上げる天才の一撃を見立てているとのことです。煉獄アイスも復活限定販売されるそうで、楽しみです。https://t.co/RuS7M589zm pic.twitter.com/o0tUSyfVqv
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) June 18, 2022
文学の偉人ゆかりのジェラートを販売した翌年である今年、アルジダ社は、美術の偉人、ミケランジェロの名を冠するジェラートを、期間限定販売しています。ここでも、風味や食感の組み合わせと共に、見た目の美しさからも、食べてみたいという意欲をそそっています。
販売戦略にも、趣向を凝らした味とデザインにしても、みごとなものだと感嘆していますし、ジェラートもおいしいです。この夏は、ミケランジェロジェラートが期間限定で販売される上に、わたしが食べ損なっている煉獄ジェラートも販売が復活するそうです。イタリアを旅行する予定がおありの方、あるいはイタリアにお住まいで、ジェラートがお好きな方は、機会があれば、ぜひ食べてみてください。
著者プロフィール
- 石井直子
イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。
ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia
Twitter:@naoko_perugia