イタリアの緑のこころ
新年を迎えるイタリア、規制の強化とワクチン接種開始
にぎやかに集い、乾杯で迎えるイタリアの新年
クリスマスを、教会のミサに参列して過ごし、家族と共に食卓を囲んで祝うことの多いイタリアでは、一方、大晦日から元旦にかけては、前の晩の夕食で、大勢で集まってにぎやかに食事をし、カウントダウンで新年の訪れを迎え、乾杯して祝う人が大勢います。わたしたちは例年は、リミニ県の友人宅で、自分たちが作った料理などを持ち寄り、約30人で、食事やおしゃべりを楽しみ、そうしたにぎわいの中で、カウントダウンと共に新年を迎え、外では海岸や町などで花火が打ち上げられる中、スプマンテをグラスに注ぎ合い、両頬へのキスと祝いの言葉を交わします。マルケの小村でも、大晦日の晩は、友人たちとにぎやかに過ごし、乾杯で新年を迎えていました。
日本に生まれ育ったわたしは、日本で、除夜の鐘を聴いて、家族と共に新しい年を迎え、元旦は初詣に出かけていたため、イタリアに暮らして18年になる今でも、こうしたにぎやかな大晦日の晩の過ごし方には、少し違和感があります。わたしからそうと聞いて、一度は友人が、宴の途中で、時差はあるのですが、皆で除夜の鐘を聴くことができる時間を、作ってくれたこともあります。
大晦日の晩は、私宅やレストランで過ごすことが多かったので、2019年の大晦日に、友人の提案で、リミニで、イタリア映画界の巨匠、フェデリーコ・フェッリーニ生誕百周年記念展を訪ね、映画を見終えたあとに映画館で乾杯したとき、中心街がイルミネーションで彩られ、混雑する様子に、驚きました。
今日は #イタリア映画 の巨匠フェデリコ #フェリー二 生誕百周年。#リミニ の記念展の写真と今日 #イタリア テレビで放映されるフェリー二 #映画 一覧。『#甘い生活』も。#Fellini100 100 anni dalla nascita. Oggi tanti film su canale 34 #FedericoFellini #Rimini #Italyhttps://t.co/sWrmOkqylW pic.twitter.com/0kPFKFIPh4
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) January 20, 2020
こんなふうにイタリアでは、大晦日にも、大勢が集ってにぎやかに過ごす慣習があるため、感染下にある今年は、大晦日から元旦にかけて、特に厳重な取り締まりが行われるとのことです。また取り締まりは、路上や街頭で行われると同時に、私宅などで大人数でのパーティーが催されて、感染が広がることがないように、SNS投稿にも警察が目を光らせているとのことです。
新型コロナウイルス感染症を打ち負かすための頼みの綱として、ずっと注目されていたワクチンの接種が、イタリアでも12月27日から、まずは新型コロナウイルスと第一線で闘っている医療従事者を対象に始まりました。ワクチン接種が開始するVデイは、第二次世界大戦中にヨーロッパ戦線の転機となったノルマンディー上陸作戦を決行する予定日だったDデイに劣らず、いやそれ以上に重要な日であると、マスメディアでは、かなり前から希望と期待を込めてワクチン報道が行われ、ワクチンが白雪の積もる山を越えてイタリアへと届けられたクリスマス当日には、物々しい警備の中ワクチンが運ばれる様子が、中継されていました。
12月27日イタリア ワクチン接種開始、Vデイ当日の報道とワクチンの成果への期待
イタリアでは、現時点では2億1500万回分のワクチンが入手可能となる見込みで、ワクチン接種はすべての人に無料で供給され、初期の入手可能なワクチンが少ない段階では、まずは医療従事者、次いで老人ホームに暮らす高齢者と従業員を接種対象としています。世界の他国、また、欧州内ではドイツなどに遅れを取っているイタリアですが、今日、12月31日の午後6時25分の時点で、17,291人がワクチンの接種を受けたことが確認されています。
イタリアにおけるワクチン接種の進行状況や、各州別、性別、年齢層別のワクチン接種状況は、イタリア政府サイトが新型コロナウイルス感染症ワクチンレポートを逐次更新する次のウェブページで確認することが可能です。
医療従事者や国民すべてに義務づけするかどうかという議論があり、また、現段階では、医療従事者や国民の中にも、接種の強制は反対という人も少なくないのですが、接種を望まない人にも強制するかどうかという判断が差し迫ったものとなるまでにはまだまだ時間がかかり、それまでには、万一の副作用があるかないかも明らかとなっているのではないかと思います。
今年の大晦日は、わたしと夫は、ペルージャの我が家で、義父母たちと共に新年を迎え、真夜中に乾杯をして祝う予定です。
政府の規制強化と国民の責任ある行動、そして、ワクチンの接種で、来る2021年は、少しずつ新型コロナウイルス感染症から世界が解放され、長いトンネルから抜け出して光明が見えるよき年となるよう願っています。
著者プロフィール
- 石井直子
イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。
ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia
Twitter:@naoko_perugia