イタリアの緑のこころ
オルヴィエートのクリスマス2020
屋外で楽しめるクリスマス飾りの工夫、大聖堂は入場券でミサ参列
オルヴィエートの大聖堂が建つ広場には、芸術作品や古代エトルリア文明の遺跡が見られる美術館や博物館が並んでいるのですが、今年は新型コロナウイルス感染対策の規制のため、博物館も、展覧会や映画館と同様に、1月15日まで閉館で、また、レストランも、午後6時には閉店となっています。そのためでしょうか、大聖堂正面の建物の壁には、夜空で音楽を奏でる天使が映し出され、広場では大きな彗星が輝いて、道をゆく人々が、クリスマスの美しい飾りや心に、屋外を歩きながら触れることができるよう、工夫されていました。
例年はクリスマスにはミサの参列者が千人に達するという大聖堂でも、今年は、クリスマス前夜から当日にかけて行われる四つのミサに、それぞれ参列者170人までという制限が設けられ、参列するには、あらかじめ大聖堂に入場券を取りに行く必要があると、先日、地方ニュースで報道がありました。
クリスマス市も、昨年度は、11月29日から1月6日まで、いくつもの広場で開催されて、大勢でにぎわっていたのですが、今年は12月20日の1日だけ、二つの広場で催されるとのことです。
オルヴィエートの中心街には、古代エトルリア時代にも使われていたカーヴァの井戸があり、例年は、大きく深い井戸へと続く順路のあちこちに、幼子イエスの生誕場面を再現するプレゼーペが設置されています。(詳しくはこちら)今年予定されていたプレゼーペと展示は、来年度に延期となったのですが、今年12月23日から来年1月6日までは、生誕場面の再現は行われ、ただし午前10時から午後6時まで外からのみ見ることができるとのことです。
ANSA通信の記事によると、クリスマスや新年にかけて多くの観光客が訪れるオルヴィエートでは、12月最初の週は大聖堂の入場者が、例年であれば1000人から1500人もいるのに、今年は100人足らずだったとのことです。
クリスマス・元旦など祝祭日前後のさらなる規制強化
12月6日に、ようやくウンブリア州がイエローゾーンとなり、州内の他の市町村や、やはりイエローゾーンである他州からはオルヴィエートを訪ねられるようになったものの、感染や悪天候や博物館の閉館などのために観光客は少なく、さらに、昨日の首相令で、クリスマス前後および年末年始や1月6日の主顕節など、大勢の移動が予想される祝日・日曜日やその前日は、イタリア全土がレッドゾーン、また、12月28日から30日までと1月4日もイタリア全土がオレンジゾーンとなり、今年のクリスマス祝祭期間は、全国の多くの観光地同様に、オルヴィエートにとっても厳しい時期となりそうです。オレンジゾーンでは、原則的に、自分の住む市町村の外には出ることができず、レッドゾーンでは居住する市町村内の移動も制限されることになるからです。
先週末のミラノやローマの商店街の混雑ぶりに、また、新規感染者数や死者などがなかなか減らない状況から、第三波を防ごうと、イタリア政府はこうして規制をさらに強化しました。
わたしたちが金曜の午後にオルヴィエートを訪ねたのは、人混みを避けるためだったのですが、同じように考えてか、昨日の夕方、オルヴィエートの中心街で、クリスマスの贈り物を購入したり、目抜き通りや大聖堂前の広場を散歩したりする人が少なからずいました。けれども、幸い、感染の危険があるほどの混雑は見られませんでしたし、皆がきちんとマスクをつけて歩いていました。
フランチェスコ教皇も、贈り物や食事にと散財するのではなく、貧しい人や苦しむ人に主イエスの姿を見て、手を差し伸べるよう、そして、幼子イエスも凍えるような寒さと貧しさの中で生まれたのであり、クリスマスの本来の精神に立ち返るようにと、最近はことあるごとに伝えています。
厳しい状況の中、それでも、荘厳な装飾に彩られた大聖堂やオルヴィエートの町で、そうしてイタリアで、皆が規制を守り、自分や他の人にとっての大切な人の命を守りながら、この祝いの期間を過ごし、新しい年を迎えることができますように。
著者プロフィール
- 石井直子
イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。
ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia
Twitter:@naoko_perugia