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イタリアの緑のこころ

石井直子|イタリア

聖リータ生地・サフラン名産地カッシャ 今年は巡礼者激減で大打撃

カッシャ、サフラン祭り 2014/11/1 photo: Naoko Ishii

カッシャ名産 サフラン祭り

 秋は収穫の季節です。実ったオリーブからオリーブオイル、ブドウからワインが生産される季節であると共に、サフランや栗が収穫できる季節でもあり、また、トリュフがおいしい季節でもあります。そのため、秋にはイタリア各地で、こうした季節のおいしいものが主役となる村祭りが開かれ、人々は旅行と共に特産の旬の味を楽しみ、生産者は、収穫・生産した食品を販売し宣伝する絶好の機会となります。

 ウンブリア州の南、シビッリーニ山脈の山中にあるカッシャは、ウンブリア州に数あるサフランの名産地の一つで、食農体験の日には、サフランの栽培方法や効能、料理法などを学ぶことができ、例年は秋、10月末から11月の初めまで、サフラン祭りが開催されます。

 こうした食の村祭りには、近隣の町や村の店も参加する場合が多く、冒頭の2014年のサフラン祭りの写真には、ノルチャの業者の露店があり、ノルチャの特産物であるサラミなど豚肉の加工食品や、トリュフ、トリュフソース、トリュフ風味のオリーブオイル、チーズなどが、店頭に並んでいます。

 カッシャもノルチャも共に、2016年のイタリア中部地震の被災地です。先日のウンブリア州の地方ニュースで、ノルチャでは、地震後ようやく再び観光客も訪れるようになり、復興への兆しが見えていたのに、現在ウンブリア州がオレンジゾーンで、自らが住む州や市町村からは移動できない状況であるために(詳しくはこちらの記事) 、旅行客がなく、商店でもレストランでもとても厳しい状況にあることが報道されていました。

巡礼地カッシャ 観光産業に深刻な打撃

 最近の地方ニュースではまた、アッシジやカッシャなど、カトリック教の巡礼者が団体で訪れることが多い観光地で、新型コロナウイルス感染拡大やその抑止のための規制で、旅行客が激減し、多数の土産物屋や宿泊施設、レストランなどが、経営難で閉業に追い込まれかねない厳しい状況も伝えていました。

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聖リータの生地、ロッカポレーナの礼拝堂 2013/3/9 photo: Naoko Ishii

 カッシャの小村、ロッカポレーナは、14世紀末に、苦しみの多い人生を送りながらも、愛と祈りに生き続けたカッシ の聖リータが生まれた村で、ロッカポレーナには生家を初めとする聖女ゆかりの場所が多く、カッシャには、夫を殺されたのち、聖リータが修道女として生きた修道院と聖女を記念する聖堂があり、カッシャやロッカポレーナもアッシジ同様に、観光施設や中心街の店の多くが、巡礼者のおかげで成り立っているのです。

 観光産業に限らず、農産業でもまた、新型コロナウイルス感染の影響が深刻となっています。たとえば、今年は良質のオリーブオイルやワインの生産が見込まれるものの、またトリュフの収穫も期待できるものも、特に質の高いものとなればなるほど、一般客よりもレストランに販売している場合が多いので、レストランの営業時間が短縮になったり、閉業が長引いたりするために、売り上げが大幅に減少してしまうためです。

 だからと言って、多方面から声が上がっているように、クリスマスに向けて規制をあまりにも緩和してしまうと、感染がまた急増し、医療機関が逼迫する地域が増えて、大勢が命を失うことになります。春のように、まずは国民の命と健康を優先した政策をと願っています。

 

Profile

著者プロフィール
石井直子

イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。

ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia

Twitter@naoko_perugia

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