World Voice

Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア

平野美紀|オーストラリア

大陸縦断鉄道ザ・ガン 95周年!オーストラリアの荒野を駆ける豪華寝台列車

オーストラリア中央部のアウトバックを貫く大陸縦断鉄道として知られる「ザ・ガン」。日本列島とほぼ同じ2,979kmを走る長距離列車でもある。(2024/8/3 筆者撮影)

1929年8月4日、アデレード駅は、歴史的瞬間を一目見ようと集まった大勢の市民でごった返していた。この日、アデレードとオーストラリア大陸中央部を結ぶ鉄道が開通。100人以上の乗客と貨物を乗せた一番列車を見送るためだ。

約1,500km先の辺境の地「アリス・スプリングス(当時の町名はスチュアート)」へ向けて走り出した列車の名は、「アフガン・エクスプレス」。現在、大陸縦断鉄道として知られる「ザ・ガン」号だ。

newsweekjp_20240817031121.jpg

1948年の冬頃にノーザンテリトリーのフィンクという集落の近くで撮影されたザ・ガン号と乗客。当時は蒸気機関車へ水を汲むために停車する必要があったが、その間、乗客らは列車を降りて休憩をとったという。(南オーストラリア州立図書館蔵)

今では、アデレード〜ダーウィン間 2,979kmの長距離を結ぶ豪華寝台列車として、一生に一度は乗ってみたい世界の列車のひとつに名を連ねている。

今月(8月)4日、ザ・ガンが95周年を迎えたことを祝い、アリス・スプリングスのテレグラフ・ステーション歴史保護区で「ザ・ガン95歳の誕生日会」となるディナーパーティーが開かれた。

newsweekjp_20240817111352.jpg

アリス・スプリングス発祥の地とも言える「テレグラフ・ステーション歴史保護区」でのアウトドア・ディナー(2024/8/4 筆者撮影)

ザ・ガンの歴史と名の由来

1800年代、未踏の地であったオーストラリア中央部のアウトバック探索が始まった際、ラクダが物資運搬の手段として輸入された。アフガニスタンからやってきたラクダたちとラクダ使いは、レッドセンターと呼ばれる赤土のアウトバック開拓に大きく貢献。その後、鉄道建設が始まってからも20世紀初頭まで、辺境の地へ物資を運ぶ重要なインフラとして活躍したのだそうだ。

newsweekjp_20240817032025.jpg1974年5月頃撮影されたと見られるノーザンテリトリーのフィンク川付近の窪地を登るザ・ガン号。(Credit: Hugh S. Williams CC-BY-4.0.- Wikipedia)

鉄道が開通した当初、開拓の功労者であった彼らにちなみ、列車は「アフガン・エクスプレス」と名付けられた。後に、アフガンを略した「ガン」の愛称で呼ばれるようになり、今日に至る。このため、ザ・ガン号は、かつてオーストラリア中央部の発展に寄与した「ラクダ」がシンボルマークとなっている。

newsweekjp_20240817111642.jpg

ザ・ガンのシンボルマークは、未開の地であったオーストラリア中央部開拓の立役者「ラクダ」(2024/8/3 筆者撮影)

赤土のアウトバックにあやかった赤いボディに描かれたラクダのルーツと開拓の歴史に思いを馳せながら乗車すれば、列車旅ならではのロマンを掻き立てられること間違いなしだ。

全長2,979kmの大陸縦断鉄道

newsweekjp_20240817032756.pngザ・ガンの路線図。黄色の路線はオールド・ガン・ルート(旧ルート)、赤色の路線が現在のルート(Credit:Bidgee CC BY 3.0 - Wikipedia

ザ・ガン号が走る路線は、大陸の中央部を南北に結ぶアデレードからダーウィンまでの全長2,979km。これは、日本列島とほぼ同じ長さに当たる。(参照

客車は、プラチナクラスとゴールドクラスの2つのカテゴリーがあり、食事や飲み物、途中下車で体験できるエクスカーションが含まれたオールインクルーシブのクルーズ・トレインだ。

newsweekjp_20240817112032.jpg

豪華寝台列車「ザ・ガン」、ゴールド・クラスのツイン・キャビン(2024/8/3 筆者撮影)

今回私は、「ザ・ガン95歳の誕生日会」に参加するため、会場となるアリス・スプリングスを目指し、北のダーウィンからザ・ガン号に乗り込んだ。

過去にもザ・ガンに乗車したことがあるのだが、2004年にアリス・スプリングスからダーウィンまでの延長路線が開通する前のことで、アデレードからアリス止まり(当時は終点)だったので、2回に分かれているとはいえ、今回の乗車で鉄道による大陸縦断が成就することになる。

※ 今回のザ・ガンでの旅、車内の様子や食事、エクスカーションなどの詳細は、次回じっくりとご紹介します!>> 公開しました!

【ザ・ガンでいくオーストラリア列車旅】
Part 2:オーストラリア列車旅:豪華寝台列車ザ・ガンで赤土のアウトバックへ

newsweekjp_20240817120127.jpg

ザ・ガンの乗客はこの日に限らず、テレグラフ・ステーション歴史保護区でラクダ・ライドが楽しめる。(2024/8/4 筆者撮影)

ザ・ガン The Ghan - Journey Beyond Rail

現在、運行されているのは、2,979km全線を走破する2泊3日または3泊4日のコースと、アデレードまたはダーウィンからアリス・スプリングスまでの約半分を1泊2日で旅するコースの2パターン。ちなみに、ダーウィンからアデレードまでを3泊4日かけて走破する「ザ・ガン エクスペディション」が、最も泊数が長く、充実した列車旅を体験できる。

Special thanks to:Tourism Northern Territory, Journey Beyond Rail

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ