World Voice

Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア

平野美紀|オーストラリア

絵画のように美しい緑の海に浮かぶオールインクルーシブ・ロッジ ~ノーザンテリトリーの休日

雨季に降った多量の雨で河川が氾濫してできる「フラッドプレーン(氾濫原)」に、蓮の花が咲き乱れ、桃源郷のような景色が広がる。(2023年4月筆者撮影)

人は、緑(みどり)を眺めることで精神状態が落ち着き、リラックス効果が得られるという。また、青い空を眺めていると心身が爽快になり、幸せな気分になるという人も多い。ならば、この両方を一緒に眺められることができれば、幸福感はさらにアップするはず...?!

緑に囲まれ、思う存分緑を満喫できる場所として、真っ先に思いつくのは森。しかし、森では背の高い木々に遮られてしまい、気分がスキっとするくらい広大な空を眺めることは難しい。溢れんばかりの緑とどこまでも広がる青い空を同時に眺められるのはどこだろう?

そんな願いが叶う場所を求めて、ノーザンテリトリーのトップエンドへと旅立った。

手つかずの自然あふれるトップエンド

トップエンドとは、オーストラリア北東部のヨーク岬半島を除いた大陸の最北端地域を指し、ノーザンテリトリー(準州)の首都ダーウィンがゲートウェイとなる。概ね雨季と乾季に分かれる熱帯気候で、海沿いは南国のリゾートのようなトロピカルなムード、少し内陸に入るとモンスーンの影響を受けた森林地帯が広がる。

モンスーンがもたらす豊富な水が豊かな生態系を育み、世界遺産のカカドゥ国立公園をはじめとする湿地帯も魅力だ。

FRL3.jpg

ダーウィンから約1時間半の人里離れた大自然の中にポツンとあるプライベート感たっぷりのオールインクルーシブ・ロッジ(2023年4月筆者撮影)

トップエンドには、手つかずの自然がそのままに残り、『秘境』と呼ぶにふさわしい知られざる場所がまだまだたくさん眠っている。

オールインクルーシブ・ロッジで何もない贅沢

ダーウィンから車で約1時間半。町を離れ、ときおり小さな集落が現れる程度の人里離れたアウトバックをひた走る。携帯電話の電波は途切れ途切れとなり、周りに民家らしきものは皆無だ。もちろん、コンビニなどあるわけがない。

目指すは、リッチフィールド国立公園と接する約50,000エーカー(東京ドーム約4,328個分!)という広大な私有地に建つ「フィニスリバー・ロッジ」。客室数わずか6、ゲストは最大12人までという、プライベート感たっぷりのラグジュアリーなオールインクルーシブ・ロッジだ。

FRL2.jpg

2022年5月にオープンしたばかりのフィニスリバー・ロッジは、まだ本当に「隠れ家」と言える。(2023年4月筆者撮影)

舗装路を外れ、ダートロードをしばらく走ると、フィニスリバー・ロッジに到着。ロッジの前では、スタッフが並んで待っていてくれた。チーズや生ハムなどのちょっとしたおつまみと共に用意されていた冷たい飲み物を一気に飲み干すと、乾いた喉に染みわたっていくのがわかる。

チェックインを終え、案内してくれたスタッフが部屋のドアを開けて、「さあ、どうぞ」と招き入れるように差し出した手に導かれ、一歩足を踏み入れた瞬間、思わず「あっ!」と声が出てしまった。

目に飛び込んできたのは、圧倒されるほどの緑と青!

FRL1.jpg

窓がキャンバスのように外の風景を切り取り、絵画のような絶景が広がる。(2023年4月筆者撮影)

氾濫原へと繋がる青々とした草が多い茂る緑の平原と真っ青な空が天と地を真っ二つに分けるように広がり、白い雲が綿菓子のようにポッカリと浮かんでいる。緑と青のグラデーションが目に眩しい。まるで四角いキャンバスに切り取られた絵画のようだ。どこまでも続く平原を眺めていると、緑の海に浮かんでいるような錯覚に陥ってしまいそう...

FRL4.jpg

窓からの景色は、太陽の傾きと共に刻々とその表情を変える。ずっと見ていても飽きない。(2023年4月筆者撮影)

ベッドに寝転びながらぼんやりとこの景色を眺めているだけでいい。ほかには何もいらない...そう思わせてくれる。とりたてて何か見どころがあるわけでもないのに、心がスゥーっと軽くなるような不思議な景色だ。

FRL9.jpg

左:ゆったり浸かれる深めのバスタブがうれしい。右上:視界に入ってくるのは目に染みるような緑と空だけ...広々としたプライベートデッキ。右下:大きなキングサイズのベッドに寝転びながら、外の絶景を眺めるのは至福のひととき。(2023年4月筆者撮影)

フィニスリバー・ロッジの魅力

FRL5.jpg

プールサイドからは、どこまでも続く平原に太陽が沈む壮大なサンセットが眺められる。(2023年4月筆者撮影)

フィニスリバー・ロッジは、滞在中のすべての食事とアルコールを含む飲み物、1日2回の敷地内でのガイドツアーが含まれている。ガイドツアーでは、広大な敷地内に点在する巨大な蟻塚を見学したり、バードウォッチングをしながらカンガルーやワラビーなどの野生動物を見つけたりと、ゲストの要望に合わせたアレンジで大自然を満喫できるのがうれしい。ワインとカナッペをいただきながら壮大なサンセットを堪能するバギーツアーはとくにおすすめだ。

FRL6.jpg

左:氾濫原を駆け抜け、桃源郷へと誘うエアボート・ツアー。右上:広大な敷地内に放し飼いされている牛たち。右下:バギーを運転するロッジの女将的存在のチェイスさん。(2023年4月筆者撮影)

また、3泊以上滞在すれば、エアボートで水面ギリギリを浮上しながら氾濫原を駆け抜けるアドベンチャーツアーも体験できる。桃源郷のように美しい氾濫原のど真ん中でボートを停止してもらうと、聞こえてくるのは飛び交う鳥の声と風の音だけ...という静寂の異空間に包まれる。(エアボート・ツアーは3泊以下でも追加料金でリクエスト可能とのこと。要相談)

FRL7.jpg

左:ところどころに点在するアリ塚とパームツリー以外、何もない大平原の中でサンセットを待っていると牛が覗きに...(笑)右:手作りのカナッペとカナッペを用意するオリビアさん。(2023年4月筆者撮影)

食事のレベルも驚くほど高い。こういっちゃなんだけれど、ノーザンテリトリーで洗練された食事にありつくのはなかなか難しいところがあるが、ここではそんな心配はいらない。

FRL8.jpg

左:ロッジで保護されていた孤児のワラビー。右上:プールサイドでのサンセットも見逃せない!右下:ある日のディナーのメインディッシュは、地元産バラマンディ(アカメ科の白身魚)。(2023年4月筆者撮影)

おいしいものに舌鼓をうち、気の向くままに大自然と戯れ、青い空と緑の海を眺めながらうたた寝をする── 何と贅沢な時間なのだろう。

都会の喧騒から隔絶されたトップエンドの広大な湿原の端にひっそりと佇む人里離れたロッジは、「帰りたくない!」と本気で思うほど幸福感がアップする、とっておきの隠れ家だった。(ちなみに、ロッジ内はWifiが入っていたので仕事のメールを見逃さずに済んだのは助かった(笑))〈了〉

Finniss River Lodgeフィニスリバー・ロッジ

【関連記事】 ご一緒にどうぞ♪
モンスーンが運ぶ豊かな水が育む命の森 ~リッチフィールド国立公園
ウランに群がる巨額マネー 大金に目もくれず守り抜いた聖地 ~カカドゥ国立公園

Special thanks to:Tourism Australia, Tourism NT (Northern Territory), Finniss River Lodge

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ