Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
恐竜時代へタイムスリップ!豪最大の恐竜専門博物館 オーストラリアン・エイジ・オブ・ダイナソー
初めて恐竜トレイルを訪れたのは10年以上前になるが、当時、童心に帰ってワクワクが止まらなかったのをよく覚えている。今、オーストラリア恐竜トレイル最大の見どころは?と訊かれたら、誰が何と言おうとウィントンの郊外にある恐竜博物館「オーストラリアン・エイジ・オブ・ダイナソー」が一押しだ。
一番の目玉は、豪国内最大の国産恐竜化石のコレクション。オーストラリアで発掘された恐竜コレクションとしては世界でも最大となるそうだ。オーストラリアン・エイジ・オブ・ダイナソーは、単に展示物を並べた博物館ではない。南半球で最も生産性の高い化石のプレパレーション(採集した岩石から化石を取り出す作業)で世界的に注目される化石処理ラボや恐竜たちが行動した当時の様子がわかる貴重な足跡などが間近で見学できる、見どころ満載のアトラクションなのだ。
オーストラリアン・エイジ・オブ・ダイナソーは、すべてが保護対象となっているため、見学の際は同館のツアーに参加することになるが、おすすめの順に見どころを紹介していこう。※あくまでも、超個人的な好みに基づく「おすすめ順」となっているので悪しからず(笑)
見どころ No.1:ティタノサウルスの行進/マーチ・オブ・ザ・ティタノサウルス・エキシビジョン
今回の訪問で最もインパクトがあったのは、「ティタノサウルスの行進(マーチ・オブ・ザ・ティタノサウルス)」。なんといっても、世界最大規模の恐竜化石プロジェクトの 1 つと言われるこの施設ができた経緯がすごい。
ティタノサウルスの行進と呼ばれる「マーチ・オブ・ザ・ティタノサウルス・エキシビジョン」。膨大な足跡化石だけでもすごいが、これを何が何でも保護しようという、人々の情熱に胸を打たれる。(2023年4月 筆者撮影)
2016年、ウィントン郊外のスネーク・クリークで、約1憶年前の恐竜の足跡が発見された。現在は、乾燥した大地が広がるエリアだが、9,500万年前は、ビラボンと呼ばれる季節性の池や水溜まりと蛇行する川の間に位置するシルト平原であったという。
かつて季節性の水場できて地面が泥化していたであろうこの場所に、ティタノサウルスのような竜脚類の巨大な恐竜が歩いた足跡が当時のまま、70mにも渡ってくっきりと残されていたのだ。調査を進めたところ、その周囲には小型の鳥脚類や獣脚類の複数の足跡、そして、さまざまな古代爬虫類が残した多数の足跡も一緒に含まれていることがわかった。
これら大小異なる恐竜たちが同じ場所で行動したことを示す事例の発見は初。これまでよくわかっていなかった恐竜たちの行動パターンを推測することができる、世界でも稀に見る貴重な化石だったのだ!
しかし、この足跡のある場所は、今でもときおり大雨が降ると水の流れが向かってくる方向にあり、そのままでは風化や浸食が進んでしまうのは明らか。そこで、専門家らは検討を重ねた結果、そのままそっくりオーストラリアン・エイジ・オブ・ダイナソーへ移設するという、大胆且つ、壮大な計画を決定。
専門家と熟練の技師らを中心とした特別チームが編成され、世界最大規模の恐竜化石移設プロジェクトが始動。約2年に渡る慎重な作業を経て、2020年後半に移設が完了した。
湿度や温度を徹底管理できる巨大な建物内に移された足跡は、2021 年 5 月から一般公開され、館内ツアーで誰でも手軽に見ることができる。
見どころ No.2:恐竜谷トレイル/ ダイナソー・キャニオン・ウォーキングトレイル
子供たちが一番喜びそうなのが、「ダイナソー・キャニオン・ウォーキングトレイル」と呼ばれる散策路。「恐竜谷(ダイナソー・キャニオン)」と名付けられた谷間に、このエリアで発見された恐竜たちの物語がリアルなフィギュアで再現されている。
レセプションセンターから2 kmほど離れた恐竜谷へは、小型シャトルで約5分。到着するや否や目に飛び込んでくるのが、前回ご紹介した等身大のティタノサウルスだ。その巨大さに子供ならずとも興奮してしまうに違いない。
ウォーキングトレイルを歩き出すと、自然をそのまま利用した谷間に、次々と恐竜が現れる。サイズは小さいながらもリアルに再現された恐竜たちが周囲の風景に溶け込んでおり、「ああ、恐竜たちは、こんな感じでこの大地を闊歩していたのだなぁ」と思わせてくれる。また、途中にクイズやゲームがちりばめられていたりと、楽しみながら歩ける工夫も面白い。
ここは自由散策ツアーとなっているため、好きなだけ、じっくりと見て回れるのもうれしい。
見どころ No.3:化石処理ラボと展示室/フォッシル・プレパレーションルーム&コレクションルーム
オーストラリアン・エイジ・オブ・ダイナソーでは、こうした世界的にも貴重な足跡の化石や恐竜の骨の化石はもちろん、化石を岩から取り出すプレパレーション作業を間近で見ることができる。
プレパレーターのほとんどはボランティアだというが、皆、とても手際よく作業を進めているのがわかり、思わず自分でもやってみたくなってしまう。また、ラボ内に展示されている本物の恐竜の骨に触れることができるコーナーもあり、子供たちに好評だ。
展示室となるコレクションルームでは、「バンジョー」の愛称で知られる肉食恐竜「アウストラロベナトル」と「マチルダ」の愛称で知られる竜脚類の仲間「ディアマンティナサウルス」、「ウェイド」という愛称の「サバンナサウルス」の化石、標本を間近で見ることができる。
バンジョーは、オーストラリアで2006年に発見された新種の恐竜で、豪国内最大かつ最も完全な姿で発掘された肉食恐竜。マチルダもまた、豪国内で最も完全な姿で発掘された竜脚類のひとつだ。実際の化石やバンジョーの等身大の標本を目の前にしながら、この地の恐竜に関するドキュメンタリー「Monsters in the Outback」を鑑賞していると、その時代の風景の中で動き回る恐竜たちが蘇ってくるようだ。
どちらのツアーも知識豊富なガイドによる案内で、より一層、恐竜への思い入れが強くなることだろう。ここまでご紹介した4ヶ所の見学所要時間は、およそ3~4時間。レセプションセンターには、カフェもあるので、ゆっくりと時間をかけて見て回るのもいい。
見どころ 番外編:星空保護区のゴンドワナ星天文台/ジャンプアップ・ダークスカイ・サンクチュアリー&ゴンドワナ・スターズ・オブザーバトリー
夜までオーストラリアン・エイジ・オブ・ダイナソー付近にいることができるなら、ぜひとも体験したいのが、降ってきそうなほどの満天の星空。人工的な光など一切なかった太古の時代から何ひとつ変わらない、恐竜たちが見ていた夜空が頭上に広がっている。
この辺り一帯は、光害のない、暗く美しい夜空を保護・保存する目的で活動する国際ダークスカイ協会によるお墨付きなのだから、その星空の美しさは驚異的!
「ジャンプアップ・ダークスカイ・サンクチュアリー」と名付けられたこの場所は、国際ダークスカイ協会による星空保護区の5つのカテゴリーのひとつ「ダークスカイ・サンクチュアリー」として、2019年4月に認定。ダークスカイ・サンクチュアリー認定は、オーストラリア初となる。
オーストラリアン・エイジ・オブ・ダイナソーの敷地内に、星空を観察するにぴったりな展望所が設けられており、ツアーの最後では望遠鏡を使った観察も可能だ。ツアー催行は季節によるのでお出かけ前に確認を。
今とはまったく異なる風景が広がっていた太古の時代、恐竜たちが生き生きと暮らしていた様子が鮮明に蘇ってくるような、ロマンあふれるアトラクション。それが、オーストラリアン・エイジ・オブ・ダイナソーなのだ。
あ、最後に大事なことを忘れていた... オーストラリアン・エイジ・オブ・ダイナソー及び恐竜トレイルを訪れるなら、南半球の秋から春にかけてがおすすめ。夏場はとてつもなく暑く、灼熱地獄な上、まとわりつくハエが鬱陶しい季節。そう、北半球の冬を除いた季節がベストだ。〈了〉
▼Australian Age of Dinosaurs オーストラリアン・エイジ・オブ・ダイナソー
【オーストラリア恐竜紀行シリーズ】
オーストラリアで『恐竜』をテーマに旅する三部作! この記事と他2本もご一緒にどうぞ。
▼恐竜の足跡を追え!オーストラリア恐竜トレイルを往く
▼9500万年前に恐竜たちが起こしたパニックの痕跡、世界唯一の恐竜スタンピード
Special thanks to:Tourism Australia, Tourism and Event Queensland
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
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