Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
WBC オーストラリア初の1次ラウンド突破でも、そっけない豪国内メディア
WBCこと、2023 WORLD BASEBALL CLASSIC の1次ラウンド・プールBで、日本と同組に入っていたオーストラリアが、3勝1敗の戦績で日本と共に準々決勝進出を決めた。日本には負けてしまったが、オーストラリアとしては、WBC 1次ラウンド突破は初。15日には、強豪国・キューバと対戦する。
これは、オーストラリアの野球にとって、アテネ五輪の銀メダル以来の偉業であり、この国のスポーツ界にとっても一大ニュースになるはずだが、国内の主要メディアは相変わらず冷ややかだ。(前回のコラムもご参考に)
もともと、各メディアの公式サイトのスポーツ・コーナーに「Baseball(野球)」という項目はないとはいえ、この豪球界の一大ニュースを「その他のスポーツ」の中でも取り上げているメディアはほぼ皆無...(前回同様、オリジナル記事は豪ABCの1本だけ)
ここまで、この話題を取り上げないというのは、わざと無視しているか、それとも、野球のことを知っている記者がいなくて記事が書けないか、のどちらかではないかと思ってしまうほどだ。
あ、あるかも 今まで、野球のルール知ってるオージーに会ったことないっす
-- ふぉな (@fona_fodo) March 13, 2023
たしかに、この国で野球の話題に触れても塩反応が返ってくるという人もいるくらいだから、「大半の国民が興味ないのだから、話題にするほどではない」と思っているのかもしれないが、あまりのそっけなさにちょっと悲しくなってしまう。
初めまして。
-- Tuuli (@rjttdd) March 13, 2023
スポーツ観戦好きの現地友人に野球の話題を振ったら、野球何それオイシイの?的な塩対応喰らいました
逆にクリケットなんぞよくわからんし興味もないのに度々しつこく解説されます
オーストラリア本国では全然ニュースになってないけど、やった〜!
-- Hidetaka | Sydney Concierge | (@HidetakaTanaka) March 13, 2023
さすがオージー、身体能力高いのでハマると強いな。
(韓国に勝ったのがデカかった) https://t.co/XxTXoRDytN
二足の草鞋(わらじ)でプレーする豪プロ野球選手たち
オーストラリアのプロ野球リーグは、現在、国内7球団にニュージーランドから参加している1球団を加えた全8球団で成り立っている。北半球の冬場に行われるため「ウインター・リーグ」とも呼ばれ、近年では、米マイナーリーグや日本のNPBでプレーする若手選手らがリーグ公式戦開催期間のみという短期契約で参加する機会も増えてきている。
とはいえ、オーストラリア国内の選手は、季節労働的な契約になっていることもあり、野球だけで食っていける選手はほぼいない。基本的に、生計を立てるためのメインとなる仕事を持ち、週末にプロ野球選手としてプレーするという『二足の草鞋(わらじ)』の選手がほとんどだ。このことから、豪プロ野球公式戦は、主に週末に行われるスケジュールになっている。
シドニー・ブルーソックス vs ブリスベン・バンディッツ戦を取材した時、この事実を再認識させられた。
今回のWBCでも主に中継ぎ投手として出場している代表選手の1人、ジョッシュ・ガイヤー投手にインタビューしようと、金曜日の夕方に球場で待っていたが、試合前練習が始まっても姿が見えないので探していたところ、試合開始30~40分くらい前にようやく姿を現し、「仕事があって、さっき来たところなんだ」という。また、前期にブリスベン・バンディッツでプレーしていた陽岱鋼選手によると、バンディッツの選手の大半は、普段は球団オーナーの会社で働いているそうだ。
こうした状況は選手だけではない。コーチも然りだ。知人の紹介で知り合ったシドニー・ブルーソックスのコーチの1人に取材前に挨拶しようと探していたら、「彼は、今日は仕事でまだ来ていない」と言われてしまった。
それでも、コロナ前には、市内中心部から遠く、行きにくいシドニー・ブルーソックスのホーム球場がほぼ満員になることもあったというから、徐々に一般市民に野球というスポーツが認識され始め、少しずつではあるが定着してきているのを感じるというファンも増えている。
今大会の1次ラウンドでは、全試合でホームランが飛び出すなど、打撃レベルもかなりアップし、豪野球のレベルが全体的に高くなっていることも実感した。コロナ前のような賑わいが戻ってくれば、国内メディアも少しは対応を変えるだろうか?
明日15日に行われるWBC準々決勝。オーストラリアはぜひともこのキューバ戦に勝利して次のラウンドへ駒を進め、豪スポ―ツ界に一泡吹かせて欲しい。〈了〉
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
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