Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
世界最大級のLGBTQ+の祭典 シドニー・ゲイ&レズビアン・マルディグラ 45周年、今年はワールドプライド2023同時開催
15年以上前、「シドニー・ゲイ&レズビアン・マルディグラ」を紹介する記事を書いたところ、当事者(同性愛者)であるという日本の方からお叱りを受けた。「ゲイやレズビアンなどと軽々しく書かれるのは、ゲイである身としては腹立たしい。理解が足りない」という主旨のお怒りのメールだった。
それからは、なるべくこの話題には触れないでいたのだが、6年程経った頃、別の当事者の方から、「今年のシドニーのマルディグラに日本から参加するので、ぜひ取材に来てください!」とお誘いを受けた。時代が変わったなぁと感じた瞬間だった。
個人的にも時代の変化を強く感じる「シドニー・ゲイ&レズビアン・マルディグラ」。
今年で45周年を迎えた世界最大級のLGBTQ+の祭典が、本日(2月17日)キックオフ!
シドニー・ゲイ&レズビアン・マルディグラの歴史
1978年6月24日、ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」で1969年6月27日に起きた『ストーンウォールの反乱』の記念日に合わせ、同性愛者たちがシドニーでデモ行進したのが始まり。
このデモ行進は、予め当局から許可を受けていたにも関わらず、当時、同性愛は違法とされていたことから、デモ主催者や参加者ら53人が逮捕されてしまう。これを新聞が逮捕者を実名で報じたことから職場で解雇されるなど、社会から冷遇される人が相次ぐ騒ぎとなった。しかし、この事件によって当事者たちの思いはさらに強くなり、翌年も絶対にデモを行うという決意が固まったという。
権力による抑圧にもめげず、翌年の1979年には、最大3,000人規模のデモ行進に発展。1981年に「シドニー・ゲイ・マルディグラ」という名称で2月開催へと変更して毎年開催されるようになり、1988年には「シドニー・ゲイ&レズビアン・マルディ・グラ」へ改称され、現在に至る。(詳細)
アボリジニのドラァグ・クイーンさん。実は先住民のLGBTの人たちは個人個人で、 #シドニー ゲイ&レズビアン・マルディグラとして今のように大きな祭典になるキッカケとなった最初の行進に参加してたらしい。 今回は、ひとつのグループとしてパレードの最初に登場!#MardiGras40 #SydneyMardiGras pic.twitter.com/dkmdpjgC8o
-- Miki Hirano (@mikihirano) March 4, 2018
シェール(Cher)登場シーン。すごい歓声というか、Oh my god! 絶叫してる人も(笑)メディアもパパラッチ状態w #シドニー #マルディグラ #mardigras40 #sydneymardigras pic.twitter.com/mITILZPpJD
-- Miki Hirano (@mikihirano) March 4, 2018
逮捕者を出しながらも声を上げ続けた当事者たちの思いが詰まった「シドニー・ゲイ&レズビアン・マルディ・グラ」は、1978年の最初のデモ行進から今年で45年。今では、国内はもとより、世界中からLGBTQ+団体や個人が参加し、最大の見どころでもあるパレードには、毎年約50万人の観客が詰めかけるほどの一大フェスティバルとなっている。
さらに今年は、シドニーが南半球初の「ワールドプライド」開催都市に選ばれたことで、「ワールドプライド2023」として、マルディグラ+ワールドプライド同時開催となり、史上最大規模となる予定だ。
南半球初となる、ワールドプライド開催都市・シドニー
「ワールドプライド」とは、世界規模のLGBTQ+の祭典。世界レベルでLGBTQ+についての理解を深め、問題提起の機会とすべく、「InterPride」という団体が2000年にローマで大規模なLGBTQ+イベントを開催したことが発端となり、その後、数年毎に世界各地の都市で開催。2023年開催地は、シドニーが南半球初、アジア太平洋地域初の開催都市に選ばれた。
これまでの「ワールドプライド」は、ストーンウォールの反乱記念日に合わせ、6月に開催されてきたが、シドニーでは世界的に有名なLGBTQ+の祭典「シドニー・ゲイ&レズビアン・マルディグラ」が2~3月かけて開催されていることもあり、これに合わせた同時開催となっている。
オーストラリアにおけるLGBTQ+事情
もともとシドニーにはLGBTQ+の方が多く住んでいるが、これは、上述した1978年のデモ行進の後、警察と抗議者との衝突が激しくなったことを受け、1979 年 4 月までにニューサウスウェールズ州議会が逮捕を許可する略式犯罪法の廃止を決定、(当時まだ違法とされていた)同性愛者らによるデモが行いやすくなったことも一因にあるようだ。
このことにより、抗議デモ行進から発展したマルディグラのパレードが一層盛り上がりを見せ、今では首相(今年のパレード参加予定)をはじめ、多くの政治家や警察官らも参加する国内屈指のフェスティバルになったといえる。
また、こうした事情から、長らくシドニーがオーストラリアで最もLGBTQ+フレンドリーな都市として君臨してきたが、最近では、トップの座をメルボルンに奪われるなど、豪国内各地にLGBTQ+フレンドリーな街ができつつあるようにも感じる。
オーストラリアにおける同性婚
オーストラリアで同性婚が正式に合法化されたのは2017年。これよりも前から州議会を中心に法改正がなされてきたものの、国として正式に認めるまでに時間を要したのは、内部対立のためだったとされる。とはいえ、議会決定の瞬間を見ると、多くの人が待ち望んでいたことが伝わってくる。(参照)
2021年の国勢調査によると、豪国内には78,425組のLGBTQ+カップルが暮らしていることがわかっている。このうち、婚姻届けを提出しているのは約30%。さらに、17.3%が子供と一緒に暮らしているという。(参照)
岸田首相は、同性婚を認めると「社会が変わってしまう」と述べたそうだが、同性婚で社会が変わるのではない。社会が変わってきたからこそ、法改正が必要なのではないだろうか。〈了〉
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/