Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
オーストラリアの郷土愛あふれるビール文化
居酒屋やバーなどで飲み始める時、着席すると、「とりあえず、ビール!」という人が多いのではないだろうか?
日本人はビール好きといわれるが、キリンが発表した2019年の各国1人あたりの年間ビール消費量の調査で、日本は38.4リットルと調査対象国中、53位となっている。(参照・PDF)
同調査によると、オーストラリアは日本に比べて大幅に多く、ほぼ倍の75.1リットルで17位なのだそうだ。ビールのようにのど越しのよいアルコール飲料は、夏場はとくに暑くて乾燥気味なオーストラリアの気候にぴったりなのだろう。
これまでオーストラリアで最も人気があったのは、「ラガー」だったというが、近年は「ペールエール」などのエール系のほうが、人気が高まっているそうだ。爽やかなシトラス系の香り豊かなオーストラリアのペールエールは、エール嫌いの女性にも好評だ。
そんなオーストラリアの「ビール文化」は、少し独特といえるかもしれない。州毎に昔から地元で愛されるビールがあり、州を代表するアイコン的存在となっているほどだ。
例えば、ニューサウスウェールズとクイーンズランドの州民が最も燃えるラグビーの州対抗戦「ステート・オブ・オリジン」のスポンサーには、それぞれの州の代表ビール・ブランドが必ず入り、州代表選手のジャージの肩やショーツ部分にビール銘柄のロゴがつけられる。
試合会場となるスタジアムでは、もちろん、これらのビールが売られ、応援している州チームと同じビールを浴びるように飲みながら観戦するのがお約束だ。
なぜ、州毎に地域を代表するビールが生まれたのか?
オーストラリアで州毎に代表的なビールが生まれたのには、主に2つの理由が考えられるという。
ひとつは、オーストラリアという国が現在のような連邦制になる1901年まで、国内は(現在の州に当たる)各地域が別の植民地として管理・管轄されており、それぞれ独自にアルコールの製造や販売に関する法律を持っていたこと。
もうひとつは、1880年代後半まで、国内における食料品等の主な輸送手段が海上輸送であったことから、輸送時間や品質上の問題などもあり、それぞれの地域で独自にビールの醸造をしてきたことだ。
こうした、オーストラリアが分割統治されてきた歴史と広大な大陸のために輸送手段が限られていたことも手伝って、各地域(現在の州)のオリジナル・ビールが生まれ、地元に定着していったのだそうだ。
オーストラリアにおけるビールの歴史
オーストラリアにビールを最初に持ち込んだのは、ご存知ジェームス・クック。クックとその一行が、後に植民地として統治することになるオーストラリアへ向かう船「エンデバー号」に、飲料水の節約手段として、ビールを積み込んでやってきた。
オーストラリア国内初のビール醸造は、1796年。英国からの移民してきたジョン・ボストンが、シドニーに醸造所をオープンし、トウモロコシを使って造ったのが公式記録として残っているそうだ。このオーストラリア最初のビール醸造家であるジョン・ボストンの名を冠したビールは、銘柄もそのままの「John Boston」として今も存在し、ボトル・ショップ(酒屋)で入手して飲むことができる。
次回では、栄枯盛衰で消滅してしまったブランドもあるなか、今も昔と変わらず愛され続けている各州の代表的な老舗ブランド・ビールをご紹介。お楽しみに!〈続〉>>公開しました!
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
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