Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
レタスが1個1,000円超えの高級食材に!? 豪南東部における洪水の影響で...
ウクライナ地域での戦争の影響で、世界的にさまざまな物価が上昇しているが、オーストラリアでは、2月下旬頃から3月にかけて南東部で発生した洪水による農作物への被害が深刻となり、価格が高騰しているものがある。
影響が顕著なのが「レタス」だ。一部の地域ではなんと、1個12豪ドル(現在のレートで約1,130円)まで上昇。平均10豪ドル前後と、ちょっと手を出すのをためらうような高価な食品となってしまっている。
Iceberg lettuce is being stripped off Australian supermarket shelves as the salad staple soars to $12 each amid widespread shortages brought on by a perfect storm of energy price rises, freight costs, extreme weather events and the ongoing pandemic. https://t.co/Ut3CD7rcbT
-- Sky News Australia (@SkyNewsAust) June 7, 2022
キャベツを混ぜて提供するファーストフード・チェーンも
レタスの高値と供給不足のため、現在、「豪KFC」では、南東部の州の店舗において、バーガー類などの一部のメニューに使用しているレタスをキャベツと混ぜて提供しているとアナウンスしているほどだ。(参照)
Speaking of lettuce, it currently costs $12 for a head of iceberg lettuce in Australia. People there not happy with KFC blending in cabbage for their burgers.https://t.co/lzWd1bOogB
-- Dub8Lady (@DubLoony) June 16, 2022
該当するのは、実際の洪水被害がとくに深刻だったニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州、そして、ニューサウスウェールズ州に囲まれたオーストラリア首都特別地域、ビクトリア州、タスマニア州といった東~南東部にかけての地域。
また、こうしたKFCの動向を受け、サンドウィッチ・チェーンの「サブウェイ」も追随すると発表した。
地産地消を強化してきた大陸の西側地域では影響なし
現在、シドニー近郊のスーパーや青果店では、どこも10豪ドル前後のところが多く、1個6豪ドル(約570円)を見つけた時には「安い?!」と錯覚してしまったくらいだ。
ところが、洪水の影響を受けていない西オーストラリア州や南オーストラリア州、ノーザンテリトリーといった大陸の西側では、供給不足もなく、価格上昇すらみられていない。西オーストラリア州パース周辺の店頭では、1個3.50豪ドル程度で売られているという。(参照)
All the hype about Mark McGowan is true: Perth this week $3.50 #lettuce
-- Jannette Armstrong (@Nette8Two) June 13, 2022
(I'm so glad he lettuce in ) pic.twitter.com/odvgAMiAwY
オーストラリアは、人口が集中する主要都市のほとんどが大陸の東側にあることから、農産物の主要生産地や食品工場のほとんどが東側に偏っている。そのため、シドニーから飛行機で約5時間かかる西オーストラリア州の州都パースでは、東側から運ばれたと思われる(とくに加工)食品が高いと感じることがあるが、今回のレタスはその逆だ。
以前、オーストラリアという広い大陸における物流について触れた「食品の流通を考える。」というコラムで、西オーストラリア州の「地産地消運動」を取り上げたことがあるが、地理的に物流コストが高くつく西オーストラリア州では、州内での生産力を高めて地産地消を強く推奨してきたこともあり、今回大きな差として表れたといえるのかもしれない。
地産地消は、単にその土地の旬のものをおいしくいただけるというだけでなく、地元の生産者支援に繋がり、フードマイレージが少なくて済むというメリットがある。最近注目されている「SDGs」の一環として、環境負荷を考える上で欠かせないエネルギー(輸送にかかる燃料コスト)とCO2排出量問題においても、フードマイレージは大きく関係してくる。
今回の「レタス騒動」で、西オーストラリア州の「Buy West Eat Best(西のものを買おう!(それが)食べるのに最良!)」運動が、再び私の中で脚光を浴び、フードマイレージを考えることの大切さを再認識させてくれた。地産地消を意識した購買行動をひとりひとりが心がけることは、やはり重要だと感じる。
ここへきて、大手スーパーの「コールス」が、小さなレタス2個組6.50豪ドルで販売するなど、少しは落ち着きをみせているとはいえ、今や高級品となったレタス。庶民の食べ物に戻るのはいつだろうか...?〈了〉
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
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