Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
9年ぶりに政権交代、新首相アルボと総選挙後のオーストラリアの行方
5月21日に行われた総選挙で、2013年以来9年ぶりの政権交代となったオーストラリア。
過去9年間与党であった保守連合(自由党、国民党など)への不満から、下馬評でも最大野党であった労働党が勝利するだろうとは言われていたが、予想以上の圧勝ぶりだった印象を受ける。
オーストラリアでは与党と野党が入れ替わると、政策が180度変わると言われるほど、ガラリと変わることが常であるため、今後のオーストラリアの行方が気になるところだ。
気になる選挙結果は・・まだ集計中
投開票日は5月21日、労働党勝利で新首相の宣誓就任式も済んでいるが、実は選挙の最終結果はまだでていない。豪ABCによると本日5月30日正午現在で、開票率は79.0%。獲得議席数は、保守連合57、労働党75。
議会における過半数は76となっているため、どちらもまだ届いてないが、このままいけば、今日にも労働党が一党で過半数を獲得できる見込みだ。(最新情報はこちらで確認できます)
新首相のニックネームは「アルボ」
第31代オーストラリア首相となったのは、労働党の党首アンソニー・アルバニージー氏。
苗字の「アルバニージー(Albanese)」とは、イタリア語で「アルバニア人」を指す言葉だそうで、南イタリアへアルバニアから移住してきた人という意味だという。
2019年、次の選挙に向けて彼が労働党党首になった時、豪メディアの間でもこの姓を何と発音するかが話題となった。それは、比較的多い英国系などの発音がわかりやすい姓ではなかったために、「アルバニーズ」「アルバネーゼ」「アルバネイジ」「アルバニージ」「アルバニージー」など、人によって呼び方が異なっていたからだ。
この件についてテレビのインタビュー番組で訊かれた彼は、笑いながらこう答えている。
「イタリア語の発音ではアルバネーゼだけど、『アルボ』と呼んでもらうのが簡単でしょう。それなら間違うこともない」
We chat to the potential future lead of the ALP @AlboMP about his vision for Australia, his hopes for leadership and he finally settles the correct pronunciation of his name. #TheProjectTV pic.twitter.com/HQ9JmSCz8O
-- The Project (@theprojecttv) May 22, 2019
自ら『アルボ』と呼んでくれたらいい、というくらいだから、彼自身のツイッターのアカウント名も @AlboMP だ。
イタリア人の父とオーストラリア人の母の間に生まれたアルボ。シドニーから英サザンプトンへ向かうクルーズ船の中で知り合ったという両親は、その後、すぐに別れてしまい、母親が単身オーストラリアに戻って、シドニーのセントマーガレット病院で彼を産んだという。そして、公営住宅で暮らす母親とその家族(アルボにとっては祖父母)によって育てられたそうだ。
幼い頃、父親は交通事故で死亡したと聞かされて育ったが、彼が14か15歳になった時、母から「父はまだ生きているかもしれない」と聞かされたという。後年、多くの人の助けを借りて、2009年になって初めて父親に会ったと、2016年に放送された豪ABCの番組「7.30」で語っている。(参照)
母親は、清掃員としてパートタイムの仕事をしていたが慢性関節リウマチを患っており、アルボ家庭の主な収入は障害年金と祖母の年金であったという。そのため、アルボ自身も学校へ通いながら、新聞配達などのアルバイトをして家計を助けていたそうだ。(参照)
セントメアリーズ・カテドラル・カレッジを卒業し、一旦、コモンウェルス銀行へ就職するが、2年間働いた後、経済学を学ぶためにシドニー大学へ入学。この頃から政治に興味を持ち始め、労働党に関わり、「左派のキーマン」として知られるようになっていく。
幼い頃から複雑な家庭環境に置かれ、庶民の暮らしに欠かせない福祉が重要であることを、身をもって理解している政治家の一人といえるだろう。
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著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
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