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平野美紀|オーストラリア

オーストラリアの選挙はソーセージにケーキ...海パンで投票所へGO!

「選挙当日にズボンをはかずに投票するオーストラリア人」と題した豪メディア・ニューズグループの動画ニュース。記事内で動画視聴できます。(news.com.au 公式Youtubeより

5月21日、オーストラリアでは総選挙が行われた。最大野党であった労働党が勝利し、2013年以来9年ぶりの政権交代が決まった格好だ。

オーストラリアでは、選挙は「義務」であり、投票を怠ると罰金を科されることになっている。罰金といっても20豪ドル(約1800円)程度なので、たいしたことはないかもしれないが、ほとんどの人が投票にいくため、投票率は常に90%を超える。(参照

そんな、毎回高投票率を誇るオーストラリアの「選挙」について、ここでは堅苦しいことは抜きにして、この国ならではのユニークな側面に触れてみようと思う。

選挙とソーセージとケーキの奇妙な関係

オーストラリアで選挙といえば、切っても切れないのが「ソーセージ」だ。投票日には、投票所となる学校や公共施設の敷地内で大量のソーセージを焼いているため、あたかも「投票所はこっちだよ」と呼び寄せる目印にしているかのように、周辺にその匂いをぷんぷん漂わせている。こんがりと焼けたソーセージはパンに挟んで、投票を終えた人たちが頬張るのだ。

このソーセージは、投票を済ませて食べる習慣になっていることから「デモクラシー・ソーセージ(民主主義のソーセージ)」と呼ばれている。Twitterでも公式ハッシュタグ #democracysausage ができているほどだ。

democracysausage.png

公式ハッシュタグを入れると自動でアイコンがつくようになっている。

Sausage.jpg

デモクラシー・ソーセージの公式サイトでは、どこの投票所でソーセージが食べられるかマップで確認できる。今年はケーキがある投票所も地図上に表示。(Democracy Sausage公式サイト

ソーセージを挟むパンは、白い食パンであることが多い。ソーセージには、炒めた玉ねぎが遠慮がちに添えられ(つまり、ちょっとだけしか入ってない)、バーベキューソースかケチャップ、マスタードを好みでかけて食べる。白くて薄っぺらな単なる食パンに挟まれたソーセージと玉ねぎの間からたっぷりとかけられたソースがあふれ出し、なんともジャンキーな感じが否めない食べ物だ。

最近はそんなジャンキー感満載のソーセージに分け入って、甘党にはうれしい「ケーキ」が参入。カラフルなカップケーキやスライスケーキなどが並ぶ投票所も増えている。これは、女性や子供にとくに評判がいいようだ。

面白いことに、選挙とソーセージの関係を紐解いていくと、実は、もともとは「ケーキ」がメインであったらしく、1930年代の投票所の写真や映像には、ケーキの屋台が映っているのが確認できる。その後、どこでどう入れ替わったのか、ケーキがソーセージになり、また再びケーキに戻りつつあるのかもしれない。

こうした選挙投票所の屋台は、もともと慈善団体が始めたもので、投票にやってくる人に寄付をしてもらうのが狙いであるそうだ。最近は、野菜販売のテントや各国料理の屋台などが並ぶ投票所もあり、なんだかお祭りか縁日のようでもある。

今年のボンダイ・ジャンクションの投票所には、期日前投票開始から投票日当日までトルコ料理のギョズレメの屋台が出店。

こうした状況から、投票にいくだけのはずなのに、家族連れでやってくる人も多いという。こんな風に行くのが楽しみになるような投票所だったら、いつも低すぎると話題になる日本の投票率も、少しは上がるかも...?

海パンで投票にいく人が続出する海辺の投票所

「選挙当日にズボンをはかずに投票にいくオーストラリア人」と題して動画で紹介。(news.com.au 公式Youtube)

意外に思うかもしれないが、シドニーはサーフィンが盛んな「ビーチ・カルチャー」の街といえる。シドニー東部のボンダイ・ビーチは、世界初のサーフライフセービング・クラブが発足した「ライフセーバーの町」として有名だ。(参照

そのボンダイ地区では、ビーチへの行き帰りに投票に行く人も多いのだが、なんと、投票所に水着のまま来る人が昔から後を絶たない。夏の暑い日ならまだしも、季節的には秋である今回も案の定、水着で投票にやってくる人が現れた。しかも、今回の投票日は、小雨のぱらつく冬のように寒い日であったにも関わらず...

「ところ変われば」とはいうけれど、英国ではまじめな印象だった選挙の投票風景も、オーストラリアではガラリとイメージが変わる。町や村の小さなお祭りのようになにやら楽しげな雰囲気で、思わずニヤっとしてしまうようなユニークな人々の姿もまた、オーストラリアの選挙ならではの風景といえるのかもしれない。〈了〉

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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