Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
パンデミック終了?感染者増加でもコロナ規制をほぼ撤廃し、正常化するオーストラリア
オーストラリアでは、新型コロナウイルス感染症感染拡大に伴うパンデミック時に適用してきた「バイオセキュリティのための緊急パンデミック対策法」が、4月17日に失効した。(参照)
「バイオセキュリティのための緊急パンデミック対策法」は、パンデミックが始まってからの約2年間、感染拡大状況を鑑みながら更新されてきたものだ。
これに伴い、海外からの旅行者に課してきた「陰性」を証明する渡航前検査が不要となり、パンデミック下で入港を禁止してきたクルーズ船の寄港も可能となった。
オーストラリアの入国に際しては、海外からの渡航者に対するワクチンを2回以上接種した証明書の提出が必要なことを除けば、パンデミックに伴ってこれまで行ってきた様々な規制は、各州政府が独自に規定して残っているもの以外、ほぼ廃止されたといえる。
ところが今もオーストラリアは、連日 4万人前後の感染者を記録。ピーク時よりは減ったとはいえ、1日あたりの感染者数としては、パンデミックが始まって以来、過去最高規模であり、下のグラフでもわかるように、パンデミックを通じた感染者のほとんどが今年に入ってからとなっている。
国境規制や濃厚接触者定義の大幅変更
豪政府は、海外からの旅行者のオーストラリア出入国に対して、ワクチンを2回以上接種済であることの証明書の提出、何らかの事情で接種できない人に関しては、免除証明の提出を求めているが、国民や永住者に対しては、4月18日からワクチン未接種であってもこれらの証明が不要になった。(参照)
ただし、国民や永住者以外のワクチン未接種渡航者の入国後隔離や検査等については、州によって異なる。これは、これまで何度も触れてきたように、各州政府が独自に規制を設定しているためだ。
ワクチン未接種者が海外から直接到着した場合には、入州後の検査や隔離義務が残っている州が多いが、ニューサウスウェールズ州では、4月30日をもって海外からの到着者に対する検疫を廃止し、隔離ホテルの運営も終了すると発表。
NSW州は、感染者同居家族への7日間隔離義務を含む、濃厚接触者ルールを金曜18:00から廃止。また、主要産業労働者へのワクチン接種要求や未接種の旅行者に対するホテル検疫も廃止、検疫ホテルは4/30終了...
-- Miki Hirano (@mikihirano) April 20, 2022
Close contact rules, major pandemic restrictions scrapped in NSWhttps://t.co/FAGBKZmIDR
これにより、5月1日からは、国民や永住者以外のワクチン未接種旅行者も、隔離義務はなくなることになるが、到着から24時間以内にRAT(迅速抗原検査)をし、陽性となった場合は7日間の自己隔離が必要となる。
また、ニューサウスウェールズ州では、4月22日18:00をもって、濃厚接触者の定義を大きく変更し、同居家族が陽性になった場合でも本人以外は隔離する必要がなくなったため、7日間の隔離義務は陽性者本人のみとなった。
豪国内の移動や接種証明提示などに関する規制の廃止
州境を越える移動に関しては、既にほとんどの州で規制を撤廃し、移動時に接種証明や検査を求められることは無くなっているが、最後まで厳しい規制を維持してきた西オーストラリア州が、4月28日をもって廃止すると発表。
西オーストラリア州は、国内居住者が入州する場合であっても3回接種済であることを求めるなど、厳しい規制を課してきたが、4月29日からは、すべての州でパンデミック以前のように自由に移動できるようになる。
WA has secured its soft landing through the Omicron wave, making way for Level 1 public health measures to safely ease across the State from 12:01am Friday, 29 April.
-- WA Government (@WAGovernment) April 26, 2022
For more information regarding this announcement please visit: https://t.co/SdTwhYBOfi pic.twitter.com/SmJccrNknU
また、各州が導入していた入店時の接種証明の提示やマスク着用義務もほぼ廃止となり、マスク着用義務が残るのは、空港や飛行機内、病院や高齢者施設など、限られた場面のみとなった。これについても州毎に異なるので、州をまたいで移動する際は、自分が滞在する州がどうなっているか事前に確認しておきたい。
感染者数高止まりでも規制を廃止し、正常化を推進
オーストラリアでは、ワクチン接種が開始されて以来、徐々に規制を緩和してきたが、今年に入ってから感染者数も死者数もパンデミック中の過去2年に比べ、最高となっている。それにも関わらず、これまで課してきた厳しい規制をほぼ撤廃し、正常化に邁進しているのが現状だ。
今年はまだ4ヶ月弱なのに... https://t.co/JTj2VmJlo3
-- Miki Hirano (@mikihirano) April 24, 2022
しかし、世界に目を向ければ、オーストラリア同様に感染者が増加、もしくは上げ止まりとなっているのに、ワクチン接種状況を問うことなく、パンデミック以前のように誰でも自由に出入国が可能となっている国が増えているという。オーストラリアがこうした国々に追随して、すべての規制を廃止するのも間近なのかもしれない。
国内の感染者数増加など関係なく、これまでコロナ禍で出入国に際して行われてきた検査、検疫、ワクチン接種証明等の規制を撤廃し、パンデミック以前同様に誰でも出入国可能になった国は既に20ヶ国あるらしい。
-- Miki Hirano (@mikihirano) April 19, 2022
These 20 Countries Are Now Back To Normal Entry Requirements https://t.co/k8Ss6H0vOs
正常化されることは大歓迎だが、一向に感染者が減らない状況をどうみるか。これまでやってきた厳しい規制はなんだったのかと、スッキリしないのは私だけではないのではないだろうか...?〈了〉
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/