Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
豪南東部、史上最悪の豪雨で町が水没... 約50万人に避難指示
オーストラリア南東部では、2月20日過ぎ頃から雨が断続的に降り続き、各地で洪水が発生。3月4日時点で少なくとも17人が死亡するなど、「1,000年に一度」と言われる観測史上最悪の豪雨に見舞われている。
覚えている人もいるかもしれないが、南東部は、昨年の3月にも「100年に一度」の大洪水と言われたほど、記録的な豪雨に見舞われた。しかし、今回はそれをはるかに上回る大規模洪水となっており、昨年よりも広範囲かつ、より深刻な被害となっている。
被災エリアは、クイーンズランド州からニューサウスウェールズ州の2州にかけてのとてつもない広域に及び、各所で川が氾濫。低地に大量の雨水が流れ込むなどしているため、市街地や住宅地がほぼ完全に泥水に飲み込まれてしまった町もあるほどだ。ときおり暴風を伴った雨は、既に2週間近く続いており、ほぼ毎日、「荒天警報」が発令されるという、まさに、止まらない雨との格闘が続いている。
シドニーでは、3月5日土曜日に一時的に雨が止み、束の間の晴れ間が覗く1日となったが、日曜日からは再び雨が降りだし、恐ろしいことにまだ降り続く予報だ。
町が水没、家畜が流されるなどの被害も
ニューサウスウェールズ州北部の町「リズモア」は、周辺エリアを含む数万人の住民に避難指示が出され、今のところ、最も被害がでてしまったエリアとなっている。
どのくらいの被害なのか・・・まずは、水没した町をドローンで撮影した下の映像を見てみて欲しい。
道路という道路が、冠水しているのがおわかりいただけると思うが、近隣河川の水位は最大14.4メートルにも達したという。氾濫した川から市街地に流れ込んだ泥水で、マクドナルドの看板がご覧のような状態となるなど(下のツイート画像参照)、一時はまさに町全体が水没したような最悪の事態に陥った。(参照)
オーストラリア南東部を襲っている豪雨、NSW州北部のリズモアが大変なことに...本当に町が水没するレベルの大洪水が発生中、、、
-- Miki Hirano (@mikihirano) February 28, 2022
マックの看板、何メートルくらいあるっけ?マジすごすぎ...
Lismore flooding: before and after pictures show the full scale of disaster https://t.co/ezDhIEgaoH
町の中心部から南へ約30キロメートルに位置するウッドバーン橋は、両岸が水没し、少し高くなった橋の中央部分に数十台の車と家畜が取り残された。また、郊外の農場からは、約300頭の乳牛が濁流に流されていく様子もとらえられた。
町が水没するほどの大洪水に見舞われているNSW州北部リズモアで、リッチモンド川に架かるウッドバーン橋の両サイドが水没。川の水位が1954年に記録した5.42mを超え、約6.9mまで上昇。
-- Miki Hirano (@mikihirano) March 1, 2022
少し高くなった中央部分に避難しようとしていた多くの車や馬などが取り残されてしまった...どうすれば、、 https://t.co/wVHFsMJIDG
こうした家畜の流出は、2州にまたがる被災地のあちこちで見られ、助かった牛もいたが、水死状態でビーチに打ち上げられた牛もいたようだ。(参照)
シドニーやブリスベンなどの大都市圏でも大きな被害
すでに2週間にも及ぶ今回の豪雨。始まった当初は、クイーンズランド州南部のサンシャインコースト北のギンピー辺りから、ニューサウスウェールズ州北部のノーザンリバー地区辺りの被害が酷かったが、発達した雨雲は日を追うごとに南下し、現在はシドニー近郊にまで及んでいる。
3月2日には、シドニー近郊のワラガンバ・ダムがキャパシティを超えてしまい、ホークスベリー川をはじめとする周辺の河川が氾濫。この影響で、シドニー北西部の「ウィンザー」や「リッチモンド」といった川沿いに位置する町に泥水が流れ込み、こちらも町が水没する事態に...。
シドニーの水がめ「ワラガンバ・ダム」がキャパ超え、放出が始まった模様。予想より早く、始まったので下流周辺地域は要警戒 https://t.co/O7W1JyiYFY
-- Miki Hirano (@mikihirano) March 2, 2022
この地区では、2年のうちに3度もの洪水に襲われ、住民たちも相当、疲労困憊しているようだ。家屋や店舗の浸水被害は広範囲に及び、屋根のすぐそばまで水に浸かってしまった住宅も多く、一時は、ニューサウスウェールズ州内だけで約50万人に避難指示がだされた。(参照)※結果的には最悪の事態が回避され、そこまで大規模な避難とはならなかったが...
また、クイーンズランド州ブリスベン近郊では、ブリスベン川が氾濫し、商業地区であるサウスバンクや住宅街などが浸水。大規模な停電が発生したため、直接の水の被害は免れた場所でも冷蔵庫が使えず、食品類を廃棄処分にしなければならないなどの被害も相次いだ。
シドニー近郊では、先月20日頃から雨の日が続いており、ときおり強く叩きつけるように降る雨の音に恐怖を覚えるほどだ。
滝の真下にいるかのような 豪雨で怖いくらいなんだけど、、
-- Miki Hirano (@mikihirano) February 25, 2022
ホースでじゃーじゃー水をかけられているか、洗車機のなかに入ってるかのような猛烈な勢いの雨、、、
-- Miki Hirano (@mikihirano) March 2, 2022
このような壊滅的な豪雨となっているのは、ラニ-ニャ現象の影響でサイクロン(台風)並みに発達した低気圧が、東海上に居座っていることが一因だというが、自然の脅威をまざまざと見せつけられ、人間の無力さを改めて痛感させられる。
シドニーより北の地区の被災地では、復旧に向けた作業も始まっているが、停電や通信障害等も発生しており、完全復旧するまでは時間がかかりそうだという。しかも今週も引き続き、強い雨が降り続く予報がでているため、まだまだ気が抜けない日々が続きそうだ。一体、いつになれば雨が止むのだろう...?〈了〉
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/