Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
トンガ海底火山噴火の爆発音がシドニーで聞こえた !?
1月15日土曜日、トンガ諸島の海底火山が噴火。その噴火の様子は、宇宙からも確認され、ニュージーランドやオーストラリアはもちろん、遠く離れた日本や米国などでも、津波や潮位上昇が観測されるなど、規模の大きさを物語る噴火となった。(参照)
Marine Threat to #NSW, #QLD, #TAS, #VIC, #MacquarieIsland. Land threat to #LordHoweIsland, #NorfolkIsland. #Tsunami Warning after volcanic eruption near TONGA ISLANDS. Latest info here: https://t.co/GjmBLzaK75. pic.twitter.com/gwp00TcPjO
-- Bureau of Meteorology, Tasmania (@BOM_Tas) January 15, 2022
実はこの日、昼食を食べ終えて一息ついていた時、「ドカン!」という爆発音が聞こえ、「なんだ?なんだ?」と、2人で顔を見合わせたことがあった。当日は、昼食を食べ始めたのが遅く、午後2時半少し過ぎていたため、食べ終えてから爆発音を聞いたのは、午後3時を回った頃だった。恐らく、3時20分前後か...?
この時点では、まだトンガで起こった海底火山爆発のことは知らなかったのだが、その後、「日本時間の午後1時10分頃、トンガ近海の海底火山が爆発した」と知り、驚いた。
どうやら、あの爆発音を聞いた時間とかなり近い時間に、噴火したようだ。
現在、シドニーは夏時間のため、日本との時差は+2時間。ということは、トンガの海底火山が爆発したのは、こちらの午後3時10分に当たる。となると、時間的には、ほぼぴったりだ。
しかし、トンガ諸島が、オーストラリアの東の南太平洋にあるとはいえ、遠く離れたシドニーで、噴火の際の爆発音が聞こえるものなのだろうか?
ガス爆発?と思うような爆発音
その音は、「ガス爆発か?」と思うような、最初は少しくぐもったような大きな破裂音。大きめのプロパンガス・ボンベか何かが爆発したのでは?と思ったほどだった。たまたま土曜日の午後だったこともあり、工事やパワーツールを使う機械音のような人工的な音があまりしていなかったため、余計に大きく聞こえたのかもしれない。
しかし、音がした後に、消防車や救急車などが出動する様子はなかった。ちなみに、我が家の近所には消防と救急の両方のステーションがある。
The violent eruption a few hours ago of the Hunga Tonga-Hunga Haʻapai volcano captured by satellites GOES-West and Himawari-8. pic.twitter.com/PzV5v9apF6
-- Wonder of Science (@wonderofscience) January 15, 2022
ツイッターで続々と情報が集まる・・・
トンガとシドニーは、直線距離にして約3.500 km。位置関係はこんな感じだ。
In the Fijian capital Suva, more than 500 miles away, officials described "loud thunder sounds" as they issued tsunami alerts and opened emergency evacuation centres after urging residents of low-lying communities to leave their homes pic.twitter.com/pcLTynMGfD
-- The Sunday Times (@thesundaytimes) January 15, 2022
いや、まさか、こんなに離れているのに聞こえるわけはないよな...と思おうとしたが、やはりどこかで引っかかる。
離れてはいるが、我が家はシドニー北部の海岸沿い地区にあるため、ここから北東に位置するトンガとの間にあるのは、「海」だけだ。途中に何の障害物もない。
気になって仕方なかったため、ツイッターで「爆発音を聞いた」とツイートしたところ、「衝撃波ではないか」という意見を中心に、続々と情報が集まってきた。
ん?ちょっとまてよ?トンガの海底火山が爆発したのって日本時間の15日午後1時10分ごろなの?!
-- Miki Hirano (@mikihirano) January 15, 2022
とするとこっちの午後3時過ぎだよね...今日、その頃にどこかわからないけど爆発音がして「え?今の何??」と2人で顔を見合わせた...まさか、ここまで聞こえることはないと思うけど...何だったんだろう?
また、簡単に計算してみたところ、P波であれば、10分遅れくらいで到達することもわかった。
うちの歩く計算機が簡単に計算したところ、トンガとうち(シドニー北部海沿いでトンガとの間は海)の距離は約3500kmなので、P波だと約10分遅れくらいで到達するらしい。けど、大規模な海底火山爆発なので電離層反射(?)のほうがありえる?どっちにしても聞こえる可能性高いな...
-- Miki Hirano (@mikihirano) January 15, 2022
フォロワーさんが寄せてくれた情報の中で、最も目を引いたのは、ニュージーランドのウェリントンで、トンガの噴火の音が聞こえたという証言だ。
多分、それ。 https://t.co/G6wmUbYZPM
-- 彫木環(オミクロン株にはガッカリだよ) (@CordwainersCat) January 15, 2022
Our house in Wellington just had the Tonga eruption pressure wave go through. You can see it on our barometer, and @lcsnz and I think we could hear it faintly.
-- Kate Pearce (@secvalve) January 15, 2022
We are 2400km (1500mi) away. pic.twitter.com/uVlZni4PkL
トンガとウェリントンの距離は、2,400km。ということは、シドニーで聞こえる可能性もありそうではないか?!
さらに、この情報を最初にツイートしていた方から、以下のような情報もいただいた。
リプライに含まれてるので僭越ながらコメントしますと、この距離の音響伝搬はまっすぐ飛んでくるわけではないため、かならずしも距離が遠い方が音が小さいとは限らないと考えています。例えば音は冷たい(音速の小さい)方向に曲がるため、冷たい圏界面を挟んで上下にうねうねと運動します。
-- ACTIVE GALACTIC (@active_galactic) January 15, 2022
そして、さらに、フィジーで聞こえたという噴火の際の音が、私が聞いたものとかなり似ていることもわかった。
今朝、教えてもらったフィジーで聞こえたトンガ海底火山噴火の時の音。私が聞いたのとかなり近い。もう少しくぐもった感じだったけど、それは録音状態のせいかもしれない...後、うちの近くは地形的に少し海側に開けた谷間が広がっているので反響したかもしれない...https://t.co/M7PWrNaWnn
-- Miki Hirano (@mikihirano) January 15, 2022
9,400 km 離れたアラスカでも聞こえた爆発音
「トンガの海底火山噴火の爆発音が、シドニーまで届いて聞こえた」説に、かなり確信を持ち始めていたところ、「約9,400 km離れているアラスカでも聞こえた」という情報が飛び込んできた。(参照)
The Hunga Tonga-Hunga Ha'apai volcanic eruption was heard here in Alaska starting around 3:30 a.m. - 6,000 miles from the volcano! Infrasound measurements from the @alaska_avo confirm that it was indeed coincident with the volcanic pressure wave. Special thanks to Dr. David Fee. pic.twitter.com/Wp4tnwiaud
-- NWS Alaska Region (@NWSAlaska) January 15, 2022
9,400 km離れたアラスカで聞こえたとすれば、ここシドニーで聞こえても不思議はない。
案外、地球は狭かった!
フィジーの地震気象研究者は、今回の噴火は、引き続き活発な活動がみられるため、まだ予断を許さないと警告を鳴らす。世界の科学者も今後、数週間以内に大規模な噴火が発生する可能性があるという。
トンガの海底火山噴火、まだまだ油断禁物と警鐘を鳴らすフィジーの地震気象研究者...トンガの火山噴火は進行中で、本日午後も活動が増加していることが記録されていると...今後、数週間以内に大規模な噴火が発生する可能性があると科学者も警告... https://t.co/IZ1grbmBk1
-- Miki Hirano (@mikihirano) January 16, 2022
トンガも日本と同じく『リング・オブ・ファイア(環太平洋火山帯)』上に位置する。日本も火山列島として、過去の教訓を生かして、十分に注意していく必要がありそうだ。〈了〉
※トンガは、この噴火で海底ケーブルが切断され、外部との連絡が取りにくくなっているうえ、津波や降灰などの被害がでており、国内の各種インフラも寸断されているようです。一日も早い復旧をお祈りいたします。
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/