Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
森林火災の被災地が100年に一度の大洪水に... ~豪南東部で記録的豪雨
オーストラリア南東部は記録的な豪雨に見舞われ、各地で洪水が発生。クイーンズランド州南東部からニューサウスウェールズ州南東部にかけて、数千キロに及ぶ広範囲で甚大な被害をもたらしている。
各地で道路が冠水または土砂崩れなどで寸断され、数百の学校が休校となっており、連邦政府は、最も被害がでているニューサウスウェールズ州の18の地方自治体に対して、災害復旧救援金など、被災者への支援を発表した。(参照)
ただ、最悪なことに、今回の洪水被害が深刻な地区は、2019-2020年夏の大規模森林火災で被災した地区とほぼ同じとなってしまっており、火事の次は洪水と、次々と襲いかかる自然災害に、同じ人たちが見舞われる事態となっている...
森林火災で被災した地区とほぼ同じ地区が洪水被害に...
100年に一度という大規模な洪水が発生しているニューサウスウェールズ州ミッドノースコースト(中北部)地区では、3月22日現在、約1.5万人が避難し、約3,000人が家を失ったという。(参照)
なかでも、ミッドノースコーストの中心ともいえる「ポートマッコーリー」は、豪雨によって町へ流れ込むヘイスティング川が氾濫。町の広範囲が浸水してしまった。
Drone footage shows extensive flooding in Port Macquarie, New South Wales, as parts of Australia have faced relentless downpours and devastating flash floods. https://t.co/qxbsgrbgSE pic.twitter.com/ol2TmzVx9f
-- ABC News (@ABC) March 21, 2021
「ポートマッコーリー」と聞いて、1年前の大規模森林火災を思い出した人もいるのではないだろうか?
オーストラリアの森林火災の深刻さが一気に世界へと広まるきっかけとなった、『火の海から救出されるコアラの映像』が撮影されたのは、まさにこのポートマッコーリー周辺。救出されたあのコアラは、ポートマッコーリーの中心部にあるコアラ病院へと運ばれた。
(残念ながら、救出されたこのコアラは、火傷が酷く、回復の見込みが立たなかったため、安楽死となってしまったのだけれど...)
Out of control bushfire at Port Macquarie blankets Sydney in smoke haze https://t.co/A8IiQjPfeD
-- Guardian Australia (@GuardianAus) October 29, 2019
Just gone 3pm here in Port Macquarie. Locals say they've never seen it so bad so early and are fearing the bushfire summer ahead @9NewsAUS @Ninecomau pic.twitter.com/HuAc4ti4q2
-- Marc Dodd (@marcdodd) November 8, 2019
また、ポートマッコーリーの南、約70kmに位置するハリントンでは、森林火災でほとんどすべてを失った人が、今度は洪水から家を守るために必死の作業に追われているという報道もあり、本当に胸が痛む...
わずか16ヶ月前に火の海となった町が、今度は洪水被害、、、
-- Miki Hirano (@mikihirano) March 22, 2021
Homes, businesses hit by fires and COVID now under threat of flooding https://t.co/dqKMspK6ie
このように、森林火災で大きな被害を受けた地区とほぼ同じ地区が、今度は大洪水に見舞われるという悲惨な状況となってしまった...
シドニー西部でも大規模な避難
シドニーでも先週から続く雨で、南西部にあるダムが貯水限界を超え、放水が始まり、各地で川が氾濫するなど、50~60年に一度という洪水が発生。約4,000人が避難を強いられている。(参照)
また、シドニーの西に位置するブルーマウンテンズ北側エリアへと続く「ベルズ・ライン・オブ・ロード」は、森林火災当時、火の手が回って、長い間通行止めとなっていた主要道路だが、今回の豪雨で大規模な土砂崩れが発生し、再び通行止めとなっているうえ、復旧に時間がかかりそうだという。
本当に同じ場所ばかりが被災し、悲しくやるせない気持ちでいっぱいだ...
BELL TO MOUNT TOMAH: Bells Line of Road is closed in both directions btwn Darling Causeway & Rainbow Ravine Dr due to a landslide. Avoid the area. You can use the Great Western Hwy as an alternative route.
-- Live Traffic Sydney (@LiveTrafficSyd) March 22, 2021
エル・ニーニョとラ・ニーニャという2大気象現象の影響
今回の大洪水を発生させている記録的豪雨は、ラ・ニーニャ現象による影響だという。
昨年9月、豪気象庁は、2020-2021年の春夏はラ・ニーニャ現象により、雨が多くなるとの予想を発表。それまで数年に及ぶエル・ニーニョ現象の影響で、雨が降らず深刻な干ばつが続き、大規模な森林火災へと発展した前年度とは打って変わって、春先から降雨を伴う嵐が多くなっていた。(参照)
このラ・ニーニャ現象の影響による多雨傾向は、秋口になっても続くと予想されていたが、今回は、広範囲にわたって被害がでるほどの記録的な豪雨をもたらしたといえる。
雨は、今週いっぱい降り続く予報がでており、また、シドニー近郊のダムの放水は今後1週間は続くとみられ、豪気象庁とニューサウスウェールズ州政府は、引き続き、警戒を呼び掛けている。シドニー在住の筆者にとっても、しばらく気の抜けない状況が続きそうだ。
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/