NYで生きる!ワーキングマザーの視点
バレリーナ小平紘子が元シルク・ドゥ・ソレイユのディレクター作のショーに出演
2024年の11月から2カ月間、NYを活動拠点とするバレリーナ小平紘子さんが、フロリダのホテルでCirque:The Spirit of Christmasの公演に出演しました。
同ショーは、かつてシルク・ドゥ・ソレイユに関わり成功を収めたディレクター、デービッド・ブラカモンテが新たに立ち上げたプロジェクトです。ブロードウェイ風の新しいサーカス・スタイルのショーを創り上げました。
マリオット系列の高級ホテル「ゲイロード」の3つの拠点コロラド、ワシントンD.C.、そしてフロリダ州オーランドで行われ、各地で高い評価を得ています。
このショーの特徴は、サーカスならではのエキサイティングな演技と、クラウンも出演するコミカルな内容です。特に今回、バレエをショーに取り入れたのは初めての試みであり、その挑戦が新たな魅力を生み出しています。
小平さんの演技は、まるでオルゴールを開けたときにクルクルと回転するバレリーナのよう。子供のころは、この美しく可憐なバレリーナになりたいと誰もが憧れたはず。
クリスマスシーズンだったこともあり、ファミリー層を中心に多くの観客が訪れ、テンペティーノ(クラウンのようなパフォーマー)や、エアリアル(空中で演技をする)ダンサーが高い位置に吊られてパフォーマンスしている下で、バレリーナのダンスを披露するところが見どころとなりました。
中庭に設置された豪華なステージで、多国籍のキャストが織りなすパフォーマンスは、たちまち話題となり、人気のショーとなりました。小平さんが、この役を得たきっかけは、オンラインのオーディションだったといいます。
フリースタイルのビデオを送った後、指定された音源に合わせたダンスビデオを送り、厳しい審査を見事突破。バレエの技術力を認められました。その結果、フロリダ州オーランドで行われるショーへ出演する機会を得ました。彼女は新たなステージでさらなる挑戦を続けています。
Hiroe: 公演はどのくらいの時間帯で行われたのですか?小平さんの役柄は?
小平: 1日2〜3回公演で、30分間のショーを1時、6時半、8時に行うスケジュールでした。私はバレリーナの役でしたが、普段やっているバレエのステージとは少し違って、回転やジャンプといったバレエの技術を特に活かしたパフォーマンスが求められました。
Hiroe: サーカスならではの新しい経験はありましたか?
小平: はい、サーカス特有の身体の使い方やウォームアップのルーティーンが新鮮でした。バレエでは毎日スタジオでレッスンを行いますが、ほかのメンバーは、ジムでのトレーニングが多かったです。
バレリーナを加えたのが初回だったためバレエのレッスンができる場所を確保できていなくて、レッスンするために、公演前のステージを使えるようスタッフに頼んでホテル側へ交渉してもらいました。バレエは床が重要なので、トウシューズが滑らない場所を確保するのに苦労しました。
Hiroe: 公演中の生活はどのようなものでしたか?
小平: 待遇はとても良かったです。宿泊費や食事代は無料で、さらに渡航費も支給されました。社員食堂で食事を取ることもできました。ただ、週に1日だけの休みだったので、体力的にはハードでした。ショーの合間や休みの日には、仲間たちとディズニーランドに行くなど楽しい時間を過ごしました。
Hiroe: 他のキャストとの交流はありましたか?
小平: はい、多国籍のキャストが集まっていて、アメリカはもちろん、ヨーロッパの方もいて、私はNY在住ですが、日本人ですし、オランダ、ウクライナなど様々な国の人がいました。
サーカスのキャストには若い人も多く、19歳や20歳の人がいる一方で、ディズニーで20年以上パフォーマーとして働いて引退後にこの仕事をしている人もいました。普段はシルクドソレイユに出演しているパフォーマーも、休暇中でこちらのショーに出ている方もいました。皆さんと仲良くなれて、とても楽しい経験でした。
Hiroe: 他のバレリーナやキャストとの違いを感じましたか?
小平: バレエの振り付けやキャラクターは、キャストごとに少しずつ異なっていました。私の知り合い(バレリーナ)はワシントンの公演に出演していましたが、背も高いからか、お姉さんのようなキャラクターでした。
私は最初にもお話しましたが、 バレエのステージでは派手なステップを普段あまり多くはやらないのですが、このショーではテクニックを求められました。回転とか、大きいジャンプといった技術力をみせるキャラクターでした。振り付けもキャストに合わせて変わるので、それがまた面白かったです。
Hiroe:元来、小平さんに回転やジャンプの技術力があるから、それを求められたのでしょうね。公演中に大変だったことはありますか?
小平: 1日3回の公演が続くスケジュールは体力的に厳しかったです。特に回転技が多かったので、左足がパンパンになることもありました。また、キャストの間で風邪が流行ると、非番の日にもう一人のパフォーマーの代わりに出演することもありました。
そういう場合は欠席した人が別の回でカバーするので不満はありませんでしたが、やはり体力勝負でしたね。2カ月間ほどでしたが、トータルで60回近く演じているので。
Hiroe: バレエダンサーとしての経験はどのように活かされましたか?
小平: バレエで培ったテクニックや表現力は、サーカスのパフォーマンスでも大きな強みになりました。特に回転やジャンプといった動きは観客にも好評で、ショーの中で重要な見せ場となりました。こうした派手なパフォーマンスにも挑戦できたことは、表現の幅を広げる良い経験になりました。
Hiroe: 今後の目標について教えてください。
小平: 今回の経験は非常に楽しく、新しい挑戦が自分を成長させると実感しました。また機会があれば、ぜひサーカスの舞台に挑戦してみたいと思っています。
Hiroe: 最後に、今回の経験を一言で振り返ると?
小平: とても濃密で楽しい時間でした。ショーの数も多く、キャストと一緒に過ごす時間も充実していました。観客の反応や仲間との交流を通して、また新しい自分を発見できた気がします。
小平紘子さんは、バレエとサーカスという異なる分野を見事に融合させ、観客を魅了するパフォーマンスを披露しました。彼女の挑戦は、さらなる飛躍を予感させるものでした。
【プロフィール】
小平紘子(こだいらひろこ)広島出身、茨城育ち。6歳からバレエを始め、東京シティバレエ団付属ジュニアスクールを経て国内のバレエ団やプロジェクトの公演に参加後、海外に拠点を移しカナダ、ドイツ、クロアチアなどで研鑽を積む。ニューヨークのオーディションに参加後、Steps on Broadway IISPで学生をしながら市内や他州のバレエ団やプロジェクトでプリンシパル/ソロイストとして踊る。現在フリーランス、国内でも自主公演やワークショップなど開催、先日までフロリダのGayload Palm Resortにてサーカスカンパニーと2ヶ月間のパフォーマンスを行う。
著者プロフィール
- ベイリー弘恵
NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。
NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com