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NYで生きる!ワーキングマザーの視点

ベイリー弘恵|アメリカ

NYを中心にジャズピアニストとして活動25年となる百々徹の新たなる挑戦!

©Toru Dodo

ジャズピアニスト百々徹(どどとおる)は、米国バークリー音楽大学をでて98年にニューヨークへ行くことを決めた。これまで長くメインのジャズプレーヤーやボーカルを支える演奏を続けてきた。パンデミックを境に、自分の演奏を見直す機会があったのだという。

「98年ごろは、とりあえず毎晩のように色々なジャムセッションに参加しました。ミュージシャンたちが集まっているところで、さまざまな人々とつながることができたのです。そこから、自分のバンドで演奏してくれないかというオファーも増えてきました。次第に自分の名前が広まっていきました。」

ミュージシャンとしてアメリカ永住権を獲得されたのですか?

「そうです。最初はアーティストビザを取得しました。その後、アーティストのグリーンカードの枠があり、それを利用することができました。」

演奏活動だけで生活できているというのはプロフェッショナルですね。

「2004年にSOMIというシンガーとの出会いが大きかったです。当時まだ彼女は、それほど知名度がありませんでしたが、彼女のバンドと共に世界ツアーを行うようになり、2年前にグラミー賞にもノミネートされました。またパンデミック前までSleep No Moreというオフ・ブロード・ウェイ・ショーのレギュラーバンドで長年演奏していました。パンデミック後はその演奏活動がなくなったので、Somiのツアーがない時は、新たなドアが開くチャンスを待っています。」

日本での演奏活動はしないのですか?新たなる楽曲のリリースは、しないのでしょうか?

「以前は定期的に日本でツアー活動したこともありましたがこの6、7年帰国していません。最後のリリースは約10年前です。年齢的にも時間が迫ってきてるって感じなので、何か新しい作品を作ろうとは目論んでいます。」

今回のライヴは、どういう内容なのでしょうか?スタンダードなジャズを演奏するのですか?

「主にジャズスタンダード曲をソロピアノで演奏します。数曲、ゲストでAlicia Olatujaさんという歌手に歌っていただきます。彼女とは2007年ごろに、Somiのレコーディングセッションで知り合いました。それ以来彼女のバンドでも演奏をしています。」

ジャズプレーヤーとして、ご自身の強みのようなものはありますか?

「これまで音楽だけで生き抜いてこれたのは、多くの人々から声をかけてもらえて、演奏のチャンスを得ることができたからです。誰かのために演奏しているときの方が、自分は輝ける感じがあります。今回のライヴのように自分が主役となり、お客さんのために演奏するのは、新たなチャレンジであり、これまでと違ったゲームに挑むような感覚です。」

ジャズはリンカーンセンターやカーネギーホールといったニューヨークの中心的な劇場でも演奏されるようになってきていますが、クラシック音楽のようなメインストリームになったっていえますか?今になってジャズ好きが増えてたりしているのでしょうか?

「今でもジャズは少数派の音楽として位置づけられているように感じます。まるで小さな村で活動しているような気がします。ジャズ好きがたくさんいるのかという回答については、難しいですね。何をもって"メジャー"とするかは個人の判断によるものですし。」

私がやっているSNSに、坂本龍一さんが亡くなられたにも関わらず、バーチャルでニューヨークにてThe Shed上映中のライヴ情報が飛び込んできたのですが。百々さんはバーチャルで演奏を行ったりしないのですか?

「パンデミックの時に、バーチャル空間でのライブストリーミングを通じて、ピアノ演奏やNYに住む日本人の方へのインタビューを行いました。具体的には、Twitchなどのプラットフォームを利用しました。」

HeadshotMariona.JPG
©Toru Dodo

お話していて、とても控えめな印象を受けるのですが、ご自身でメディアを通じて売り込みをされないのですか?

「若いころには出ようとしていたこともあるのですが、年齢を重ねてくると、自分の居場所はここにいたほうがいいみたいな。だんだん見えてくる感じってありますよね。

パンデミックによって活動が一時停止し、自分自身を振り返る時間ができたことはよかったです。その中で、自分の演奏の欠点や改善点に気付くことができました。若いころには、他の人からアドバイスや指摘があったものの、年を重ねるとそれが減ってしまい、間違ったままの演奏を続けてしまうこともあります。しかし、自分の演奏の欠点に向き合い修正することで、再びピアノを弾く楽しみが生まれてきました。」

これほど長くプロとしてキャリアを積んでいらっしゃったわけですが、ここからまた練習という真面目さがスゴイですね。

「ジャズを演奏する人たちというのは、研究熱心な音楽愛好家が多いようです。以前は自分よりも年上の方と演奏することが多かったのですが、今は自分が一番上になる機会が増えました。それは仕方のないことですが、少しショックを受けました。しかし、自分自身の世界を築くためには、これからも前に進んでいくしかないと感じています。もちろん若い人から声をかけていただくことは、うれしいです。」

7月にはSomiさんのヨーロッパツアーにも行かれるそうですが、どういうメンバーとツアーに行かれているのでしょうか。

「Somiのレギュラーバンドのピアノ、ギター、ドラム、ベースに今回はサックスフォンも加わる予定です。イタリアのアンブリアジャズフェスティバルをはじめ、オランダ、デンマーク、ベルギーのジャズフェスティバルで演奏します。

ハービー・ハンコック※2のフェスティバルの前座として演奏する日もあり、個人的にとても楽しみにしています。」

ライブ以外の暮らしはどんな感じなのですか?

「練習は非常に重要であり、ピアノを含むどの楽器においても大切です。このショーに向けては、めずらしく毎日約2時間の練習を行ってきました。また、最近では重さを変えることのできるダンベルを買ったこともあって、筋力トレーニングにもハマっており、ダンベルを使用したトレーニングを行っています。筋トレにはまったきっかけは、ツアー先のホテルにジムがあることが多く、バンドメンバーもジムに行くことから刺激を受けました。娘(11歳)の父親業も細々と続けています(笑)。」

今後はどのような活動を続けていかれますか?

「将来の目標としては、ピアノの腕前をさらに向上させることです。今はまだ自分の演奏の欠点を修正することに精一杯ですが、それを克服した後はさらなる向上を期待しています。探求心は尽きないです。自分と音の合う相手をみつけ、自分らしさを大切にしていけるとよいですね」

最後に、今回のニューヨークでのライヴについて一言お願いします。

「今回のライヴ会場は歴史あるピアノ屋さんです。ここで毎月テーマを決めたコンサートシリーズが行われているのですが、今月はニューヨークに住む日本人ピアニストを特集しています。今回演奏するのは、世界にまだ140台ほどしか出回っていない、 1台完成するまで3年くらいかけるというファツィオリ・ピアノフォルティ※1というイタリア製のピアノです。そのピアノで演奏できることも楽しみの一つです。」

※1ファツィオリ・ピアノフォルティ・・・ピアノ職人パオロ・ファツィオリによって、1981年にイタリアのサッキャレンゴで設立されました。同社は、世界で最も高品質なピアノの一つとして知られています。

※2ハービー・ハンコック・・・アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ出身のジャズ・ピアニスト、作曲家、編曲家、プロデューサー。 1960年代以降から現在において、ジャズ・シーンをリードするジャズの第一人者であり、ストレートアヘッド・ジャズ、フュージョン、ジャズ・ファンクなど多彩なジャズ・スタイルの最先端を走っている。

【プロフィール】
百々徹(どどとおる)
ピアニスト/作曲家/編集家。1972年東京生まれ。4歳よりピアノを始め、明治大学時代にジャズに目覚める。卒業後、ボストンのバークリー音楽院に留学し、主席卒業後1998年以来NYを拠点に音楽活動を行っている。ケニー・ギャレット、ベニー・ゴルソン、カーティス・フラー、日野皓正等と共演歴がある。現在、ネオソウルSOMIやスティーリー・ダンでも活躍するCarolyn Leonhartのグループのピアニストとして、日本、アメリカ合衆国をはじめ、カナダ、アフリカ、南米での音楽祭に出演するなど、東奔西走中。百々徹トリオとしては、これまでJazz Cityレーベルより3枚のCDを発表(HMV&BOOKS onlineより引用)

【関連リンク】
Toru Dodoオフィシャルウェブサイト
●インスタグラム @torudodopiano @finding_dodo

NYライヴTicket購入リンク(画像をクリック)
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Profile

著者プロフィール
ベイリー弘恵

NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。

NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com

ブログ:NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

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