NYで生きる!ワーキングマザーの視点
文化庁の新進芸術家海外研修制度にてNYで舞台を学ぶミュージカル女優、高野菜々
「ニューヨークへ今回は舞台の勉強をしにきました」と、高野菜々(こうのなな)はキラキラした瞳を輝かせながら語る。文化庁の新進芸術家海外研修制度という海外で実践的な研修に従事する機会を与えてもらえるプログラムで1年間ニューヨークへやってきた。
過去には、森下洋子(舞踊)や鴻上尚史(演劇)といった名だたる著名人が研修者として派遣されている。
「例年300人以上の人が受けた中から数十名が選ばれて、それぞれの国へ行くのですが、演劇の部門では2人だけなんです」
競争率の高い中から、ニューヨークで演劇を学べるチャンスを得たほどのミュージカル女優さんなのだから、てっきり毎日のように、誰かから食事をご馳走してもらってるのかと勝手に思い込んでいた。ところが、ちゃんと自炊をして暮らしているらしい。
まったく生活感を感じさせないのも、夢を売る華やかな世界に生きるミュージカル女優がもつ輝きなのだろうか。
「最初にニューヨークに来たのは、2010年でした。2月に6日間だけ、観光で来たんですが、寒いし、街にはごみが落ちていて汚いし、まったくいい印象を持てなくて、二度と来るもんかって思っていました。アメリカへ来たのも初めてでしたし、英語もできなくて、ブロードウェイの舞台を観ても何がいいのかわかりませんでした。きっとカルチャーショックだったのかもしれません」
ミュージカルのプロとして2008年から舞台へ立つようになり、その後、長いスランプが続いていたという。2010年は、まだそのスランプの真っただ中だったのだろう。
「2018年には、とうとう舞台にかける思いの炎が消えてしまって、あんなに嫌いだったはずのニューヨークへ逃げるようにやってきました。そして今度は2ヵ月観光ではなく、住んで暮らしてみて、この街が大好きになったんです」
ニューヨークの街は、暮らしてみないと、わからない世界がある。きっと高野は、それを知ることができたのでは?
「日本では、高野菜々という人は、こうしなければならないとか、こういう人であるべきというという、他の人から評価される自分を舞台を降りてからも演じていたんです。
言葉一つでも、これを言ったら正解、これを言ったら間違ってるっていう感じで、自分ではない高野菜々をつくりあげていました。
ところがニューヨークへ来てからは、自分の心からわきあがる楽しさを知ることができて、自分の心の声を聞くことができたんです。どんな人間に対しても、なんでもOKだよって周りの人たちが思っているような環境からか、自分に対しても、ありのままでOKだよって言われてる感覚があるからでしょうか?自然体になることができたんです。
もう少しかみ砕いていえば、日本にいるときは人生に対して常に評価をされると感じてしまっていて、インタビューや取材でも常に正解を答えようとしていました。ニューヨークでは、気負いでいっぱいの肩の荷をおろしているって感覚です」
日本では、女優として周囲から常に注目され続けているだろうから、まだニューヨークには自由な空間が残されていたのだろう。 だが自由ばかりではなく、もちろん厳しさも学んだという。
「2018年に2ヶ月ニューヨークに滞在した時に、世界各国から来ているアーティストの人たちと話をする機会があって。それぞれが演じた代表作やオリジナル作品の話をしてたのですが、私はオリジナルのミュージカルを創るカンパニーに所属しているにも関わらず、初演される作品ではなく、再演されるものに多く出演していたこともあり、オリジナルを演じた代表作がないって気づいてしまったんです。
人の真似が元々得意でしたし、私が演じたのは以前に別の方が演じられた役でしたから、結局舞台を10年やってきて、私ってなんだったのだろう?って、寂しくて、悔しくて、それをニューヨークで感じました。
そんな中で、『ニューヨークを舞台の息抜きとしての逃げ場に使ってるんじゃないわよ、みんな勝負しに来てるんだから、そういう甘いことをいうのなら日本へ帰って』と、ニューヨーク在住のアーティストの方に言われました」
これほどキツイ言葉をバネにできるとは、カワイイ見た目とは違って、負けず嫌いなのだろうか?広島出身の根性ありそうな強い気質が、見え隠れしてきた。
「こう言ってもらったのは、神様からギフトをもらったって感覚でした。そこからスイッチが入ったように、日本へ帰って舞台で勝負しよう!って気になったんでしょうね。アガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』を世界で初めてミュージカル化した『SUNDAY(サンデイ)』の初演オリジナルキャストの主役ジョーン役を演じて、演劇部門で新人賞を受賞しました。」(2020年 - 第75回文化庁芸術祭演劇部門新人賞)
続きは、後編にて2月にアップの予定です
【プロフィール】
高野 菜々(こうの なな)
広島県出身。血液型A型。広島音楽高校を経て、2008年6月から音楽座ミュージカルに参加。初舞台で主役に抜擢、圧倒的な歌唱力と大胆な演技が注目され、以降、常に主要な役柄をつとめてきた。声優では賢プロダクションに所属、『タンブルリーフ』フィグ役(主役)、『妖怪ウォッチ2』フミアキ役、ディズニー・チャンネル『パグ・パグ・アドベンチャー』ビンゴ役(主役)など活躍している。TOKYO FM、広島FM『Dream Theater』で3年間ラジオパーソナリティをつとめた後、広島FMにて『THEATER NANA』のパーソナリティをつとめた。2020年、「SUNDAY(サンデイ)」における演技で「令和2年度(第75回)文化庁芸術祭賞(演劇部門 新人賞)」受賞。
☆☆☆
■高野菜々コンサート in NEW YORK「Brilliant」
会場:Don't Tell Mama(343 W 46th St, New York, NY 10036)
日時:2023年2月17日(金)
Doors open 6:15/Show starts 7:00
出演:高野菜々/演奏:福岡保彦/ゲスト:寺久保エレナ
カバーチャージ:全席自由15ドル(20ドルミニマム(2ドリンク含む)・CASHのみ)
お申込み:https://www.donttellmamanyc.com/shows/7231-nana-kono-brilliant-2-17-23
主催:ヒューマンデザイン・SAMADHI USA, INC.
お問合せ:
【日本】音楽座ミュージカル
+81 3-3222-1177/info@ongakuza-musical.com(日本時間 月~土12pm~6pm・日祝休)
【ニューヨーク】SAMADHI USA, INC.(担当:今村)imamuramasayoshi@gmail.com
■高野菜々コンサート in NY「ブリリアント」配信
★特典映像付きアーカイブ配信
MIRAIL(ミレール)https://mirail.video/publisher-title/525
料金:3,300円(税込)
特典映像:"NANAのNYダイアリー"
配信期間:2023年3月12日(日)15:00〜3月26日(日)23:59
※配信開始時刻よりご購入いただけます
詳しくはこちらリンク
【関連リンク】
■音楽座ミュージカルについて Webサイト:
1987年の旗揚げから現在に至るまで、一貫したテーマで日本のオリジナルミュージカルを創り続けています。それぞれの作品は「生きる」ことの根源を問いかける精神性とオリジナリティを高く評価され、文化庁芸術祭賞、紀伊國屋演劇賞、読売演劇大賞など多くの演劇賞を受賞しています。
著者プロフィール
- ベイリー弘恵
NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。
NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com