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ベイリー弘恵|アメリカ

NYにも豪雨!おかしな気候が日常化?イエール大学、地球物理学者の唐戸俊一郎教授に問う

©iStock イメージ画像です

ニューヨークで9月のはじめ、ハリケーン・アイダにより豪雨が襲った。マンハッタンでは豪雨がやってくる日の夜から、グランドセントラル駅でも北側のドアが早い時間に閉鎖されたりしていたものの、誰にも予知できないほどの激しい雨だった。ニューヨーク市の半地下のアパートに住んでいる家族が逃げおくれ、小さな子供を含む家族が死亡したというニュースが流れたり。ある地域では、車が水没するくらいの雨量になっているところがあった。

豪雨の次の朝に起きてみると、マンハッタンから電車で30分ほどの郊外にある我が家も地下が水びたしになっていた。地下におりると足首くらいまで、水につかるほどだった。慌てて感電をふせぐために、電気のコードをすべてぬいた。ニューヨーク州のホークル知事のよると、セントラルパークでは1日、1時間に78ミリの記録的雨量を観測したという。

こうした状況から、私もこのまま地球の温暖化が進めば、水没する地域も出てくるのではないのか?と勝手に想像をめぐらせた。なんといっても、SF作家である小松左京さんの描いた「日本沈没」で育った世代である。今また俳優の小栗旬さん主演で「日本沈没」がドラマ化されている。こちらの話は、プレートテクトニクス理論により、岩盤が移動するために起こるとされている地殻変動についてのお話。

お話をうかがった地球物理学者のイエール大学教授の唐戸俊一郎氏は、気候については専門分野ではないそうで、むしろ「日本沈没」について語っていただくべきなのだが・・・。今回は記事のテーマが「おかしな気候が日常化している?」のため、まずは「地球は温暖化によって水没するのか?」という気候変動の問題について問うこととなった。

以前、唐戸教授に取材をさせていただいたことがあるのだが、地球の水に関しては、世界で一番知っている研究者であり、20年以上もの間、水の研究を続けられ。地球の内部には、実際に見えている海の水量よりもずっと多くの水があることをつきとめている。

──南極の氷が温暖化によって溶けて、水没する地域が出てくるのではないか?と危惧されてますが?

「氷が溶けて海水量が増加し、陸地の一部が水没する現象は過去にも何度か起こっています。もっとも最近の氷河期が終わったあとの数千年間に海面は平均で100メートル以上も上昇しました。日本で縄文海進(じょうもんかいしん)※1と呼ばれているものはその一つです。このころには海岸線がかなり内陸の方へ移動していました。地球の温度が変化し、氷河が溶けたり、成長したりするのは地球軌道の変化や太陽の活動度の変化という自然現象が元になっておこることで、その原因もある程度わかっています。

このような自然現象が原因で過去には気温が数度以上変動しています。たとえば1860年ごろから気温はゆっくりと上昇を続けています。これは工業化のずっと前で、人間活動で生み出された二酸化炭素が原因ではありません。自然現象が原因で気温が変化し、その結果として海面の上昇(や下降)はよくあることで何も慌てることはないと思います。

縄文海進関東平野では6500~5500年前,大阪平野では5000~4000年前などで,その頂面高度は現海面上0~5メートルであるとされている。東京湾の海面は現在より3 メートルも高くなり,50キロ・メートルも北まで海が浸入したことがあったという)という自然現象があったように、1万年から1億年という歴史を学べば明らかなのですが。1メートルくらいの海面水位が上がることは、大したことではありません。

──では、温室効果ガスの一部である二酸化炭素が増えることによって地球の温度が上がるという点についてはいかがですか?

「二酸化炭素が増えればその温室効果への影響が変化し、気温が上がることが考えられます。このことは今年ノーベル賞を受賞された真鍋さんが最初に指摘しました。しかし、二酸化炭素の量の変化と気候との関係、とくに人間の活動が気候にどれほどの影響を与えているかについては不明の部分が多くあります。いろいろのフィードバックがあり、その詳細がよくわかっていないのです。

たとえば二酸化炭素の量が増えると気温は上がりますが、一方で(何かの原因で)気温が上がると、大気中の二酸化炭素の量がふえます。それは、気温が上がれば水への二酸化炭素の溶解度が現象し、海水から二酸化炭素が大気に加わるからです。

数百年から数千年の時間での記録をみると、気温が先に上がり、少し遅れて二酸化炭素の量が増えていることがわかります。ですから、この場合は二酸化炭素の量が増えることが気温の上昇の原因ではなく、気温の上昇が二酸化炭素の量の増加の原因なのです。そして、この場合の気温の変化の原因は、二酸化炭素の量ではなく地球の軌道の変化や太陽の活動度など他の自然現象の変化によるものと考えられます。

人類にとっての最大の危機は、貧困です。今でも食糧不足の国はたくさんあります。むしろ二酸化炭素というのは、ご存知のように植物が育つために必要な要素です。この観点からは、二酸化炭素が増えることはいいことで、実際に緑は増えてきています。サハラ砂漠も緑に覆われるのでは?といわれてます」

──森林伐採など、人間のやりたい放題だから、砂漠化が進んでいってるのだとばかり思っていました。勉強不足でした。それとは、まったく逆なんですね。

取材の後で知ったのだが、2016年に発表されているNASAが地球を撮影したカメラでも、地球が以前にも増して緑に覆われていることを証明している。二酸化炭素と地球の気温上昇により、植物が育ちやすい環境になっているのだという。https://www.nasa.gov/feature/goddard/2016/carbon-dioxide-fertilization-greening-earth

「このような考えはアメリカの物理学者のサイツ氏やダイソン氏、また日本では物理学者の深井有氏、赤祖父俊一氏なども表明しています。彼らの議論の骨子は、気候変動は多くの場合、自然現象が原因として起こることが長期的な観測の結果からわかること、ただし、気候変動のメカニズムの詳細には不明の点が多いこと、そのため、最近の大規模数値計算による報告には不確かさが多いが、不確かさについての配慮が十分にされていないことです。地質学的観点から、気候変動の多くが自然現象を原因として起こることは地質学者の丸山茂徳氏も強調しています。私も彼らの発言から多くを学びました。」

筆者が検索で見つけた深井有氏が発表している統計https://www.city.hidaka.lg.jp/material/files/group/29/201803283.pdf

緑化の中でも怖いのは、繁殖するにしても、外来種のナガエツルノゲイトウという草が日本の河川を覆うことかもしれない。おいしい日本のお米に被害が及ぶのは悲しい。https://www.yomiuri.co.jp/science/20210413-OYT1T50080/

──ではガソリン車が出している二酸化炭素、エネルギー問題に関しては、どのようにお考えですか?

「クリーンエネルギー化には、私は100%賛成です。ガソリンの車は数年でなくなるでしょう。石炭や石油、オイルは限られているから、なくなることは確実です。限られている資源を燃やすわけにはいかないし、ストップすべきです。結果として、炭酸ガスは多少は減るので、気候変動に関しては助けになるでしょう」

後編では、カリフォルニア州などでは干ばつが問題になっているのだが、果たして水がなくなるという危機は起きるのか?というお話をうかがう。

karato1.png【プロフィール】
からとしゅんいちろう
1949年、福岡生まれ。1977年東京大学博士号過程修了、理学博士。専門は、地球惑星内部物理学。77年から89年まで、東京大学海洋研究所の助手。81年から3年間オーストラリア国立大学研究員、89年から2001年までミネソタ大学の準教授、教授を歴任。2001年からイエール大学教授として、研究を続けている。99年、日本学士院賞、95年フンボルト賞(ドイツ)、06年ベニング・マイネス賞(オランダ)、14年、ラヴ・メダル(ヨーロッパ地球科学会)、16年、レーマンメダル(アメリカ地球物理学会)を受賞、20年、アメリカ芸術科学アカデミー会員へ選出。


※1 縄文海進(じょうもんかいしん)は、地質学的には完新世海進、後氷期海進(Holocene glacial retreat)を指し、最終氷期の最寒冷期後(19,000年前)から始まった温暖化にともなう海水面の上昇を指す。日本では縄文時代の始まり(16,000年前)に近い。海水面上昇は約120メートルにおよび(年速1 - 2センチメートル)、ピーク時である約6,500年 - 約6,000年前まで上昇が続いた。ピーク時の気候は現在より温暖・湿潤で平均気温が1 - 2℃高かった。この海面上昇は、沖積層の堆積より速かったので、河川によって最終氷期に海岸から奥深くまで侵食された河谷には海が入り込んだ。

 

Profile

著者プロフィール
ベイリー弘恵

NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。

NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com

ブログ:NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

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