NYで生きる!ワーキングマザーの視点
新型コロナウイルスがパラサイトって?NYU山野教授に聞く!
現在2021年7月の時点で、ニューヨーク州では55%以上の人が新型コロナウイルスワクチン接種を終えたことにより、さまざまな規制が解除されてきている。例えば、学校の卒業式では出席者全員がマスクをつけないで参加しているところも多い。
ただし、ワクチン接種を終えてない人が卒業式に参加する場合は、ウイルス検査陰性証明を事前に提出が必須とのことだった。果たして、ワクチン接種をすればウイルスに感染しないと言えるのか?これこそが、私の疑問である。
私は、ワクチンは単にウイルスに感染したときの抵抗力をつけるだけのもので、感染予防ではないと思っている。例えば、インフルエンザの予防接種を受けたとしても、インフルエンザにかかる人は沢山いる。
このウイルス感染やワクチンに関する基本的な疑問について、前回のインタビューに引き続き、大学院時代に自己免疫とウイルスの関与についての研究で医学博士を取得されて、現在ニューヨーク大学で遺伝子治療の研究を行っている山野教授にお話を伺うことにした。
──新型コロナウイルスウイルスについて分かりやすく説明していただけますか?
「そうですね、新型コロナウイルスの話をする前に、まずウイルスとその感染についてお話します。それらが理解できると、何に気をつけて生活すればいいのか分かってきます。例えると、映画に出てくるような吸血鬼が存在するとして、彼らは太陽の光を浴びると死んでしまうので日中は外に出てこないと知っているだけで、昼間は怖がらずに過ごせますよね?
ウイルスという見えないものに怯え、家から全く出て来ようとしない人もいます。ウイルスやその[感染メカニズム]とそれを防御する生体の[免疫メカニズム]を知ることで、生活する上での注意や準備も変わってきます。
まず、細菌とウイルスの違いをご存知ですか?」
──そんな違いについて考えたことがありませんでした。細菌は、何処にでも人間の周りに常にいるものだというイメージはあります。ウイルスは、感染している誰かに近づかない限りは感染しませんよね?
「細菌とウイルスの決定的な違いは、ウイルスは細菌に比べると非常に小さいというサイズだけではなく(細菌は約0.5~3 µm、ウイルスは約0.01~0.2 µm程度)、細菌は単独で増殖して生きることができますが、ウイルスは単独では増殖して生きることができないのです。ウイルスは何らかの細胞に入り込んで、生きていく必要があります。パラサイト(寄生生物)ですね。
さらに、宿主特異性というある特異の動物のみに感染するという特徴があります。例えば、ヒト免疫不全ウイルス (HIV) やヒト肝炎ウイルス (HBVやHCV) はヒトにしか感染できないウイルスです。
ウイルスは宿主外に出てきたら、すぐに次の宿主に入り込んで標的細胞に感染しないと生存できないので、外にもウイルスがいるかもしれませんが、これらのウイルスは、急速に弱まって感染力も低下します。手を洗ってウイルス感染を予防することが大変重要ですが、長期間外にいるウイルスは感染力が低いため、ほぼ感染しません。
新型コロナウイルスが、72時間生きてたという報告がありましたが、長年組み換えウイルスベクターを扱って研究していた私の見解では、そんな長時間も単独でウイルスが生存することは、とても考え難いです。万が一仮に生きていたとしても、感染する能力はかなり低いでしょうね。
さらにインフルエンザやコロナウイルスなどの呼吸器疾患症状を伴うウイルスは、無症状感染者から他の人に伝染する可能性はほとんどないと言われています。」
──何処にでもウイルスがいるのかと思って、本当に怖かったのですが。ウイルスが単独で生きられないと分かっただけで、手洗いやアルコール消毒をやりすぎてしまうことから開放されますね。
「ほとんどの病気の原因は単一の因子ではなく、多因子によって起こります。同じ家にいて同じものを食べていても、人によってさらに時々によって起こる反応は違います。がんになる人と、ならない人がいたり、同じ人でも風邪を引くこともあるし、引かないこともあります。
それは、入ってきたウイルスの量がまったく同じだったとしても、人それぞれの防御する側に個体差があるからなのです。また、同じ人でも寝不足で体が弱っていたとすれば防御する力も劣るので、その時々によって防御力にも違いが起こります。
がんになるメカニズムも同じで、多因子と多段階を経てがん化します。がんは、遺伝子の変異などにより[がん遺伝子]というがん化関係する遺伝子が過剰に発現してがんになるのですが、生体にはそれを自動的に修復する機構も備わっています。
さらに、それでも制御できない場合は、[がん抑制遺伝子]といってそれらのがん遺伝子をコントロールする遺伝子が働きます。つまり、飛行機でいう第一エンジンが壊れても、第二エンジン...と、次々に防御機構が働くようなものです。後述しますが、免疫にもそのように多種類の多段階的防御機構が存在しています。
ウイルス感染というのは、ウイルスが細胞の中に入って初めて感染という定義になります。単に体の中に入っただけは、感染ではありません。免疫という防御機構が、外界と常に曝されている皮膚や消化器官だけでなく、全身臓器や血中などのいたるところで監視し、働いています。ウイルスは、それらをかいくぐって細胞に入らなくてはいけません。
著者プロフィール
- ベイリー弘恵
NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。
NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com