NYで生きる!ワーキングマザーの視点
自閉症の子供たちがバーニーズでファッションショー?
NYで自閉症の子を育てる〜その1に続く、NYで自閉症のお子さんを育てている日本人ママに取材させていただきました。
ーーアメリカでお子さんを育ててみてよかったことはありましたか?
「アメリカの学校では、スクールバスに乗るときも、どうしても暴れてしまう子たちがいるので、専用バスがあります。シートベルトも安全ベルトのようになっていて、ぜったいに自分でとることができないよう、安全対策がしっかりしています。なにか事故があって転んだら、ドライバーのせいになることもあるので、スクールバス内で怪我をしないよう対策がとられています」
ーー安全面で、そうした細かい配慮があるのは、育てやすいかもしれませんね。では、スピーチ、フィジカル、ABAセラピーといった、すべてのセラピーを受けてみたことで、お子さんに変化はありましたか?
「アメリカでセラピーを受けてよかったと思いました。親の自己満足なのかもしれませんが、日本へもどったときに、セラピーを受けたことのない同じくらいの度合いの子をみたときに、違いを感じます。
私の子供は、本来は人混みが苦手で、特に赤ちゃんの泣き声がダメです。電車に乗っていても、赤ちゃんの泣き声で、子供がパニックになれば、いったんその電車を降りて、次の電車に乗り換えるほどです。
ですが、日本から訪問に来た人たちに言わせると、重い障害者ではなく、いい子にみえるようです。今では、ゴミがあったら拾って捨てることもできますし、拭いてといえば、拭いてお掃除をしてくれます。セラピーを受けると、こういう風にできることがいっぱいあるのだとわかります」
ーー今回の取材で、一番お伺いしたかったアメリカのボランティアについてなのですが。セレブシェフがボランティアに来るというのは?
サンクスギビング(感謝祭)のときに、学校でお料理対決がありましたが、審査員としてボランティアで来てくれたのが、フード・ネットワーク(お料理に特化した番組を流す全米ネットワークのケーブルTV)に出ている有名なシェフだったことがありました。
スポーツの分野では、バスケット、フットボール、ベースボールではヤンキースの選手も来てくれたりします。子供たちへのにサプライズで来てくれるのですが、すべてボランティアです。ミュージカルも、ブロードウェイで実際に演じている人が来て教えてくれたり。アメリカ人のボランティア精神は、スゴイって思います」
ーー一番印象に残っているイベントはなんですか?
「ミッドタウンにあるバーニーズで、ランウェイをするというファッションショーのイベントには、デザイナーさんも来て、子供たちがモデルになって歩きました。観客が、カワイイ〜って声をかけたり、応援してくれるんです。
アメリカでは、障害のあることを個性として認めてくれます。そうした点で、日本だと、障害のあることは、なるべく人前に出さないほうがいいという環境なので、なかなか難しいのかもしれません」
ーーでは、なぜアメリカでは障害のあることを個性として認めてもらえるのでしょうか?
「アメリカの中学や高校では、いい大学に入るためには、成績だけで評価されるのではなく、スポーツやボランティアなどをやることもポイントになります。学生時代から部活動のように、学校が終わってから、今日はボランティアに行くって日があったりします」
ーーつまり、学生時代からボランティアでスペシャルケアの必要な子たちに接することで、それが個性だと思えるようになるってことなのですね。スペシャルケアの必要な人たちは、学校を卒業後、どのように暮らしていくのですか?
「21歳までは、高校に行きます。その後は、大人がいく学校へ行く人もいます。みんなと暮らすグループホームもあって、24時間サービスを受けられるところもあります。お家のある人は、ソーシャルワーカーがついてくれて、お家で過ごす方もいます」
ーーさらに、スペシャルケアの必要な方たちは親族がいなくなった場合、どうやって過ごしているのでしょうか?
「アメリカには、ガーディアンシップ(後見人制度)というものがあります。たとえば、国籍ほしさのための結婚詐欺も多いため、結婚には親のサインが必要なのですが、親が亡くなったあとは、ガーディアンシップで認められた人が、サインを行うことができます。日本には、今の所こうし た制度がないため、結婚詐欺にあう人も多いようです」
ーーアメリカで子育てしてみてよかったことは?
「日本には、恵まれる人が、恵んでくれる人に対して、へりくだるべきっていう変な幻想があるのでは?って思います。そのせいもあって、ケアを受けることを躊躇し、苦しむ人が多い。
アメリカでは、人類が平等であれば、ケアが必要な人を支えていくということは、まったく当たり前のことであり、当たり前に受けられる権利としてケアを受ける。苦しまずとも、周りがいつでも支えてくれるのです」
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著者プロフィール
- ベイリー弘恵
NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。
NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com