コラム

トランプ当選を予測した大学教授が選んだ2020大統領選の勝者は?

2020年08月28日(金)19時00分

8月7日に刊行された「Predicting the Next President 2020 edition」は最終的な決断を出す前に校了したものらしく、結論が載っていない。この時点での教授の判定は次の通りだ(イエスは○、ノーは✕とする)

1.✕:2018年の中間選挙で民主党は下院の過半数を取り戻した。
2.○
3.○
4.○
5.✕:パンデミックで短期的に景気は後退している。
6.? 
7.○
8.?
9.✕:トランプ大統領の弾劾
10.○
11.✕:北朝鮮、イランとの外交の失敗。ロシアが勢力を伸ばすことに対抗していない、など。
12.✕:トランプは熟練したショーマンだが、アピールする集団が以前より小さくなっている。ロナルド・レーガンほど幅広い層に愛されていない。
13.○

この本が出版されたのと同時期に、リクトマンは最終的な予測を出した。それは、現職大統領トランプの敗北である。

✕になったのは、本の中で?だった6と8だ。パンデミックの影響でGDPの成長がネガティブになり、市民の抗議運動が全米に広まった。大統領が市民を鎮圧するために武装した連邦政府の職員を送り込み、社会不安は収まるどころか、エスカレートしている。

本の内容については、出版を急いだことが明らかであり、2016年を分析する章が抜けているのが残念だ。また、2020年の予測部分もシンプルすぎる。だが、このシンプルさは説得力がある。

データを重視するネイト・シルバーは、今でもリクトマン教授の予測方法には懐疑的な様子で、2人はときおりソーシャルメディアで論争している。とはいえ、どちらも現時点では2020年の大統領選挙の結果を同様に予測している。

大統領選挙では最後の最後まで何が起こるかわからないが、シルバーとリクトマンの視点は、どちらも注目に値するのは確かである。


『Prediciting the Next President: The Keys to the White House』
 Allan J Lichtman
 Rowman & Littlefield

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

<関連記事:トランプはもう負けている?共和党大会
<関連記事:トランプの岩盤支持層「白人キリスト教福音派」もトランプ離れ

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、日本人の短期ビザ免除を再開 林官房長官「交流

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報

ビジネス

独総合PMI、11月は2月以来の低水準 サービスが

ビジネス

仏総合PMI、11月は44.8に低下 新規受注が大
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story