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「ポスト真実」の21世紀でヒトはどう進化するのか?
現代ではフェイクニュースが大きな問題となっているがフィクションすべてが悪いというわけではない Carlo Allegri-REUTERS
<『サピエンス全史』の著者ユヴァル・ノア・ハラリの最新刊は、今の世界と人類を考えるきっかけとして意義がある>
『21 Lessons for the 21st Century』は、人類の歴史をコンパクトかつドラマチックに語る歴史書『サピエンス全史(Sapiens: A Brief History of Mankind)』で有名になり、その続編とも言える人類の未来を語る『ホモ・デウス(Homo Deus: A Brief History of Tomorrow)』が大ベストセラーになったユヴァル・ノア・ハラリの第3作である。
21世紀に我々人類が直面する21の問題について語るもので、「The Technological Challenge (技術的な課題)」「The Political Challenge (政治的課題)」「Despair and Hope(絶望と希望)」「Truth(真実)」「Resilience(回復力)」という5つのパートに分かれている。
その5つのパートに分かれた21の章で、ハラリは「Disillusionment(幻滅)」「職(Work)」「自由(Liberty)」「平等(Equality)」「コミュニティ(Community)」「文明(Civilization)」「ナショナリズム(Nationalism)」「宗教(Religion)」「移民(Immigration)」「テロリズム(Terrorism)」「戦争(War)」「謙虚さ(Humility)」「神(God)」「世俗主義(Secularism)」「無知(Ignorance)」「正義(Justice)」「ポスト真実(Post-truth)」「サイエンスフィクション(Science Fiction)」「教育(Education)「意義(Meaning)」「瞑想(Meditation)」という21のテーマについて語っている。
すべての章に博識のハラリらしい面白い歴史的事実や考察が散りばめられているのだが、非常に興味深い章とそれほどでもない章が混在しており、これまでの3冊の中では最もまとまりに欠けている。
この中で、私が特に興味深く読んだのが、現在のアメリカや日本の状況に直接関係ある「ナショナリズム」「無知」「正義」「ポスト真実」の章だった。
「ナショナリズム」には国家主義、国粋主義、愛国主義といった意味がある。ニュアンスによって異なるので、ここでは「ナショナリズム」を使っておく。副題は「地球規模の問題には地球規模の回答が必要である」であり、それだけでも「なるほど」と感じるだろう。
現在、イギリスのブレグジットやアメリカでのトランプの台頭など、大国が次々と国粋主義的な孤立主義になりつつあり、日本にもそういった雰囲気が漂っている。この現象の背後にあるナショナリズムは、人間の本質的な性質だと信じられている。だが、ハラリは「常識とは異なり、ナショナリズムは人間心理の自然で永久な部分ではなく、ヒト生物学に根ざしたものでもない」と書いている。
人間は社会的な動物であり、集団への忠誠心は遺伝子に刻み込まれている。しかし、何千年ものホモ・サピエンスの歴史で、人間の先祖が一緒に住んでいた親密な関係のコミュニティは、大きくても何十人程度だったのだ。人間は部族(tribe)や歩兵部隊、家族経営事業のように小規模の親密な集団に対して容易に忠誠心を抱くが、何百万人もの赤の他人に対して忠誠心を抱くような性質は自然には持ち合わせていない。
「国家」などといった大規模なスケールのものに対する忠誠心は、過去数千年の間に現れたものであり、進化的な時間のスケールでは「昨日の朝」程度に最近のことだとハラリは言う。新しいコンセプトであるだけでなく、その維持のためには「社会構築の計り知れない努力を要する」のだ。
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