コラム

良くも悪くもイメージを変えられないヒラリーの回想録

2017年09月22日(金)16時00分

ヒラリーのメッセージは複雑すぎて政治の仕組みを知らない人には理解しにくく、理解できても、他人に広めにくかった。ヒラリーの回想録についても、同じことが言える。

だから、ヒラリーのナラティブに慣れている人は回想録に高い評価を与えるし、それ以外のナラティブを信じていた人は嫌悪感しか覚えないのだ。

ヒラリーの回想録は、良い意味でも悪い意味でも読者が信じているナラティブを変えることはない。

ヒラリーが今後やるべきことは、自分についての人々の見解を変える努力ではなく、分断したアメリカを統一できる「ナラティブ」を語ることができる政治家を見つけ出し、背後でその人の応援にまわることではないだろうか。

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プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

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