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アメリカの熾烈な競争が垣間見える、グルメ版『プラダを着た悪魔』
アメリカのグルメ業界はファッション業界に負けじと異様な世界だ Minerva Studio-iStock.
今年5月にニューヨークで開催されたアメリカ最大のブックフェア『BookExpo America』で新人作家のジェシカ・トム(Jessica Tom)と偶然出会い、10月に発売予定の彼女のデビュー作品『Food Whore: A Novel of Dining and Deceit』をいただいた。
食べることが大好きで、料理本を出版する夢を持つ若い女性が、ニューヨークの熾烈なグルメ業界で恋とビジネスに格闘するという小説で、出版社の売り込みでは、ヒット映画の原作『The Devil Wears Prada(邦題「プラダを着た悪魔」)』のグルメ版だという。ジャンルとしては、『Bridget Jones's Diary(邦題「ブリジット・ジョーンズの日記」)』や『Confessions of a Shopaholic(邦題:「レベッカのお買い物日記」)』などの「chick lit」(チックリット、女性小説)に属する。
私は食べることが趣味なので、旅行で初めての都市を訪問する前には、あらかじめ話題のレストランを調べて予約する。そんな私にはピッタリの小説だ。
本書の主人公ティナ(Tina)は、名門イェール大学を卒業してすぐにニューヨーク大学の大学院に入学する。料理本を出版する夢を持つティナが食品ビジネスで有名なこの大学院を選んだのは、著名料理家ヘレン・ランスキー(Helen Lansky)のインターンになるチャンスがあるからだ。
もちろんインターンの希望者は多く、競争は激しい。けれども、ティナには勝算があった。学生時代に書いたクッキーのレシピを、ヘレンがニューヨーク・タイムズ紙で絶賛したことがあったからだ。インターン候補にとって最大のチャンスであるニューヨーク大学の特別イベントに来るヘレンのために、ティナはそのクッキーを焼いて持って行く。
ところが、ニューヨーク・タイムズ紙で連載を持つレストラン評論家のマイケル・サルツ(Michael Saltz)がイベント会場に現れ、アクシデントを装ってティナのクッキーを台無しにしてしまう。ヘレンとは懇意だから推薦しておくというマイケルの嘘を信じたティナは、期待に反して大学から有名レストランのコート預かり係のインターンに任命されて打ちひしがれる。
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