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「親子2代50年以上の支配の終焉」国際テロ情勢の観点からアサド政権崩壊を考える
シリア解放機構でジャウラニがローカルな目標に専念し、いわゆるグローバルジハード路線とは距離を置き始めたことは、アルカイダ路線を継承するメンバーらが2018年2月、シャーム解放機構からフッラース・アル・ディーンと呼ばれる分派組織を結成し、シャーム解放機構と対立し始めたことからも明らかだろう。
国際テロ研究の領域でも、アルカイダのネットワークはアフガニスタンのアルカイダ本体を中心に、アフガニスタンの「インド亜大陸のアルカイダ(AQIS)」、イエメンの「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」、北アフリカ・アルジェリアなどの「マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」、ソマリアの「アル・シャバーブ(Al-Shabaab)」、マリなどサハラ地域の「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」、シリアの「フッラース・アル・ディーン(HAD)」などと描かれ、シリア解放機構がその中で分類されることはないに等しい。
このように考えれば、今回のアサド政権の崩壊が国際テロ情勢を大きく変化させることは現時点では考えにくい。
ジャウラニが如何にして新生シリアをマネージメントするのか
しかし、いくつかの懸念もある。シリアがアサド政権という圧政から解放されたことは幸いなことではあるが、ジャウラニが如何にして新生シリアをマネージメントしていこうとしているのか、全くの不透明だ。
今後、新たなシリアの政権が国内を上手く束ねていけなければ、宗派間、民族間の対立が再び激しくなることは十分に想定され、依然としてシリア東部などで活動するイスラム国が組織の再生を図り、テロ活動を活発化させる恐れがある。
シリア国内にはイスラム国の戦闘員たちが収容される施設があり、イスラム国がそういいった施設を戦略的に攻撃することも考えられる。また、アサド政権の崩壊について、シリアに拠点を置くトルキスタン・イスラム党(TIP)はそれを強く歓迎し、中国・新疆ウイグルの解放のため中国への攻撃を示唆する動画などを発信しており、反中ジハードの動向も懸念されよう。
そして何より、ジャウラニが何を考えているかである。ここで示したように、ジャウラニがアサド政権打倒というローカルな目標に専念し、アルカイダやイスラム国と距離を置いてきたのは事実である。
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